第10話
お杉ちゃんは言う。
「庄助おじさんはずるい人さ。自分の母親はここらじゃ一番のいけずで通っていてね、華岡の家につりあったいいお家のお嬢様じゃ嫁としてもたない。事業を起こしてその相棒もつとめてもらわないといけないから、しっかりしたフキおばちゃんを奥さんに選んだ。でも、フキおばちゃんにないものを持っている女の人を外で囲ってさ。」
「どういう人を。」
私はようやく口をはさんだ。
「私が直接知っているだけでも二人いたね。家が没落した女学校出のお嬢さんとか、未亡人で、子供をかかえて商売やってた奥さんとか。」
要するに、家柄がよく学歴があって、それから、なよなよとした、思わず守ってあげたくなる女性だな、気がつくと私は叫んでいた。
「最低!」
「そうさ。私が聞いた話では、フキおばちゃん、毎晩、布団の下に包丁を隠して寝てたらしいよ。」
「あの、外に女の人がいても、毎晩、庄助さんは家に帰ってたんだ。」
「そうだね。庄助おじさん、妙に律儀でね。」
「明治の女の人って大変だったんだ。」
私の想像を絶する世界だ。
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