第24話
「フキさん、おばあちゃんのお母さんは、おばあちゃんが学校でいじめられてるって、知ってたの?」
「もちろん。フキおばちゃんのことだからさ、芙美ちゃんに、きっぱりと、『おまえは私の娘だよ。遅くに授かった子だから、面白おかしく言うのさ。家で産婆さんに世話になって産んだから、病院みたいに取り違える心配もない。』ってさ。」
「フキさんらしいね。」
私は笑ってしまった。ただ、「私の娘」という表現にはやはりひっかかるものがある。それをお杉ちゃんに言うと、
「子供の時は、側で聞いていて何も思わなかったけど、確かにね。普通は、『私達の娘』っていうべきだわな。」
と、同意した。
「庄助さんは、おばあちゃんのことを可愛がってくれたんだよね。」
「そうだよ。人の噂は耳にはいっていたはずだけどね。」
お杉ちゃんはしばらく間をおいた。
「くどいけど、これだけは確かだよ。庄助おじさんは芙美ちゃんが生まれた時に喜んで名前をつけたよ。美人になるように芙蓉の花の字をもらうって。庄助おじさんは戦争中は、何よりも先に芙美ちゃんをおんぶして防空壕に逃げてたよ。幸いこの辺りは焼けずにすんだけどね。戦争が終わったばかりで物がない時でも芙美ちゃんには可愛い格好させてね。近所に洋裁ができる人がいてね。その人に頼んで、芙美ちゃんに洋服着せて。写真撮ってさ。小学校で洋服を着てるの芙美ちゃんだけだったよ。」
少し救われる思いがした。
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