第12話
ママが渋い顔をしているのを無視して私は相変わらずお杉ちゃんに曽祖母の話しを聞いている。お杉ちゃんは古い写真の中から、曽祖父と曽祖母が運送会社の従業員の人達と撮った写真をみつけてくれた。曽祖父が運送業を始めて十年、ささやかなお祝いをした時の写真だという。
「この時は、私の母親はまだ嫁に来てなかったと思うよ。真ん中にいるのが、あんたのひいおじいさんとひいおばあさんだよ。従業員の中の若い女の人は私の父親の姉さんだよ。出戻り娘だったのを庄助おじさんとフキおばちゃんがお手伝いさんに雇ってくれたって聞いてるよ。嫁ぎ先で色々あって返されて実家にいるのは肩身がせまいだろうってね。夫婦で面倒見が良くてね。」
曽祖父は背広姿、曽祖母は羽織と着物だ。もちろん白黒の写真だが、それでも初めて見る曽祖父はなかなかのイケメンだ。目はぱっちりと大きめで、眉は太めだけれど、何ともいえない甘い感じがする。
「人気俳優みたいだね、ひいおじいちゃん。」
と私が言うと、
「男前で、会社を経営して面倒見が良いとなると、女の人にもてるんだわ、困ったことに。」
とお杉ちゃんが笑った。
そのせいだろうか。写真の曽祖母はお祝いの日だというのにどこか疲れてきつい顔に見えた。曽祖母の細い目元が祖母の怒った時の顔と重なった。
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