第3話
祖母がやさしい顔をするのは自分の母親のことを話すときだった。
「お母さんはね、私の背中をさすってくれてね、かわいい、かわいい、ああ、かわいいってね、何回もそう言ってね。」
その時の祖母は潤んだ目をして、別人のようだった。
「戦争中は食べるものが手に入らなくてね。サツマイモを食べたいって言ったら、無いものはないってたたかれてね。でもその後でお母さんが、ごめん、ごめんって、泣いて私を抱きしめてくれてね。」
だったら、私にも同じことをして。背中をさすってかわいいって言って、怒ってもいいから、後で抱きしめて、と言いたかった。でも残念ながら、言えなかった。
小学校高学年くらいからだろうか。私も祖母にささやかな反抗を試みるようになった。おばあちゃんではなく、ばあちゃんと呼んだ。怒られたら嫌な顔をして口をきかなかった。ただ、情けないことだが、祖母の料理は全部たいらげていた。空腹には勝てないからだ。そんな私を見て、祖母はあきれていたが、どこか、満足しているようだった。
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