第14話
「すごい人だったんだね、フキさんって。リスペクトしかないよ。」
「リ、リス、何だって?」
「ありのままのフキさんに敬意を持っているってこと。誰かと比べてとかじゃないんだよ。『ありのまま』が大事なんだ。学校で習ったんだけど。」
「そりゃあ、良かった。一生懸命、思い出した甲斐があったよ。」
お杉ちゃんは嬉しそうだ。
「この写真を撮ったあとがフキおばちゃん、もっと大変だったんだよ。戦争でね。庄助おじさん、出征したんだ。」
お杉ちゃんのお母さんは、庄助が出征する少し前に華岡家の隣の家に嫁いできた。フキが夫の出征に涙一つこぼさなかったことに驚いたそうだ。フキは列車に乗る庄助を家の玄関で見送っただけだった。
「その理由はすぐにわかったって母さんが言ってたよ。駅に庄助おじさんと別れを惜しむ女の人が五人はいたって。フキおばちゃんはそれを見たくなかったんだろうって。」
本当のところ、曾祖母は曾祖父のことをどう思っていたんだろう。私には想像することしかできないけど、誰もいないところで一人で泣いたかもしれない。
曾祖父が出征した後、曾祖母は運送業を一人切り盛りした。女の身で、お杉ちゃんに言わせると荒くれ男達、運転手達のことだが、彼らをまとめあげ、商売を続けたのだ。
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