第15話
「私の母さんのことも少し話していいかい?」
「もちろん。」
「フキおばちゃんのことは母さんからよく聞かされてね。母さんにとってフキおばちゃんは恩人でね。」
お杉ちゃんの父親は農家の長男で、親戚同士の縁組で、お杉ちゃんのお母さんはお嫁にきた。
「母さんには好きな人がいたらしいよ。もちろん昔のことだから、勝手におつき合いなんかできないけどさ、恋をする気持ちとかは、今の若い子達と同じさ。でも、父親が決めた人と結婚するしかない時代でさ、嫁入りの日は、母さんも、その母親、私の母方のばあちゃんも嫁入りを嫌がって、泣いて泣いて、ご近所の語り草になったらしい。」
「本人も、母親も嫌がる結婚をどうして強行したのかな。」
と私がいぶかると、
「親戚を増やさないためだよ。縁組すると付き合いが増えて物入りだろ。近親婚は困るけど、それでも、近場で済ますって考えで。」
お杉ちゃんも憤りを感じているようだ。
「ただ、私の父親は真面目な働き者だったから、夫婦仲はそれほど悪くなかったよ。ただ、子供が女ばかりだろ。母さんが肩身の狭い思いをしてね。」
お杉ちゃんのお母さんの父親は頑固な人で、一度嫁入りしたら、二度と実家の敷居はまたがせない、戻って来るぐらいなら、池に身投げして死ねと言っていたらしい。
「近くに池があるだろう。見た目以上に深くて危ないからって、芙美ちゃんも教えたと思うけど、その池に入ろうとした母さんをとめてくれたのが、フキおばちゃんだったって聞いたよ。」
フキは子供が女の子で何が悪い、男の子がたくさんいても、馬鹿なら意味がない、束せても馬鹿は馬鹿だ、実家に帰れないならうちを手伝っておくれ、死ぬのはその後にしても遅くないだろうと大声で叫んだそうだ。
やっぱり、フキさん、かっこいい。
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