第9話 王族

 その後、召喚された場所にみんなが集まる。


 どうやら、ユウトの言う通り。

 男性の半分は、取り込まれたようだ。

 メイドや、女騎士?

 女性連れで、集まっている。


 女性も、一部。

 この世界の男性と、いるようだし。


 すると。


 「ユウイチさん。ちょっといいですか?」


 そう言って、先程助けてくれた女性に引っ張られる。


 「ユウトさんと、話した彼氏の話ですが。私と、カップルの振りを。お願いできないでしょうか?」


 「俺でいいの?」


 「残り物。失礼。見てわかるように、男性の半数は。もう駄目です。なので、先程の作戦を開始しようと思います」


 「皆、賛成したの?」


 「あそこにいる女性は、聖女なのですが。一緒にいる男性と、少し話しただけなのに。あの状態です。それで、皆焦ってしまって。フリをしてくれる男性を探し回っています」


 確かに、あれは酷い。

 目が、ハートになっている。

 挙動不審な、女性は。

 フリをしてくれる男性を、探しているのだろう。


 「いかがでしょうか?」


 「何の話だ!」


 師匠!

 そこは、傍観して欲しかった。


 「師匠すみません。この世界の男性に、言い寄られて困っているそうで。自分に、彼氏役を頼まれまして。受けようかと」


 「そんな物、断れば良いだけだろう」


 「断っても、次の相手が来るようで。この世界に、馴染めていない我々は。言い寄られる事に、恐怖を感じる事があるのです」


 「軟弱だな!そんなんだと、この世界で生きていけないぞ!」


 それでも、俺は反論しようとするが。


 「そうですね。ユウイチさん、今の話は無かった事に」


 「あ、あの〜」


 フリでも、彼女ができるチャンスを逃し。

 ガックリとしていると。


 「何だ?あんな貧弱な女が良いのか?もっと良い女がいるだろう!俺みたいな強い女が!」


 そんな、胸を張って言われても。

 俺は、あんな可愛くて。

 危機を、助けてくれた女性の方が。

 ヤンバーより、百倍良い!


 そう思っても、口には出さず我慢する。

 もし言ってしまえば、簡単に殺されてしまいそうだ。


 「そうですね。ここに集まり何をするのでしょう?」


 「?あぁ、今日から3日間はこの世界の常識を説明する。これは、全員参加だそうだ!それと、教えるのは第3王子と第2王女になるから、集まったのは。その為、ご挨拶だとよ」


 少なくとも、5人は現国王の子供がいるのか?

 もっと、いるのかも知れない。

 そう、思っていると。


 「静まれ!これより、第3王子並びに。第2王女から、言葉を頂く」


 随分ソラーノは、気合が入っているな。

 バーリスは、何処かな?


 キョロキョロしていると、バーリスでは無く。

 サミさんを、見つけた。


 ヤンバーに、あっちに移動して良いか聞いてからサミさんの元へ。


 「おはよう御座います。サミ様は、どうしてこちらに?」


 「あまり気軽に、話しかけて欲しくないのですが。まぁ、いいでしょう。私は、鑑定スキルを持っています。その為、あなたのスキルを確認出来ましたし。他にも、希望があるかもと。あなた以外を、見に来ました」


 え?

 俺は、お姉さんを治す事のできる唯一の人なんじゃ?

 他にも、治せる可能性があるなら。

 俺は、お払い箱?


 「心配なさらなくても、約束は守ります。残り、12日ですね。期待していますよ」


 召喚されて、3日目。

 何とか、スキルを使えるようにしないとまずいな。


 「おい!何をコソコソ話してやがる!チャント、師匠に説明しろ!」


 「これは、ヤンバーさん。お弟子さんを取られたのですか?そんな酔狂な方がいたのですね」


 「何だと!A級の分際で、喧嘩売ってるのか?」


 どうやら、2人は。

 仲良くないらしい。

 睨み合っているけど、サミさんなんて簡単に殴られて飛んでいきそうなのに。

 強気だ。


 「貴方なんて、猿の知能しかない怪力女。嫁の貰い手も無いと、もっぱらのうわさではないですか?それに、姉が回復したら。同じ事を、言うでしょうね」


 「ふざけるな!いくら無詠唱で、魔法が放てるお前でも。S級の姉が、復活しても。S級の俺が、負けるわけねぇ!」


 「その割には、手を出さないのですね。そこは、猿よりも知能があると。認めてあげましょう」


 ヤバイ!

 いつ、どちらが攻撃を仕掛けても。

 おかしくない。

 ヤンバーが、手を出さないのが不思議だ。


 「ここにいるユウイチさんは、私もスキルについて、指導する立場。全く本意ではありませんが、姉の為。ヤンバーさんに協力致しますよ」


 それを聞いて、ヤンバーが。

 俺と、サミを交互に指差し。

 本当なのか?

 と、確認してくる。


 「サミ様のお姉さんを、治すために。教えて貰う約束をしています。勿論、師匠にも指導してもらう予定です」


 理解したのか、ヤンバーは。

 俺の頭を殴り、腕を組んで。

 仕方ねぇなと、サミと穏便に話し始めた。


 この2人が、どんな関係か気になるが。

 どうやら、始まるようだ。


 「召喚されし者達よ!第3王子ヘンリー・ミラス。ミラス王国を背負う者だ!魔王を倒す為、この国の為に!日々精進しろ!」


 この王子は、駄目だな。


 「召喚されし皆様。私は、第2王女デミラー・ミラス。この世界を救う為、どうか頑張って下さい。召喚する為に、優秀な人達が犠牲になりました。その分働いて貰わないと、困ります。この国の為、働いて下さい」


 これダメだ。

 王族も、腐ってやがる。

 自分達で、勝手に召喚しておいて。

 その言い草は、無いだろう。


 やはり、騒ぎ出す人がいる。


 「これで、この国のダメっぷりが分かっただろう。師匠の言う通りにしていれば、死なねぇようにしてやるからな!」


 「それは、心配ですね。ヤンバーさんに、言われても。猿並みの頭では、安心できないでしょう。3日間の全員参加指導が終わりましたら、私も指導致しますよ」


 「てめぇは、イチイチ喧嘩売ってくるんじゃねぇよ!オイ!ユウイチ!行くぞ!」


 鑑定スキルの事とか、色々聞きたいのに。

 ヤンバーに、引きずられるように。

 移動する。


 遠目に、サミさんが。

 手を振る姿を見て、何だかヤンバーさんと話す前と、後では。

 随分印象が違う。


 元気になれたように、見える。


 それは、いんだけど。

 これで、王族も当てにならない事がわかった。

 他の王子、王女は。

 もしかしたら、まともなのかもしれないけど。


 さて、この3日間の指導は。

 どんな感じなのか、わからないけど。

 死ぬ気で、学んで行かないと。


 死ぬイメージしか、わかない。


 いっそ、魔王と友達になりたい。

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