08話. ワンナイト 前編

 俺たちがカイメルさんのところに向かうと、カイメルさんは俺たちに気付いた。そして最初に、まず俺とソフィアはカイメルさんに挨拶した。


 「こんばんは、カイメルさん」

 「こんばんは」

 「ソフィア、カズマくん、こんばんは。それにお嬢ちゃんもこんばんは」


 カイメルさんは俺たちに挨拶を返してくれると、エリナの方を向きエリナにも挨拶した。すると、エリナはソフィアの背後に少し隠れながら小声で挨拶した。


 「こ、こんばんは」

 「はい、こんばんは。お嬢ちゃん、お名前は?」

 「え、えっと、エリナ。ソフィア姉の妹だよ」

 「エリナちゃんね!?私は、カイメルって言うよ。宜しく」

 「よ、宜しく」


 な、なんと!?

 俺は目から目ん玉が落ちそうだった。エリナは俺に対してだけ態度がまるっきり違ったのだ。今のエリナの話し方は少女らしくて可愛かった。俺がそう思ってると、カイメルさんはエリナに言った。


 「悪いんだけど、エリナちゃん、少しの間私の後ろにいる女性の方と一緒に遊んでてくれる?私、カズマくんとソフィアに少しお話があるからさ」


 すると、エリナは俺たちの方を振り向いた。エリナは少し困ってるような顔をしていた。俺は何か言ってあげないといけないと思い、それを言おうとした瞬間、ソフィアが先に言ってくれた。


 「エリナちゃん、カイメルさんの後ろにいるお姉ちゃんと少しの間遊んでおいで。私もカイメルさんとお話があるから」


 ソフィアはニコリと笑いながら、エリナを説得させようとした。そして、俺もソフィアに続いた。


 「そうだな。エリナ、カイメルさんの後ろにいるお姉さんと少し遊んでおいで」


 俺もニコリと笑いながらエリナに言うと、カイメルさんの後ろにいる女性に一度お辞儀をした。そしたら、その女性も俺に一礼した。

 また、さっきの俺の笑顔を見たエリナはドン引きしていた。


 「カズマ、さっきの顔キモーい」

 「確かにね!?(笑)」


 ソフィアはくすくすと笑いながら、エリナに同意していた。そして、エリナも次第に笑い始めた。



 「クスクス」



 「こら!二人して笑うな!(苦笑)」

 「だって、カズマのさっきの顔ホントにキモかったんだもん」


 俺は、とりあえずノリに乗って苦笑いした。俺たちが一旦落ち着くと、エリナは俺たちに言った。


 「私、ソフィア姉とカズマのこと待ってる」

 「ああ。少しの間だけ待っててくれ」

 「そうだね。直ぐ終わるから待ってて」


 エリナはさっきの笑いで勇気付けられていた。そして、エリナは少しの間俺たちのことを待つことにした。


 「また後でね!?」


 そう言い、エリナはカイメルさんの後ろにいる女性の方へ行った。


 「じゃあ、行こうか?エリナちゃん」

 「うん」


 そしてその女性はエリナの手をとり、ローランド教会の中へと一緒に入って行った。っと思ったら、エリナは一瞬俺たちの方を向き、一言俺たちに言った。


 「カズマ、さっきの顔キモかった(笑)。でも、ありがとう。そして、ソフィア姉もありがとう」

 「わ、分かったから、早く行きな」


 俺は少し顔を赤くしながら、エリナに言った。すると、エリナは一瞬俺に笑顔を見せて教会の中の方へ入って行った。

 か、可愛かった。少女らしい可愛さだった。今初めて、エリナは俺に笑顔を見せてくれた。全く惚れてしまいそうな笑顔だった。




 「お待たせしまって、すみません」

 「大丈夫ですよ。それに、三人とも仲良いんですね!?」

 「まあ、そうですね(笑)」


 俺はカイメルさんを待たせてしまっていた。俺はそれについて一言謝ると、カイメルさんは簡単に許してくれた。そして、カイメルさんは教会の入り口の隣にある長いベンチを指しながら、俺とソフィアを勧誘した。


 「とりあえず、そこのベンチに座りましょうか?」

 「そうですね」


 俺はカイメルさんの勧誘を受けた。そして、カイメルさん、ソフィア、俺は一つのベンチに腰を掛けた。


 「まず、カズマくんにソフィア、大丈夫でしたか?失礼かもしれませんが、一度お亡くなりになられたのでしょ?」

 「まあ、そうですね。僕は大丈夫です。この通り、傷一つありません」


 俺は自分の体を見せながら、応えた。


 「私も大丈夫です」

 「そうですか。なら良かったです」


 カイメルさんはソフィアの無事も確認を取れたら、一安心していた。

 その頃、俺とソフィアは俺たちが一度死んだことなんてエリナには聞かれたくないと思っていた。だから、エリナを少しの間席を外させたのは正解だと思った。

 さっきの質問以降、カイメルさんは俺たちの死について何も聞いてこなかった。普通は気になるはずだ。人間は一度死んだら、生き返らない。それに、人を蘇生する魔法なんて存在しない。だから何故俺たちが今もなお、生きてるのかがとても不思議に思えるはずだ。なのに、カイメルさんは俺たちに何も聞いてこなかった。カイメルさんは、かなり俺たちに気を使ってくれたんだろう。



