06話. 想いに応えるために

 「うぉぉぉぉぉ!!」




 俺はまたもや剣を思いっきり振ったが、ヴァルディフォードはまた簡単に避けた。しかも、それは一回だけでは無かった。何度も何度もヴァルディフォードは避けた。結局俺は二十回ほど精霊剣ソウルソードを振ったが、一回もヴァルディフォードに擦り傷さえ与えることができなかった。


 「だから、言ったでしょ??君は僕に勝てない。弱すぎる」

 「ク、クッソ。舐めやがって」


 ヴァルディフォードは俺を煽ったあと、火属性の中で最弱の魔法を連発してきた。


 「火の玉ファイアーボール火の玉ファイアーボール


 全く舐められたもんだ。

 俺は簡単にヴァルディフォードが放つ火の玉ファイアーボールを次々と交わしていった。

 なんだ、楽勝ではないか。

 しかし俺が何回か避け続けると、ヴァルディフォードは連射速度を上げてきた。流石に連射速度が上がると、俺でも全部避けることは厳しかった。だから、俺は精霊剣ソウルソードを使って防ぐことにした。

 もしこの世界の魔法があの世界とほぼ同じ仕組みなら、いけるはずだ。

 ヴァルディフォードが次の火の玉ファイアーボールを放った時、俺は火の玉ファイアーボールを半分に斬るようなイメージで精霊剣ソウルソードを振り落とした。すると、火の玉ファイアーボールは見事に消えた。

 やはり、予想通りだったか。




 精霊剣ソウルソードの特徴は、火属性、水属性、風属性、土属性の四種類の属性の魔法を全て断ち斬ることができることだ。それは、精霊剣ソウルソードは四種類の属性が混ざり合ってできた剣だから、魔法を互いに消し合うことができるからだ。水属性は火属性に強い。火属性は土属性に強い。土属性は風属性に強い。風属性は水属性に強い。

 これが「精霊剣ソウルソード」だ。




 どうやら、ヴァルディフォードはまだこの剣が精霊剣ソウルソードだと言うことに気付いていないらしい。


 「クゥ。それは、水剣アクアソードか!?なら、これはどうだ??」



 「風の玉ヴェインボール



 今度はヴァルディフォードは風の玉ヴェインボールを放ってきた。しかし俺はそれを恐れることは無く、またもや簡単に風の玉ヴェインボールを斬り消した。


 「何だと??なら、これは??」



 「土の弾ソロブレット水の弾アクアブレット!」



 今度はヴァルディフォードは土属性と水属性の二種類の魔法を連発してきた。しかも、魔法の強さを一段階上げて来た。それでも俺は怯むことなく、上手く斬り消すことができた。


 「な、なに???まさか、君、その剣は精霊剣ソウルソードか??」


 やっとヴァルディフォードはこの剣の正体を知ったらしい。そして、ヴァルディフォードは少し苛立っていた。


 「そうだ。これは精霊剣ソウルソードだ!お前を倒すためにソフィアが死の間際に作ってくれたんだ」

 「そうか。あの子娘が、か。まあ、良くやったな。それだけは褒めてやろう。だがしかし、その剣を使っても僕には勝てない」

 「いや、勝てる。絶対勝てる!精霊剣ソウルソードは火属性、水属性、風属性、土属性の四種類の属性魔法を断ち切ることができるんだ」

 「まあ、確かにそうだ。しかし、一つだけ絶対に斬れないものがある。では、見せてやろう!」



 「闇力ダークフォース!」



 「な、なんだ、この魔法は!?見たことがない」

 「まあ、そうだろうな。闇属性の魔法を見るのは初めてだろうな。僕が闇属性の魔法を見せたのは君で六人目だ」

 「や、闇属性??昨日ソフィアが言ってたやつか。闇属性か何だか知らないけど、それも斬り消してやる!」


 俺に向かって飛んでくる何本もの黒い腕を俺は精霊剣ソウルソードで斬り落とそうとした。しかし俺はその黒い腕を斬り落とすことができず、精霊剣ソウルソソードを持っていた俺の右腕が何本もの黒い腕に掴まれてしまった。そして次の瞬間、俺の右腕は黒い手によってもぎ取られてしまった。


