03話. ローランド村

 「ソフィア。ー人で歩けるから大丈夫だよ」


 俺は空いてる左手でソフィアの手を掴んだ。


 「あ、ごめん。つい、村を案内すると考えてしまったら浮かれてしまった。だって、私はローランド村が大好きだから」


 ソフィアは俺に笑顔を見せながら俺の右手を離した。


 「ソフィアは、ローランド村が大好きなんだね」


 俺はソフィアがどれだけこの村を愛しているかをさっきのソフィアの声とトーンで理解することができた。


 「じゃあ、普通に歩こうか」

 「うん」

 「それにしても、ソフィアって大会にも出れる実力があるんだ。凄いね!?」

 「あ、ありがとう」


 ソフィアは少し照れながら答えた。


 「その大会に出てみたら??そのアリスって子、ソフィアのライバルなんでしょ?お母さんのことは心配しないで良いよ。ソフィアが大会に出場してる間、俺がソフィアのお母さんの面倒を見てあげるから」


 俺は、さっきのソフィアとリリシア先生の会話からアリスって子がソフィアのライバルだと直感した。


 「うーん。分かった。じゃあ、カズマくんにお願いしようかな」

 「おう!任せておけ!」


 俺は自信満々に答えた。


 「じゃあ、2日後リリシア先生に伝えないと...」

 「そうだな」



 俺とソフィアが歩いてると、前方に木材で構築された大きな建物が見えて来た。そして、ソフィアはその建物を指しながら俺に教えてくれた。


 「まずはあれよ。あれはローランド村の情報を常に把握してるところだよ」

 「そうなんだ」

 



 まず、俺たちがやってきたのはこの村の市役所みたいんなところだった。中に入ると、ー人の老人がフロントの人と話していた。


 「こんにちは、カイメルさん」


 その老人はソフィアの元気な挨拶を聞いて、俺たちの方を向いた。


 「おやおや、こんにちは、ソフィア。えっと、そちらの彼は?」

 「カイメルさん、紹介するね。この人はカズマくんって言うの。さっき道に迷っていたからローランド村まで案内したの」


 カイメルさんは少し納得した上で、俺の方を向いた。


 「こんにちは。そして、初めまして、カイメルさん。僕は、カズマと申します」

 「これはこれは、初めてまして、カズマくん。私、ローランド村の村長のカイメルと申します。失礼ですが、カズマくんは何歳ですか?」


 カイメルさんが俺に年齢を聞くと、ソフィアが興味深そうに俺の方を見ていた。そして俺に問いた。


 「そう言えば、聞いてなかったね。カズマくんっていくつなの?」


 少し恥ずかったせいか、俺はいつもよりも小声で答えてしまった。


 「えっと、17歳です」

 「カズマくんって、私と同い年なんだね。初めて知った」

 「ソフィア、なんか安心してない??(笑)」

 「え、あ、いや、別に...」


 なんか、ソフィアが怪しかった。でも、まあ、何となく予想はついた。



 すると、カイメルさんは俺にローランド学院のことについて問いてきた。


 「カズマくん、良ければこの村の学院に通ってみませんか?」

 「え、あ、でも、僕金欠なんで、とても学院に通える額など持っていません」


 俺はそう言うと俺の隣からある人の声が聞こえた。


 「カズマくん、それは大丈夫だよ。私がカズマくんの学費料を払ってあげる!」


 ある人とはソフィアのことだった。


 「流石にそれは悪いよ。学費料って結構高いんでしょ?」


 ソフィアが俺の質問に答えようとすると、俺たちの会話を見ていたカイメルさんがサンタのおじさんみたいに笑っていた。


 「ほー、ほっほっほー。二人とも仲が良いのう。ソフィアがカズマくんのことを紹介したことだし、特別に学費料をタダにしてあげますよ。あ、でも、カズマくんはクラス分けテストを後日受けて下さいね」



 「本当ですか??」



 俺とソフィアは同時に目を輝かしてカイメルさんに確認した。


 「本当ですとも。この後ソフィアの家に詳細が書かれた手紙を発送いたします」

 「ありがとうございます」


 俺はカイメルさんに感謝した。それは、魔法を学ぶことができるからだ。まさか、この世界に来て学院に通えるとは夢みたいなものだ。



 俺はそのあとカイメルさんと少しお話をして、市役所みたいなところを出た。次にソフィアに商店街を案内された。



 「ここが、この村でー番大きい商店街よ」


 俺はソフィアが俺にこの村の魅力を頑張って伝えようとしてることが、ソフィアの声やトーンなどで分かった。


 「そうなのか。結構大きいね」


 店には俺が初めて見る食べ物なども並べられていた。少し歩くと、偶然ソフィアの友達に会った。彼らの名は、ガイスとシズ。ソフィアは彼らと楽しく話していたが、「ソフィアの隣にいる子は、ソフィアの彼氏か?」って聞かれた時、ソフィアは少し恥ずかしそうな声で「ち、違うよ。」って答えていた。ソフィアは彼らと話が終わると、俺の方を向いた。


 「じゃあ、次行こ」



 陽が落ちるまで俺はソフィアと一緒にこの村を一周した。学院はどちらとも白い建物で大きかった。日本の建物に例えるなら、国会議事堂みたいな感じだった。そして、ソフィアの家に着くと、一通の手紙がポストに入っていた。ソフィアがその手紙をポストから取り出した。


 「はい、これ。多分、クラス分けテストのことについてだと思う」


 俺はソフィアから手紙を受け取ると、その手紙を開いた。手紙には次のようなことが書いてあった。




カズマ様へ


この度はローランド村の学院への入学おめでとうございます。魔法学院では5クラス、騎士養成学院では4クラスに分けられます。なので、カズマ様にもクラス分けテストを受けて貰うことになります。テストは、筆記試験と実技試験の2つになります。学院はお好きな方をお選びいただけるので、どちらかの日時をお選び下さい。日時は以下の通りです。

魔法学院: 3日後13:00-16:00

騎士養成学院: 3日後9:00-12:00

テスト当日は、学院のフロントまでお越し下さい。


ローランド魔法学院・騎士養成学院




 俺はこれを読んで、真っ先にローランド魔法学院のテストを受けることを決めた。それは、また魔法を学びたかったからだ。それに、俺が今魔法を使えない理由の手掛かりにもなりそうだ。


 「俺、ローランド魔法学院のテストを受けることにするよ」


 俺はソフィアにこのことを伝えた。すると、ソフィアは嬉しそうな笑顔になった。


 「そう。分かった。合格すると良いね。私、カズマくんと同じクラスが良いな」

 「俺もだよ(笑)」


 俺とソフィアは互いに笑いながら、「ただいま」と言いながら家に入っていった。



 次の日の朝、何か外が騒がしかったので俺は目が覚めてしまった。

 何事だ?

 俺は家の窓から外を覗くと、家に火がついていたり、空が黒くなっていた。俺は慌ててベッドから起き上がり、家の外に出た。そして、外には数体の魔物がいたのだ。

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