02話. ソフィア

 「着いたよ。ここが私の家。お母さんと二人で暮らしてるのよ。お母さんと少しカズマくんのことについて話してくるから、少しの間ここで待ってて」

 「うん。分かった」


 そうソフィアは俺に伝えて、「ただいま!」って言いながら家の中に入っていった。家の壁が薄いせいか、中でソフィアが母親と話してる声が聞こえてくる。俺は、ソフィアが出てくるまでずっとドアの前にいるのも草臥れるので、少し家の前の道に出て村全体を見回した。この村の住人は別にお金持ちでもないので、普通の服を着ていた。また家も普通の家だった。そして、みんなフレンドリーに話している。しかし、俺の見間違えかもしれないけれど、ソフィアの家だけ他の家と比べて少しだけ高価に見えた。俺がそう思ってると、30代ぐらいの女性が俺の方に向かって歩いてきた。



 「こんにちは。あれ?、見ない顔だね。もしかして、隣の村とかから来たの?」

 「こんにちは。まあ、そんな感じです。僕は、神谷風間と申します」

 「あ、申し遅れました。私は、リリシアと申します。この村の学校、ローランド魔法学院の教師です」

 俺はこの時、この世界にも「学校」と言うか、「学院」と言うもの存在があることを知った。


 「それで、何故、カズマくんはここにいるの?道にでも迷ってしまった?」

 「あ、いえ。違います。僕は、僕の背後にある家に住んでるソフィアと言う子を待っているのです」


 俺は後ろを振り向いて、ソフィアの家を指しながら答えた。


 「あら、カズマくんって私の生徒、ソフィアと知り合いなの?」

 「まあ、そんな感じです。それと、ソフィアはリリシア先生の教え子だったのですね」

 「そうなんだよね。実は、私はソフィアのことを彼女が幼い頃から知っていてね。今だと、私よりもソフィアの魔法の方が上なんだよね。だって、ー人で5種類の属性魔法を使えるんだよ」

 「五種類の属性魔法を使えると凄いのですか?」

 「そりゃ、凄いよ。普通の人はニ種類の属性魔法を使うの。その中でも優れてる人は三、四種類の属性魔法を使えるんだよ。でも、五種類の属性魔法を使える人は更に格上の存在。この世で五種類の属性魔法を使えるのはソフィアを含む7人だけなんだよ」


 俺はこの時、この世界は何処か俺のいた世界に似ていると思った。例えば、五種類の属性魔法を使えるのは7人しかいないとか。これは、俺がいた世界だと、俺を含めて超級魔法を使える人数と同じだった。


 「それは凄いですね。今初めて聞きました」


 俺はソフィアが母親との話が終わるまで、リリシア先生に魔法のことや、この村の学院について教えて貰っていた。



 まず、この村には二種類の学院があるらしい。ーつ目は、リリシア先生が勤めていて、魔法のことについて学習するローランド魔法学院だ。二つ目は、剣術を磨くローランド騎士養成学院。

 次に、魔法のことについて教えて貰った。リリシア先生によると、魔法は5段階に分けられるらしい。レベル1コモン級、レベル2アンコモン級、レベル3レア級、レベル4エピック級、レベル5レジェンド級の5つだ。これでこの世界の魔法について知ることができた。俺はそう思っていたが、内心でが何かが引っかかっていた。俺は何のことか考えようとした瞬間、



 「キィィィィィ」



 と、音を鳴らしながらドアが開いた。そして、中からは嬉しそうな表情でソフィアが出てきた。ソフィアは一瞬リリシア先生の方を向き一礼をして、俺の方を向いた。


 「お待たせ、カズマくん。お母さんが、暫くの間家に居て良いよだって」

 「あ、いや、でも悪いよ。なんか、その辺の宿とかを借りるよ」

 「全然大丈夫だよ。大丈夫だから、家に暫く居て。それに、カズマくんは宿に泊まるお金は持ってるの?」

 「そ、それは...」


 俺は言われて欲しくないところを言われてしまった。そもそも俺は、自分が金欠だったことをすっかり忘れていた。


 「でも、男ー人が女二人で暮らしてる家に簡単に上がれると思う?」

 「え?それは大丈夫でしょ!」


 ソフィアは自信満々に答えた。


 「いや、だって俺が二人に何かをするかもしれないんだよ?」

 「多分、カズマくんはそんなことしないよ。カズマくんは私の友達で、そんなことしない人だって信じてるから、大丈夫だよ」


 ソフィアは微笑みながら俺を信じてくれた。そして、「友達」って言ってくれた。その時、俺は嬉しかった。この世界で初めての友達ができたから。だから、俺はソフィアの家に居させてもらうことにした。


 「じゃあ、お言葉に甘えて、今日から宜しくね、ソフィア」

 「分かった。今日から宜しく。じゃあ、カズマくん、この後病院まで案内するから少しの間待ってて」


 そう俺に伝えると、今度はソフィアはリリシア先生の方を向いた。


 「リリシア先生、こんにちは。今日はどうされましたか?」

 「こんにちは、ソフィア。今日はあなたに良い知らせを持ってきたよ」

 「何でしょうか?」

 「えっとね、今度王都で開かれる第45回ポートマス魔法大会に出場してみない?あなたのライバルのアリスも出場するらしいよ」

 「ポートマス大会ですか!?」

 「そうよ。アリスと決着を付けることができるわよ。どう、出場してみない?」

 「んー。出場したい気持ちはあるんですけど、私がいない間、お母さんを家に1人にしておく訳にもいかないし... 少し検討する時間を頂いても宜しいでしょうか?次の先生の授業の時に返事をお伝えします。なので、2日間時間を下さい」

 「分かった。良い返事を待ってるね。では、私はこの後用事があるので、また2日後、学校で」

 「分かりました。では」


 リリシア先生はそう言って、ソフィアに背を向けて歩いていった。リリシア先生の姿が見えなくなると、ソフィアは俺の方を向いた。



 「じゃあ、病院まで案内するね」

 「そのことなんだけど、俺もう大丈夫みたい。記憶が段々戻ってきた。だから、病院ではなくて、ローランド村を案内してよ」

 「あら、そう。分かった。じゃあ、行こ、カズマくん!」


 ソフィアって案外元気な子で簡単に物事を信じてしまう人かな?今も俺の言ったこと簡単に信じてるし。それに、さっきも自信満々に「大丈夫!」って言ってたし。

 俺がソフィアの性格について考えてると、ソフィアは俺の右手を取り、リリシア先生が行った方向と逆の方向に俺を引っ張っていった。

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