 「クゥ!マジか...」


 俺は一旦膝を地面に付けた。俺の右肩からは血が大量に流れている。これは、ピンチだ。今右腕を失った俺は、もう左手でしか精霊剣ソウルソードを持つことができない。



 「カズマさんに加勢しろ!まず、数名でカズマさんの右肩から流れてる血を治癒魔法で止血しろ!残りのやつはカズマさんに治癒魔法をかけ終えるまで、時間を稼いでろ!」

 「はい!」



 なんか、俺の背後が騒がしかった。俺が後ろを振り向くと、他のみんなが意識を取り戻していた。そして数名が俺の元に来て、俺の右肩に治癒魔法をかけてくれている。


 「すまない。ありがとう」

 「いえいえ、これくらいは」


 そして俺の前方では、残りの人たちがヴァルディフォードと必死に戦っていた。



 「ヴァルディフォード!カズマさんが復活するまでは、私たちが相手です!」

 「そうか。少しは楽しましてくれよ。お嬢ちゃん。」

 「では、行きます!」



 「炎牢獄フレイムプリズン!」

 「風の矢ウィンドアロー!」

 


 みんなもソフィアのために戦ってくれてる。それは、何よりも俺は嬉しかった。


 しかし、ヴァルディフォードは彼女たちの魔法も簡単に消してしまった。


 「殺すには、少し惜しいな。なら...」

 


 「闇空間ダークロゴス!」



 ヴァルディフォードはまたもや闇属性の魔法を放った。その魔法は彼女たちを一つの黒色の檻に閉じ込めてしまった。



 「み、みんな!!」



 俺が彼女たちの名前を叫ぶと同時に、俺の右肩への治癒魔法は終わった。


 「ありがとう。これでまた戦える」


 俺は彼女たちにお礼を言って、急いで左手で地面に落ちている精霊剣ソウルソードを拾った。彼女たちのお陰で俺の右肩からは血がもう流れていない。だから、より戦いやすくなった。

 だが、今はもう片腕しか残っていない。なら、あの攻撃技を使ってみるか。それは魔法も同時に放てる剣技。魔法が使えない俺でも使用することができる剣技。もし、俺の中に魔力が宿っているのであればの話だが。

 俺が出そうとしている剣技は「精霊光線ソウルマスター 」というものだ。これは、火属性、水属性、風属性、土属性の四種類の属性が混ざり合ってできた魔法の斬撃を放つ剣技だ。世の中には魔法があまり得意では無い人がいる。その人たちでも、魔力さえ有れば生み出すことができる剣技が「精霊光線ソウルマスター」だ。

 だが、今まで魔法を簡単に使い越してきた俺はこの世界では魔法が一つも使えないので、自分に魔力があるかが分からない。だから、俺は一か八かで精霊光線ソウルソードを放たないといけない。つまりはこういうことだ。



 魔力が有れば戦える。無ければ、死ぬ。



 俺は一か八かで精霊光線ソウルマスターを放つためにヴァルディフォードに歩き近づいた。


 「おい!今からお前を斬る!そこから動くな!」

 「良いだろう。受けてやるよ」


 ヴァルディフォードは俺の提案に乗ったか、彼女たちから目を離し、俺の方を向いた。魔法で一本の魔剣を作った。


 「これは、闇属性の魔法で作った闇黒剣デーモンソードだ。さあ、かかって来な」


 俺は精霊剣ソウルソードの茎を左手で思いっきり握り、精霊光線ソウルマスターを出した。

 


 「精霊光線ソウルマスター!!」



 やはりヴァルディフォードは俺の剣技を彼の闇黒剣デーモンソードで防いできた。だが俺はここで負けるわけにはいかないので、最後の力を思いっきり振り絞った。

 


 「うぉぉぉぉぉ!!」



 すると、俺の精霊剣ソウルソード闇黒剣デーモンソードを屁し折り、ヴァルディフォードの体の奥深くまで突き刺さった。これでやっと、ヴァルディフォードに攻撃を与えることができた。

 しかし、ヴァルディフォードは自分の体に精霊剣ソウルソードが刺さってることについてあまり気にしていなかった。それ以前に、ヴァルディフォードはもう片方の手にもう一本の闇黒剣デーモンソードを持っていた。

 俺がそれに気付いた時にはもう遅かった。


 「君、今の剣技凄かったね!?それだけは褒めてやる。でも、もう君はもうここで死ぬ。さらばだ」


 次の瞬間、ヴァルディフォードはもう一本の闇黒剣デーモンソードで俺の心臓を突き刺した。



 「グハッッ!」



 俺は口から大量の血を吐き出した。そして俺は意識を失いかけ、精霊剣ソウルソードを左手から離して地面に倒れてしまった。

 ここまでか。ごめんな、ソフィア。約束守れなかった。今俺もそっちに行くから。

 俺が自分のことを哀れに思ってると、俺の耳元にソフィアの声が聞こえてきたような気がした。


 

 「そんなこと無いよ。カズマくんは私のために最後まで戦ってくれた。ありがとう」



 俺はこのような言葉を最期に聞けて嬉しかった。そして、俺は完全に意識を失ってしまった。

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