第23話

「芙美ちゃんが生まれた時、私は六才だったからね、よく覚えているよ。フキおばちゃんが四十手前のお産だろう。お産もその後も大変で、最初の三年くらいは私の母さんとフキおばちゃんのお母さんが手伝ってたよ。フキおばちゃんのお母さんは芙美ちゃんが三才の時に亡くなったけど。」

「私のおばあちゃんを生むように説得した二人が手伝ってくれたんだ。」

私がここにいるのは、フキの母親とお杉ちゃんのお母さんのおかげということになる。

「母さんにとってフキおばちゃんは恩人だし、憧れの人だからね。舅姑によその子の面倒を見るのかって嫌みを言われたみたいだけど、そのころには、母さんも強くなってたからさ。もちろん、私も自分の妹が一人増えたつもりでいたよ。小学校からだね、芙美ちゃんが色々言われるようになって。」

「どんなことを。」

「もらいっ子ってよく言われて泣かされてた。周りの大人が子供につまらないことを吹き込むのさ。女の子は父親に似るっていうのに、男前の親父には似てないとか。母親が浮気してできた子とか、酷いことをいう悪ガキを片っ端からとっちめてやった。」

お杉ちゃんの武勇伝が聞けると思わなかったが、子供の世界の残酷さを感じた。昔のことで、幼稚園に行かずに、いきなり小学校に入って大変だったと祖母が言ったことがあった。祖母を苦しめたのは自分の出自に関わることだったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る