第17話

私は前から思っていたことをお杉ちゃんに聞いてみた。

「ねえ、今の世の中でもさ、女性の上司って、抵抗あるっていうじゃん。運転手さん達、みんな男の人だよね。よくフキさんの言うこと聞いたよね。」

「そうだろ、すごいだろう。母さんがよく言ってたよ。フキさんは人の気持ちがわかる人だって。よく、苦労していることを自慢げに言う人いるだろう。ほら、自分はこんなに大変だったって。」

「いるいる。学校の先生にもいるよ。そういう人うざいよね。」

「フキおばちゃんは人の話しをよく聞いていたね。話しを十分に聞いてからさらりと自分のことを言う人だったね。くどくどお説教なんかしないしね、それから、面倒見が良かったけど恩着せがましくないんだよ。」

「なるほどね。わかった。運転手さん達もフキさんをリスペクトしていたんだ。」

「私は小さかったからよくわからなかったけど、フキおばちゃん、色んな人雇っていたそうだよ。中には元不良少年とかアカの人とか。」

「共産主義の人だよね。」

「仕事が終わってから、集会とかに行くのをフキおばちゃん、黙認していたんだって。」

私は背筋が寒くなった。

「戦争中によく無事だったね。」

「本当にね。私にはまねできないよ。」

お杉ちゃんはしみじみと言った。

「お金は働いたら手に入る。でも人の情けはお金では買えない。フキおばちゃんの口癖だったよ。」

曽祖母の人生観に触れた気がする。

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