第17話 スイーツたちの作戦会議2


「なんかさぁ、生ぬるいよね?」


 帰り道、小石を蹴りながらの苺の言葉に圭樹は苦笑いだ。


「だって、前のように蹴り倒すわけには行かないでしょう?」


 前の、とはひったくり犯を蹴り飛ばしたあの件だ。


「やれるならやりたい!」


 やんちゃな苺の返事に「あらあら」と杏は笑い、「……マジ勘弁」と桐谷は首をすくめた。


「とりあえずは、誰もオークションで落とさないように見張らないとね」

「あー、それやっとくわ。サーバも足付かないように海外経由で、『ニセモノだ!』って複数のアカウントから書き込めば大丈夫だろ?」


 さすがオタクを従兄弟に持つ桐谷で、そんな発言に苺も杏も「おー」と拍手を送る。


「あとは人だね。僕達は顔バレしてるから」

「あ、あたし、陸さんに頼むー! 別人になるー!」

「まあ素敵! わたくしもその陸さんというスタイリストさんにお会いしたいですわ!」


 浮かれる二人に圭樹は苦笑しながら、「その必要があるときはね」と答えた。


「あと、工藤さんには協力してもらうとして、ちょっと貫禄ある人がほしいけど」

「うちの執事はどうかしら?」


 一ノ瀬家には、執事がいる。そのことは誰もが知ってることなので驚くこともなく「いいね」と圭樹も頷いた。


「人手が足りなかったら、僕も陸さんに頼んじゃおうかな」

「ってか、誰? 陸って」

「桐谷の知らない人ー」

「んなこたぁ分かってる!」

「あらあら、自分だけ知らないから拗ねてるのね」

「違ーう!」


 こうして準備は着々と進んだ、らしい。





「出来たってさ」と桐谷が報告したのは、工藤に頼んでから3日後のことだった。


「おー、早いな!」


 そう褒める苺になぜか「まあな」と照れ顔でニヤける桐谷。

「それで落札されてないよね?」と圭樹が尋ねれば「当然!」と胸を張った。


「ちゃんと南米とか中東のサーバーをランダムに経由して、『ニセモノだ!』って触れ回ったからな! 身バレの心配はもちろん無し! それにあちらも反論してたがウォッチしてる奴らも妨害してやったし、新しくアップしてもすぐに見つけて──」

「一ノ瀬さん、執事の町田さんのスケジュールは大丈夫かな?」

「ふふ、いつでも。町田はわたくしの頼みならいつでも馳せ参じますわ」


 お嬢様ならではの発言に、さすがの苺も「おー」と手を叩く。


「ちょっ、俺の話を聞けー!」


 そんな桐谷の叫びも虚しく、


「それじゃ皆、決行は明日ということで」


 計画は決行されることが決まった。

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