第22話

気がつくと、私はポロポロと涙をこぼしていた。

「大丈夫かい?」

お杉ちゃんが気づかってくれた。

「シゲさんはきっとフキさんのために身を引いたんだよね。」

「そうだろうね。それに、シゲさんにとって、庄助おじさんが社長になった会社にいても意味がなかったのかもしれないね。シゲさんはフキおばちゃんのことを助けたいって思っていたんだろうね。フキおばちゃんだって、シゲさんとずっと仕事をしたかっただろうね。母さんが言ってた。フキおばちゃんは運転手の人達をものすごく大事にしていたけど、シゲさんは別格だったって。だから、フキおばちゃんもシゲさんに去られてショックだっただろうし、そのあとで、庄助おじさんと一緒にやりたくなかったんだろうさ。」

「切ないね。でも、聞いてよかったと思ってる。あの、私は二人のこと、不倫とか、不潔とか全然、思ってないから。」

お杉ちゃんは優しく笑っている。

「あんたがそう思ってくれるなら、シゲさんも浮かばれるよ。」

しばらく間をおいてからお杉ちゃんは言った。

「ただね。芙美ちゃんは色々言われてね。特に物心がつくようになってから。」

私はドキリとした。


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