魔法学院で魔力がないと言われたが、古代の神聖術で無双します!
茶黒
第1話 最初の授業
サンジンマリア王立学院の入学式から一日が経った。今日俺たちは、授業を受けるため教室に集まっている。
「さて、昨日話した通り、今日の授業では魔術の実技を行う」
担任であるリリアナ先生の言葉で、クラスの雰囲気が変わった。
実技という響きだけで、生徒たちの顔つきが変わるのだ。
「魔術を使うには魔力が必要だ。そして、魔力とは体内に存在するエネルギーだ。その量は人によって違う。生まれ持った才能であり、訓練や経験でも増えることはない。だから、この魔力量の多寡は、魔術師にとって最も重要なことと言えるだろう」
そう言って、リリアナ先生は黒板に『魔力量』と書いた。
「しかし、魔力量の大小がそのまま強さに繋がるわけではない」
「…………それって、どういうことですか?」一人の生徒が手を挙げて質問する。
「確かに魔力量が多ければ多いほど強いというのは間違いではないが、それだけで勝てるわけじゃない。例えば、魔力を身体強化に使うこともできるし、武器を強化することも可能だ。また、自分の肉体そのものを強化して戦う方法もある。つまり、魔力の量だけではなく、使い方も重要だということだ」
なるほど、と納得している生徒もいるようだ。
「まずは、魔力を感じることから始めようか。目を閉じて意識を集中してみろ」
言われた通りに目を閉じる。
すると、瞼の裏に何かが見えるような気がしてきた。これが魔力だろうか? しばらくそのままにしてみる。…………何も感じないな。
俺以外のクラスメイトたちも、まだ魔力を感じられていないようだ。
魔力というものがよくわからない。
俺は、目を開けて隣の席にいるアリスに声をかけた。彼女は、真剣な表情でじっと目を閉じたままだ。
彼女の肩に手を置いて、もう一度声をかける。
反応がない。
今度は耳元で囁くように話しかける。
それでも無反応だった。
どうしようか迷っていると、突然彼女がビクッとして体を震わせた。
驚いて手を離す。
アリスはゆっくりと目を開けた。
そして、俺の方を見て微笑む。
なんだか恥ずかしい気持ちになって、思わず顔を背けた。
そんな俺たちの様子を見たリリアナ先生がニヤニヤする。
まるで、俺とアリスの仲を知っているかのようだった。
なんとも言えない気まずさが漂う中、リリアナ先生が説明を再開する。
魔力を感じるためには、魔力の流れをイメージすることが大切らしい。
魔力を動かすことで、体の中にある魔力を知覚することができるそうだ。
そのためには、自分の中に流れている魔力を感じなければならない。
魔力を感じることができれば、次は魔力を動かせるようになる必要がある。
魔力を動かすには、魔力操作の技術が必要になるからだ。
魔力操作の練習方法はいくつかあるが、一番簡単なのは瞑想することだという。
魔力の操作には、精神状態が大きく影響してくる。
魔力を感じている間は、自然と魔力を操作することができる。
逆に言えば、魔力を感じられなければ、いくら練習しても無駄なのだ。
「さあ、やってみろ」
リリアナ先生の指示に従って、みんなが一斉に目を瞑った。
魔力を感じるために、ひたすら集中する。
しかし、なかなかうまくいかないようだ。
「うーん、よくわかんないよ」
「難しいね」
「全然ダメです」
「…………私も」
魔力を感じられない生徒たちから不満の声が上がる。
そんな中、一人だけ魔力を感じ取れた者がいた。
「…………うん、感じる」そう呟いて立ち上がったのは、アリスだった。
「えっ!?」
「アリスちゃん、すごい!」
「やっぱり天才だよ」
クラスメイトたちが口々に褒め称える。
「…………別にすごくなんかない」
アリスは照れくさそうにしていた。
「ほう、アリスはもうコツを掴んだのか」
リリアナ先生は感心した様子で言った。
「はい、魔力を感じることはできました」
「よし、では早速、魔力を操ってみよう。そうだな、火を頭に浮かべるんだ。みんなの前でやってみてくれ」
「わかりました」
アリスは教壇の前に立つと、目を閉じて深呼吸をした。
そして、ゆっくりと息を吐きながら右手を前に出す。
次の瞬間、彼女の掌の上に小さな炎が現れた。
「おおぉ!!」
クラスメイトたちから歓声が上がった。
「アリス、すごいじゃないか! 一発で成功させるなんて」
「ふふん、まあね」
得意げな顔で胸を張るアリス。
「では、次はこの火を消すことにチャレンジしてみよう」
「はい」
アリスは再び目を閉じた。
そして、ゆっくりと息を吸い込む。
「えいっ」
可愛らしいかけ声とともに、彼女は手に持っていた火を吹き消した。
「やったぁ!」
「すごい!」
「さすがアリスだぜ」
「…………当然」
クラスメイトたちに囲まれて、アリスは嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
「今のが魔力を使った基本的な技術だ。魔力操作の基本となるものだな。他にも、魔力感知や魔力強化など、様々な応用がある。この基本を習得しておけば、一般の学院出の成人に対しても十分に通用するだろう」
リリアナ先生の説明に、クラスメイトたちは真剣な表情で聞き入っていた。
「魔力操作は、慣れるまでに時間がかかる。最初は、毎日少しずつ魔力を使う練習をするといい。魔力操作の応用も重要だが、基礎的な魔力操作の技術を上げることの方が先決だ。魔力操作が上達すれば、同じ魔法でも消費する魔力を減らすことだってできる」
リリアナ先生の言葉に、生徒たちがざわついた。
「魔力操作が上手くなれば、それだけ魔法の威力も上がるんですか?」
一人の生徒が質問する。
「ああ、もちろんだ。魔力操作が上手ければ、少ない魔力で大きな効果を出すことができる。それに、魔力は鍛えれば鍛えるほど強くなる。つまり、魔力を効率的に使うことが、より強い魔法を生み出すことになるのだ」
「へぇ~」
リリアナ先生の答えに、生徒たちが納得した表情になる。
それからしばらく、リリアナ先生は魔力操作についての講義を続けた。
そして、一通り講義が終わると、再び教室内が騒がしくなる。
生徒たちは皆、興奮しているようだった。
「ねえ、タルフィーはどうだった?」
「俺はさっぱりだったよ」
学院帰り、俺はアリスと話していた。
「そっか、私は結構できたんだけどな」
「さすがはアリスだな」
「えへへ、ありがと」
俺が褒めると、アリスは嬉しそうにはにかんでいた。
「それで、タルフィーは何がわからないの?」
「うーん、感じようと目を瞑った時、一瞬何か感じたような気がしたんだけどな。そこから先が全然ダメなんだ」
「じゃあ、私が教えてあげるよ」
「ああ。後で頼む」「うん!」
アリスは元気よく返事をした。
魔法学院で魔力がないと言われたが、古代の神聖術で無双します! 茶黒 @kuisa_913
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