24.魔鉱石


 研究結果がでた四日目。俺はギルドの執務室にいるペタスさんに報告した。


「ほ、本当に魔鉱石を食べさせれば、暗黒バッタは死ぬのか⁉︎」

「はい、間違いありません」


 魔鉱石とはその名の通り魔力を含んだ鉱石だ。剣や防具などに使用され、用途は幅広い。

 幸いなことにも魔鉱石は希少価値が低く、鉱山ならどこでも採掘することができた。


 変化を知った俺はあれから、鉄鉱石、石炭と言った鉱石。ダイヤモンドやサファイヤの宝石なども与えてみた。


 その結果、それぞれが石の特性を持った個体へと変化して、中には土を食べて肥料効果のある土を吐き出す個体もできた。


 その過程で見つけることができた。


「ま……まじかよ……はは……鉱石食べるなんて知らなかった……アルト、よくやってくれた!」

「いえ、最初に見つけたのはレア王女殿下です」

「へぇレア王女殿下……なんでレア王女殿下?」

「研究を手伝ってもらいました」

「はぁ⁉︎ ……侯爵家だけじゃなく、まさか王女殿下とも知り合いなのかよ!」


 そういう人たちに会うことができたのは、偶然にも良い縁があったからだ。


「魔鉱石は魔力を持った鉱石です。暗黒バッタがそれを食べた場合、体内で魔力を消化しきれず蓄積され死んでしまいます」

「……普通、人や魔物には魔力を消費する器官があるが、バッタにはないから害になるってことか。はは……理屈では分かってても、普通はそんなの思いつかねえよ……やべえな」


 魔物にとっても魔力は自然と体外に放出、または栄養として吸収したりといった機能を持っている。


 でも暗黒バッタは違う。


「これは……国を揺るがす発見かもしれねえな」

「今はそれよりも、対策をしましょう」

「あ、あぁ、人はこっちで雇う。魔鉱石も買い占めて────」

「もう買い占めました」


 レアがさっさと買い占めてしまった。

 おかげでイスフィール家の屋敷にはたくさんの魔鉱石が並んでいる。


「マジでか……はは、俺の仕事ねえじゃん。お金は後で払う。まずはギルドに集まってるみんなにこのことを知らせよう」


 他にも、案じていることを話すと「それくらいは任せてくれ!」とペタスが張り切って言ってくれた。


 *


 そうして冒険者たちへそのことを伝えると、納得した表情を作る。


「な、なるほど……‼︎」

「理にかなってる……暗黒バッタに鉱石を食べる習性があったなんて……‼︎」

「もう食糧難で作物が高騰することがなくなるんじゃないか⁉︎」


 周囲が驚いている中、俺はこれがとある一体には通じないことを案じていた。


 女王バッタは別だ。


 あれは魔物だ。魔鉱石を食べたところで害がない。また違う暗黒バッタを使って襲ってくるだろう。


「ここにいる奴ら以外にも、このことを話してほしい! あと、これから暗黒バッタ討伐隊を編成する! 報酬は冒険者ギルドからと国からもでる!」


 今度は冒険者たちがペタスに向かって声を上げた。


「やるに決まってるぜ! うちの弟は毎年、暗黒バッタのせいで腹をすかせてるんだ!」

「お、俺んちだって俺が我儘で冒険者やってる農家だ! こんな時こそ恩返ししたい!」

「あたしも、やりたい!」


 ここぞとばかりに手を挙げて、協力してくれる。

 

「ありがとうみんな! ちなみに、魔鉱石が毒だと発見して、暗黒バッタ討伐隊の指揮を取るのは、このアルトだ!」

「えっペタスさん?」

「お前は凄いことをしたんだぞ? もっと胸を張れ」


 俺の背中を叩いて前に出させてくる。

 お、俺は目立つつもりなかったんだけど。


「あんな若い子が……」

「意外と顔いいな」


 急に視線を浴びて、恥ずかしがると、【蒼穹の剣】がいた。


 俺の前に来てティアが手を握ってくれる。その後ろにヒューイとブラドがいた。


「アルトくんじゃないですか! こりゃ、やるしかないね!」

「助けてもらった恩を返さねえとな」

「だな。にしても、本当に研究を成し遂げるとは」

「あ、ありがとうございます……‼︎」


 彼らはこのギルド内で名を馳せているらしく、親しげな俺のことを蔑んだ目で見る人はいなかった。


「みなさん! どうかよろしくお願いします!」


 イスフィール家のみんながいるこの街を守るんだ。


 

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