第44話

「どう言ったらいいか、よくわからないけど、よかったよね。庄助さん、最後はフキさんのところにいたんだよね。」

私がそう言うと、お杉ちゃんはうなずいた。

「静枝さんには気の毒だったけどね。庄助おじさん、朝ごはんと夕ごはんはフキおばちゃんと食べていたから。夕方、元気に帰って行った人が、夜中に亡くなったんだから、さぞかしショックだったと思うよ。」

お杉ちゃんはあきらかに静枝さんに同情している。

「あのさ、お葬式とか、静枝さんはどうしたの。最後のお別れってあるよね。」

「フキおばちゃんが許すわけないだろう。静枝さんが贈ったお花はお付き合いのある業者さんからだからってしぶしぶ受け取ったけど。」

「やっぱり。フキさんはどうしても静枝さんのこと許せなかったんだね。」

「まあ、庄助おじさんが一番悪いね。フキおばちゃんと静枝さん、どっちも好きだなんて、庄助おじさんはそれでよくても、フキおばちゃんも静枝さんも、周りの者もたまったものじゃない。フキおばちゃんは涙一つこぼさなかったよ。芙美ちゃんも。予備校の寮から帰ってきた阿紀ちゃんも。喜之さんは男だから泣かないか‥‥‥いや、やっぱり複雑な人間関係に疲れていたんじゃないかな。」

「そうかもね。」

「静枝さんと三人の息子、そのお嫁さん達、孫達が一般の人に交じって庄助おじさんの出棺を見送っていてさ、そちらはみんな泣いてるわけさ。今でもよく覚えているよ。」

私は言うべき言葉が見つからなかった。


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