第5話 その時作業員が見たものは!

子どもとは想像力が豊かな生き物です。

大人の想像の斜め上などという生易しいレベルではなく、地球を飛び出し宇宙へと至るのではという勢いであります。


「父〜 ゲームがやりたいけど動かない」


「息子よ 電源ケーブルは?電気はつくの?」


「うん 電気はつくけど、ゲームが入らんの」


「まだ新しいのにもう壊れたんかな……」


父は色々と試したものの、購入してまもないプレイステーション3は、悲しいかなディスクの挿入を拒否し、断固として受け入れないのであった。


「息子よ 諦めなこれ修理せなあかんわ」


「わかった」


「えらく素直やな? まさか何かしたんとちゃうか? 正直に言うなら今の内やで? 嘘ついたら後でいっぱい怒られるのはわかっとるな?」


「うん 僕何もしてへんよ」


「そうか じゃあ修理に出すから」


後日

プルプルプル プルプルプル

「誰や……」


知らない番号からの電話。

念の為出てみるとソニーの修理の人からでした。

「あの〜 大変申し上げにくいのですが、この度の修理は無償修理には該当せず、有償となります。」


「エッ? まだ無償修理の有効期限内ですよね?」


「はい 期限的には問題はないのですが、無償修理の対応範囲は自然故障限定となります」


「……故障の原因は何だったんでしょうか?」


「えー 折れたフィギュアの足と思われる物体が挿入されていました」


「申し訳ございませんでした それは知らなかったものですから……有償で問題ありませんので修理はお願いいたします」


「はい それでは引き続き修理させていただきます」


想像すら出来ない故障原因に唖然としました。

犯人はこの家の中にいる!

名探偵など必要無いくらいにハッキリとした犯人像が頭に浮かびます。

フィギュア(仮面ライダー)を何故かゲーム機に突っ込んで、挙げ句の果てに上手く取り出せず無理やり引っこ抜き、フィギュアの足とプレイステーション3を同時に破壊するという離れ業を披露したその人物とは……

犯人はお前だ! 息子よ!

きっちりしっかりこってりと息子を教育的指導しつつ聞き出した真実とは?


ゲームを吸い込む穴が気になって仕方がなく、ひょっとしたらフィギュアも吸い込まれるのでは?と試したくなり、気がついた時には全てが終わっていたらしいです。大人的には有り得ないのですが、フィギュアの足が証拠として中に残っているのは、本人も気がついていなかったらしく、知らぬ存ぜぬで押し通せると思っていたようです。


子供というのは、穴があったら突っ込む生き物なのです。どんなに注意してても、意外な穴に意外な物を突っ込む達人なのです……


世のお父様方お母様方ご注意を。

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