第7話 破壊の達人

子供というのは親の背を見て育ちます。

親も常に観察されているのです。

時にはそれが悲劇をまきおこす!


母は和太鼓をやっていました。

息子と娘が通っていた幼稚園では、独自の夏祭りをやっており、保護者や先生等でサークル活動を行っている和太鼓のグループにより、毎年和太鼓による演奏がありました。


「母〜 私も太鼓やりたい!」


「娘もやりたいの? じゃあ娘用も用意してあげる」


母は美術や工作といったクリエイティブな事が得意で、太鼓の練習もダンボールを切り貼りして、乱暴に叩いても壊れない(壊れてもいい)太鼓モドキを作っていたのでした。

娘はそれが楽しくて仕方ないらしく、母の横で手を振り回して真似をしていたのでした。

母も行動力のある人でしたので、娘の太鼓モドキを作り始めたのです。


「今作ってるからもう少しまっててね 危ないから作り終わるまでは少しはなれててね」


「は〜い!」


その時だった。

条件が整ってしまったのだ……


母は工作中で目を離してしまった。

母が練習に使用していたバチが放置されていた。

自分専用太鼓モドキが用意されることでテンションMAXアゲアゲモードに突入する娘。

目の前には丁度良いサイズのモバイルパソコン。


もう、ヤツは止まらない……

連打連打〜連打連打連打〜連打連打〜連打連打連打〜


異常に気がついた母が止めに入った時にはもう終わった後だった。

通電はするが画面すら映らなくなったパソコン……

外部出力も駄目……

基盤レベルで逝っており、画面もバキバキです。


何というか……もう清々しいくらいに再起不能で逆に笑えてくるレベルでした。

会社から帰ってきて事の顛末を聞いた後、娘に自分が何をやったか説明し、たっぷりお説教しましたが、太鼓の達人を目指す破壊の達人には、母からちゃんと太鼓モドキとバチをプレゼントし、母娘で楽しく練習をやりました。


幼い子どものいる家庭は、各種精密機器やコントローラー等取り扱い及び設置場所には十分ご注意ください。


子供というのは、理性より本能や感情で行動する生き物です。

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