第21話 甘い作戦最終ミッション1
「お嬢様、お部屋はこちらでよろしいですか?」
ビシッとしたスーツを着こなした初老の男性、ホテルのドアを開ける。
「えぇ、ありがとう、町田」
先日、ネットで見た『町田一志』とは別人の町田に苺は「うーん」と唸る。
「写真と全然違うけど、ちゃんと化けられる?」
そう質問する苺に、町田は「はい」と笑顔で答える。
「これでも昔は俳優の卵でして、特殊メイクなんてものも少々」
「わお! 今度あたしもやってみたい!」
期待たっぷりな苺の視線に、町田はにこりと微笑む。
「えぇ、機会がありましたら」
「それよりも、明日が土曜日で良かったですわねぇ。そうそう、苺ちゃんのパジャマはわたくしが用意しましたわ。お揃いですの!」
「おぉ、苺柄! 可愛い!」
すっかり合宿気分で枕投げでも始まりそうな雰囲気だが。
『遊びじゃねえぞ?』
ホテル備え付けの大きなモニターから聞こえる声に、苺も杏も「はーい」と元気よく返事をする。
「それでは明日の計画ですね。場所と人間はこちらで何とかします。あ、でもどうしても大人の人数が足りないので工藤さんもお願いしますね?」
『あ? 俺は犯罪に加担する気はねぇぞ?』
「大丈夫です、町田さんもいらっしゃいますし、それにすべて夢の中の話ですから」
最終ミッションは、明日ーー。
良い子は良く寝て、早起きです。
「服! 服!」
「苺ちゃん、衣装は後ですわ! まずはメイクを」
「苺、陸さん来たよー!」
「陸さーん!」
そして朝からバタバタ、しかもここはもう桐谷家ではなくーー。
「にしても、今日はなんでホテルなの? 俺、聞き間違えたかと思ったよ」
そんな陸の感想に圭樹が「すみません」と謝る。
「今日は近しい人間だけ集まる仮装パーティなんです。なので、外を歩くわけにもいかず」
そんな説明に「なるほど」と陸も納得した。
「それでどんな仮装にしたいのかな? 苺ちゃんなら可愛いものが似合いそうだけど」
陸の声に、苺と杏がにこりと笑った。
「さて、と」
そう言って、仮面をつけた美人が辺りを見回す。
「みんな、準備は良いね」
「くそっ、なんて俺がこんな格好で……」
背が高く少しばかり厳つい女性が悪態をつく。
「はぁ、俺、裏方でよかったぁ」
ホッと胸を撫でおろすのは桐谷。
「うふふ、なんだか楽しいですわ」
「うーん、この格好だとやっぱり攻撃が……」
それぞれの感想に仮面の彼女は「うんうん」と頷いて、
「それでは参りましょうか、館長」
そういうと、隣に立つ威厳あるひげを蓄えた初老の男性が「畏まりました」と頭を下げ、部屋のドアを開けた。
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