第5話

俺と上野美咲はがっくり肩をおとして会社に戻った。


「青木さん、私があんなミスをしてしまってすいませんでした。」


「俺も確認しておけばよかった。すまなかった。」


散々反省したがもう取り返しがつかない。

社長に報告したら、「時期が悪かっただけだ。気にするな。」と言われた。

俺は一言「すいませんでした。」とだけ告げてその場を去った。


こんな事があった後でも腹はすく。

お昼にしようと今朝妻の裕美から差し出された紙袋を探る。

俺はおにぎりと赤いきつねをテーブルに置き、熱湯を赤いきつねに注ぐ。

たちまち部屋には赤いきつねの鰹節の香りが拡がり、温かい湯気に包まれた気がした。


ふっと紙袋の中を見ると一枚の紙切れが折りたたまれて入っているのに気がついた。

何だろうと開けてみると紗名からの手紙だった。


~〜~~~~~~~~~~

バパへ


毎日お仕事お疲れ様。

ママは良い人と一緒になったよね。

パパは仕事終わったらまっすぐ帰って来てくれる。

タバコも酒もやらないし、お金のかかる趣味もやらないよね。

家では洗い物とかいつもやってくれてるし、いつも私と一緒に居てくれる。

大好きだよパパ。

今日も頑張ってね。

紗名より

〜~~~〜~~~~~~~


紗名からの手紙に俺は涙ぐんでしまった。

赤いきつねが妙に塩っぱかった。

一度くらいの失敗でくよくよしてどうする。

さぁ次を考えるぞ。

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赤いきつねの湯気につつまれて・・・ アオヤ @aoyashou

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