第26話

「ねえ、その庄助さんが死ぬまで付き合った人、どんな人だったの?」

私の問いにお杉ちゃんが、真面目に答えてくれた。

「それまでの人と、一番の違うのは、お金を渡して囲ってないことだね。」

「お互いに、経済的に独立した関係ってことだよね。」

「そうだよ。相手は建材を扱っている会社の女社長だよ。」

「ふうん。庄助さんが運送会社の社長を辞めて、土木の会社を始めたことと関係あるのかな?」

「多分、最初は商売上の付き合いだろうけどね。相手は女子高等師範学校出身の、元女学校の先生で、三人の男の子がいる戦争未亡人だよ。他にやれる人がいなくて、会社を引き継いだらしいよ。」

「その人のこと、知ってるの?」

「よく知っているよ。フキおばちゃんとは違うタイプの女傑だね。フキおばちゃんにとっては強敵だよ。」

「そうなんだ。」

「庄助おじさん、芙美ちゃんの教育のことで、相談にのってもらってたらしい。」

「えっ、そうなんだ。すごいね。昔の男の人って、子育てに参加しないと思ってた。」

「子供には情操教育が大事って教えてもらってさ、庄助おじさん、芙美ちゃんのためにオルガンを買ったんだから。それから国立大学の附属中学校を受験させるようにもすすめられてね。」

「えっすごい。おばあちゃん、附属の出身なの?」

「知らなかったのかい?」

私は、ただただ、驚いた。そして、娘の教育に口出しされたフキの心中を思った。

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