第40話

結婚して子供が生まれたのに、相変わらず金遣いが荒かった祖父。高校教師だった祖父は、生徒にどんな教育をしていたのだろう。娘である私のママにはどんな接し方をしていたんだろう。そう言えば、ママからも祖父のことを聞いたことがない。お杉ちゃんに疑問をぶつけてみる。

「心配しなくても、喜之さん、あんたのママのことを虐待したりしてないさ。そもそも休みの日になると遊びに行って家にいないんだから。釣りにスキーに旅行だよ。芙美ちゃんと阿紀ちゃんは置いといて。」

「それ聞いて安心できると思う?」

「そうだね。でも、家族で遊園地や動物園に行ったり、人並みに父親らしいこともしてたかな。学校の生徒にもそれなりに慕われていたんじゃないかな。今じゃあり得ないけど、家まで遊びに来ていた生徒もいたよ。芙美ちゃんがカレーとか料理している間、阿紀ちゃんのお守りをさせられていて。あんたのママが癇癪おこして大変だったこともあったな。」

「ふうん……」

ママの癇癪は今に始まったことではないんだ。生徒もかわいそうに。

「私もお婿さんもらって、ここにずっといたから、芙美ちゃんと付き合いが長いけど、だからって何でも知ってるわけじゃないよ。芙美ちゃん、見栄っ張りなところがあったから。いつからだろう。何だか、無理して幸せな家族を演じてたような気がするよ。」

「話を聞いている限り、おじいちゃんは結構、勝手気まま、家族より自分がかわいい人じゃない?」

「そうだね。多分、フキおばちゃんのためだったのかもしれない。」

「どういうこと?」

「フキおばちゃんのために、幸せな家族を演じていたんだと思う。フキおばちゃん、芙美ちゃんに幸せになって欲しいと思って、結婚生活が上手くいくように、あれこれ助けていた。もちろん、芙美ちゃんのためだけど、それだけじゃないね。」

「他に何かあるの?」

「静枝さんの息子と結婚させた方がよかったって、庄助おじさんに言わせてたまるかって、フキおばちゃん、意地になってたと思うよ。その頃、静枝さんの息子達はみんなお嫁さんもらって、あちらの方は円満にやってたよ。もちろん、庄助おじさんと静枝さんの関係は続いているからね。」

結局、問題の根っこはそこにあるんだ。

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