第49話

「おじいちゃんが亡くなって、悪いことばかりじゃなかったってこと?」

「まあね。」

お杉ちゃんの歯切れの悪さに、思わず、突っ込みたくなった。

「おばあちゃんとママ、喧嘩と仲直りを繰り返したんでしょ?」

「わかるのかい?」

「うん、なんとなあく、そんな気がした。だって、これでも、二人のこと、ずうっと側で見てきたんだよ。」

「そうなんだよ。お互い、寂しいくせに、些細なことで喧嘩して別居だからね。でもいつの間にか元のさやに収まるんだから、心配するのが馬鹿馬鹿しくなったね。」

お杉ちゃんは記憶をたどっているのか、しばらく間をおいた。

「あれは、阿紀ちゃんが三十代半ば頃かな、あんたのパパがお婿さんに来てからは、さすがに母屋と離れで暮らしたけどね。ただ、人間って、本当にぜいたくだよ。芙美ちゃん、喜之さんの金使いの荒いのにこりたはずなんだけど。阿紀ちゃんがあんな面白みのない婿を選んだって文句を言って。」

「わかる。パパは大人しくて真面目が取り柄だからね。おばあちゃんが喜ぶような気の利いたことは言えなかったんだと思うよ。」

「でもね、芙美ちゃん、あんたが産まれてから変わったんだよ。あんたを育てるのに一生懸命になって。よかったよ。芙美ちゃん、あんたのおかげで本当の『人の親』になったと私は思っているよ。」

気がついたら、お杉ちゃんの言葉に涙していた。












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