第4話
私が中学校に入学してからだろうか。祖母は私に家事、とりわけ、料理を教え始めた。それまでも遊び半分で手伝ったことはあるが、いろんなことをきっちり教えたくなったそうだ。
「勉強ができるのも大事だけど。」
一呼吸おいてから祖母は言った。
「生きて行くのに必要だからね。」
一緒に料理をしている時、祖母はよく自分の母親、つまり、曾祖母の話しをよくした。私の曾祖母は生粋の明治女だったそうだ。
「昔の人は辛抱強かったの。あんたと百歳ほどしか違わない人が、小学校、最後まで行けなかったの。お医者さんのおうちに奉公にだされたんだよ。」
答える言葉がない。
「学校へは行けなかったけど、私のお母さんは頭のいい人だった。漢字も読み書きできたし、計算も早かった。戦争中は一人で会社をやってたんだから。」
「えっ、何で一人で。」
「お父さんが出征したから。」
聞きたい、その先を。いつもそう思うのだが、すぐに祖母は話題を変える。曾祖母は、来客があると、生きている鶏を絞めて一羽丸ごとを料理したとか、鯖寿司を寿司型を使わず、きれいな形に仕上げたとか、食べ物の武勇伝になってしまう。昔はお客があると、夏場はかき氷を注文して家に届けてもらったそうだが、曾祖母は必ず祖母も分もたのんだそうだ。
祖母は愛情たっぷりに育てられたのだと思うとうらやましくなった。
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