 そして次に、カイメルさんは俺をなんらかのパーティに誘ってきた。


 「あのー。皆んなでカズマくんにお礼を言いたいので、明日の昼にローランド教会の前でパーティーを開催するんですけど、明日のパーティーに主役として参加してくれますか?」

 「ありがとうございます。ですが、すみません。明日は少し用事があって、ローランド魔法学院に勤められてるリリシア先生のご自宅を訪ねないといけないんです。なので、夜でも良いですか?」

 「そうですか。分かりました。では、夜にパーティーを開催いたしましょう」



 俺はパーティーの時間を夜に変更できないかカイメルさんに尋ねると、カイメルさんは直ぐ変更してくれた。


 「良いね、パーティー。面白いそうだね、カズマくん!?」

 「うん」


 ソフィアはなんか興奮していた。俺も内心ではとても嬉しかった。俺に感謝をするために壮大なパーティーを開催してくれるなんて、思ってもいなかった。


 「それと最後に、カズマくんたちの今日泊まる宿なんですけど、是非私の家に泊まっ下さい」

 「いや、それは流石に悪いですよ」

 「いや。大丈夫です。私、このあと教会で用事がありまして、今日は多分家に帰れないと思うんです。だから、私の家に泊まって下さい」

 「では、お言葉に甘えて、今晩だけお借りします」


 俺は一度断ったが、今晩だけカイメルさんの家に泊まることにした。


 「食材とかも家にあると思うので、ご自由に使って下さい。ベッドは二階にクイーンサイズが二つあります。そして、これが家の鍵です」

 「ありがとうございます」


 「ソフィア、カズマくんとエリナちゃんを私の家に案内してあげてね!?」

 「分かりました」


 俺はカイメルさんから家の説明を受け、有り難く家の鍵を頂いた。そして、俺はカイメルさんのご自宅が何処にあるか分からなかったから、ソフィアが案内してくれることになった。


 「それじゃあ、行こうか、ソフィア?」

 「うん。いや、ちょっと待って、カズマくん」


 俺が教会の中にいるエリナを向かいに行くためにベンチから立ち上がったら、ソフィアに少し止められた。


 「あの、カイメルさん、一つ尋ねたいことがあるんですけど、宜しいですか?」

 「何でしょうか?」

 「あの、私のお母さんって今何処にいるか分かりますか?」

 「ソフィアのお母さんなら、今リリシア先生のご自宅でリリシア先生とお話をなさってます」

 「ありがとうございます。明日、パーティーでお母さんに会おうと思います。もしカイメルさんが何処かで私のお母さんを見掛けたら、そうお母さんに伝えてくれませんか?」

 「分かりました」

 「ありがとうございます。カズマくん、待たせてごめん。行こ」


 ソフィアはお母さんの居場所を知って、一安心していた。そしてソフィアは俺に一言言い、ベンチから立ち上がった。そのまま俺たちは一緒に教会の中へ入って行った。



 教会の中には沢山の人がいた。幼い子から老人までいた。

 全員、避難してきたのだろう。

 俺は周りの人たちのことを考えてると、教会の奥の方に先程の女性とエリナがいた。二人は仲良く何かで遊んでいた。


 「エリナちゃん?」


 ソフィアがエリナのことを呼ぶと、エリナは後ろを振り向き、俺たちに気付いた。


 「ソフィア姉、お話は終わったの?」

 「うん。終わったよ。それで、今日はカイメルさんの家に泊まることになったのよ。だから、行くわよ」

 「はーい。お姉ちゃん、一緒に遊んでくれてありがとう。また、遊ぼうね!?」

 「うん。またね」


 エリナはその女性にしっかりとお礼をし、ソフィアの下へ来た。そして、その場を離れる時にソフィアもその女性に一度頭を下げてお礼をした。 


 「ありがとうございました」


 俺もソフィアに続いてお礼をした。


 「ありがとうございました」

 「いえいえ。とても楽しかったですよ」


 俺たちはその女性の言葉を聞いて、教会の外へ出た。外ではカイメルさんは別の人と話をしていた。カイメルさんのご自宅に向かう前に、俺とソフィアはカイメルさんに一礼をした。どうやらカイメルさんも気付いたらしく、俺たちに一礼をしてくれた。


 「カズマくん、エリナちゃん、こっちだよ」


 そして、ソフィアはエリナと俺をカイメルさんのご自宅まで案内し始めた。




 「そう言えば、エリナ、さっきはお姉さんと何して遊んでたの?」


 俺は歩きながら、エリナに問いた。


 「カズマには教えなーい。でも、ソフィア姉には教える」

 「さっきね、私、さっきのお姉ちゃんとカードゲームをしてたの。とても楽しかった!」

 「それは良かったね。エリナちゃんは勝てたの?」

 「勝てたよ!」

 「それは良かったね」

 「うん!今度、一緒にやろうね?」

 「良いわよ」


 エリナは俺にまた冷たい態度をとり、ソフィアと楽しそうに話していた。俺は少し寂しかった。それと、俺はまた新たなことを今知った。この世界にもカードゲームが存在することを。



 俺はこのあとソフィアとエリナの会話になんとか入ることができた。そして三人で楽しく話してると、カイメルさんの家に辿り着いた。


 「カズマくん、ここだよ」

 「へー。普通に家よりはなんか大きいね?」

 「うん。そうだね」


 俺が外から見る限り、カイメルさんの家は木造で出来ていて普通の家よりは少し大きかった。

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