第25話

「庄助さんは、おばあちゃんのこと、可愛がってたんだよね。だったら、どうしておばあちゃんは父親の話をしなかったんだろう。私、聞いたことないんだ。」

お杉ちゃんに疑問をぶつけてみた。お杉ちゃんは、しばらく黙っていたが、話し始めた。

「庄助おじさんは、芙美ちゃんを可愛がって、自慢したくなってね。あっちこっち、連れて出かけるようになって。最初はご近所さんにかわいい娘だろうって自慢するだけだったんだ。だけどね。」

「大丈夫。何を聞いても驚かないから。」

私はお杉ちゃんを励ます。

「あのさ、庄助おじさん、芙美ちゃんを女の人のところに連れて行くようになってさ。」

「女の人って、ひょっとして、浮気の相手のところに?」

お杉ちゃんはため息をついた。

「庄助おじさんが出征したことは話しただろう。帰ってきてからしばらくは、戦争中ってこともあって、表向きはおとなしくしてたんだけど。」

「戦争が終わってから、また浮気が始まってしまったんだ。前に浮気していた人とよりが戻ってしまったの?」

「いいや。まったく別の人だよ。庄助おじさん、その人とは、死ぬまで続いたんだよ。」

「ということは、単なる浮気じゃないよね。」

「あんたも、言うことがおませさんになってきたよ。」

お杉ちゃんは苦笑している。

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