第49話
「おじいちゃんが亡くなって、悪いことばかりじゃなかったってこと?」
「まあね。」
お杉ちゃんの歯切れの悪さに、思わず、突っ込みたくなった。
「おばあちゃんとママ、喧嘩と仲直りを繰り返したんでしょ?」
「わかるのかい?」
「うん、なんとなあく、そんな気がした。だって、これでも、二人のこと、ずうっと側で見てきたんだよ。」
「そうなんだよ。お互い、寂しいくせに、些細なことで喧嘩して別居だからね。でもいつの間にか元のさやに収まるんだから、心配するのが馬鹿馬鹿しくなったね。」
お杉ちゃんは記憶をたどっているのか、しばらく間をおいた。
「あれは、阿紀ちゃんが三十代半ば頃かな、あんたのパパがお婿さんに来てからは、さすがに母屋と離れで暮らしたけどね。ただ、人間って、本当にぜいたくだよ。芙美ちゃん、喜之さんの金使いの荒いのにこりたはずなんだけど。阿紀ちゃんがあんな面白みのない婿を選んだって文句を言って。」
「わかる。パパは大人しくて真面目が取り柄だからね。おばあちゃんが喜ぶような気の利いたことは言えなかったんだと思うよ。」
「でもね、芙美ちゃん、あんたが産まれてから変わったんだよ。あんたを育てるのに一生懸命になって。よかったよ。芙美ちゃん、あんたのおかげで本当の『人の親』になったと私は思っているよ。」
気がついたら、お杉ちゃんの言葉に涙していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます