第48話
「それから後が、大変だったんじゃない?」
私の問いにお杉ちゃんはうなずいた。
「そうなんだよ。芙美ちゃんと阿紀ちゃんはややこしくなってね。」
お杉ちゃんは私の顔をじっと見つめる。
「大丈夫だよ。二人があんまり仲よくないのはなんとなく感じてた。派手なケンカはしてないと思うけど。だって、おばあちゃん、ママのこと、世間知らずだって、よく言ってたよ。確かに、ママはゴミだしの日も知らないもんね。ゴミの分別できるのかもあやしいよ。地域の行事も知らないし。私の学校のPTA の役員、おばあちゃんがやってくれてたんだよ。親が共働きは当たり前だけど、そこまでおばあちゃんまかせの家も珍しいんだ。」
お杉ちゃんは苦笑している。
「でもね。ママは経済的には大黒柱なんだよ。おばあちゃんはどう思っていたかわからないけど。」
「阿紀ちゃんはね、大学院に進んで、それも博士になるつもりだったらしいよ。大学院に進む時、芙美ちゃんとやりあって、挙げ句、下宿したんだよ。」
「それは初めて聞いた。」
「阿紀ちゃんは勉強できたし、学問で身をたてるつもりだった。芙美ちゃんは大卒で、いいところにお勤めして、いいお婿さんをもらって孫の顔を見せてって言うから、すぐ言い合いになってさ。」
何だかその光景が目に浮かぶ。
「でもさあ、二人がややこしい時おじいちゃん、何してたの?」
「フキおばちゃんが亡くなってから、妙に、喜之さん、おとなしかったんだよ。出かけないし、お金も使わなくなって、阿紀ちゃんのことも好きにさせてやれって。今から思うと、具合が悪かったんだよ。それからしばらくして、職場の検診で胃がんがみつかってさ。入院して手術したけど、手遅れでね。喜之さん、亡くなったんだ。フキおばちゃんが、芙美ちゃんがお金で苦労しないように迎えに来たって、みんな噂をしていたよ。」
「そうだったんだ。おばあちゃん、かわいそうだったんだね。」
「でもね、阿紀ちゃんが家にもどって来てね。大学院は修士で卒業して働くって。博士まで行きたかっただろうけどね。自分の母校で先生になったんだ。」
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