第8話 情報

 目が覚めると、腕が痛くて起き上がろうとするが。

 何かに、拘束されていて身動き出来ない。


 昨日寝たままの状態に、苦笑いする。


 ヤンバーに、抱き着かれ。

 動けないので、師匠と呼ぶが。

 何故か、余計に抱き締められ。

 このままだと、酸欠になってしまう。


 そう思っていた時、ノックの音が。


 「ユウイチさん起きてますか?」


 女性の声ではあるが、誰なのかわからない。

 助けてと言うべきか、悩んでいると。


 扉が開く。

 鍵付きの部屋なのになぜ?


 そう思ったが、昨日ヤンバーさんが入ってきた時。

 鍵をし忘れたのを、思い出したが時すでに遅し。


 「ユウイチさん?」


 俺と、ヤンバーさんの状態を見て。

 固まる、女性。


 そこには、見覚えの無い女性が!

 それに、一人では無い!


 「あ、あ、」


 今にも、叫びそうなので。


 「すみません!助けて下さい!首が締まって、息が苦しく…」


 そこで、完全にヤンバーの腕が俺の首にピッタリと絡まり。

 激しく、俺はタップしていた。


 後ろから現れた。

 またもや見知らぬ女性に、現状を把握したのか。

 助けに、入ってくれる。


 叫ぼうとしていた女性も、絡まった腕を引っ張ったり。

 起きてください!

 そう、声をかけてくれる。


 何とか、助けを借りて。

 脱出に成功する。


 「あ、ありがとうごじゃます」


 苦しさから、開放されて。

 少しどもりながら、お礼を言うと。


 「いえ」


 「どうして、こんな状況に?」


 誤解の無いように、説明しようとしていたら。


 「ん〜。良く寝た!」


 このタイミングで、起きるのかよ!

 余計な事を、言われる前に。


 「師匠!おはようございます。先程、首を師匠に締められていた時。このお2人に、助けて頂きました。着替もあるでしょうから、外に出て。3人で、話をして来ます」


 一気にそこまで言うと、ヤンバーが理解する前に。

 2人の手を引き、外に出る。


 「おい!」


 後ろで、なにか言っていたが気にしない。

 追いかけられても困るので、部屋の外に出ると。

 ユウトの部屋へ。


 ユウトは、隣の部屋なのは確認済みだった。


 「?ユウイチさん?どうしました?」


 「すみません。詳しい事情は、中で話しますので。入っていいですか?」


 無理矢理に近い形で、ユウトの部屋に入った。


 そこで、女性の手を握っていたままなのに気が付き離すと。

 警戒された。

 嫌われたかな?


 「さて、ユウイチさん。この状況は?」


 「すみません、ユウトさん。2人が、部屋を訪ねてきたのですが。昨夜ヤンバーさんが部屋に来て、指導の話をしているうちに。寝てしまいまして。お部屋を、お借りしたくて来ました」


 そう言うと、ユウトは苦笑いをして。


 「君も、他の人と同じで。部屋に女性を連れ込んだのかい?」


 「他の人?連れ込んだ訳ではなく。抵抗むなしく、無理矢理部屋に入って来て。勝手に寝た。それが、事実です」


 「私達、聖女の部屋にも。男性が、訪ねてきて困っているので。相談する為に、ユウイチさんの所に」


 まじで!

 信頼を、上げる事なんてしたかな?


 「どうして俺の所に?ユウトも個室だし」


 2人で言いよどむ。


 「あの。怒らないで下さいね。ユウイチさんは、無害そうだし。私達でも勝てそうだったので」


 あぁ、そういう事。

 解除スキルだし。

 他の男性が、怖ければ仕方ないよね。

 泣いてなんかいないよ。


 「そうですか、だいたいわかりました。ユウイチさん、有益な情報は得られましたか?」


 やはり、ユウトは侮れない。

 俺の考えを、わかっていたのか?

 一応彼女達に、話していいのか耳打ちすると。

 いずれ、皆には話す事なのでと言われた。

 「まず、この国は腐っている。早急に、この国から出る事を進める」


 「その理由は?」


 「この世界では、この国は最底辺。戦力もなく。周りからの、立場も弱く。言いなり状態みたいだ」


 「なる程、他からも情報を得ないと確証はないが。そう言う可能性が、高いのは知っていた」


 俺から聞かなくても、ユウトは知っているんじゃないだろうか?


 その後も、ヤンバーから聞いた話を伝える。


 蚊帳の外だった、女性2人の顔色が悪い。


 「それは、本当なのですか?」


 「私達、どうなっちゃうのですか?」


 「大丈夫。作はある。」


 そう言うと、ユウトが話し始めた。


 まず、この世界の戦い方。

 魔法の使い方。

 マジックアイテム等を、学ぶ。


 何か企んでいても、俺達が戦えないと。

 この国が、叩かれるので。

 嘘を、教えられる事は無いだろうとの見解で。


 知識を得て、他の国に行く人は。

 そこまで、ひどい状況にはなら無い。

 そう、考えていて。


 それより、残る者がかなり危険となり。

 ユウトも、この国に残される可能性が高く。

 他国に、移動がすんだら。

 残った人間は、脱出をする予定なんだとか。

 その為、協力して欲しいと言われた。


 「それで、近寄って来る男性の対処はどうしたら?」


 「なら、誰かの彼女だからとか嘘を付くのはどうだろう?ただ、拒否しても。変わりの人が、送られてくるだけだろうし」


 「ユウトさんの名前を、使ってもいいですか?」


 なんか、俺と対応違いませんか?

 まぁ、頼りないですよね。

 解除スキルじゃ。


 「別に構わないけど、複数人となると。大変だし。信用されないかも、知れない。ユウイチさんや、後信用できる人に。頼んでみるのはどう?」


 そこで、考え込まないで欲しい。

 悲しくなる。


 「わかりました。部屋に戻り、皆で話し合ってみます」


 「出来れば、他の女性達にも指導が始まる前に話をして欲しい。もう、手遅れの者もいるようだし」


 まじか!

 もう、この国の毒牙に掛かった者が?


 「まぁ、男性人は。半分ダメかもしれない」


 はや!

 もう?

 まだ、2日目ですよ!

 チョロすぎませんか?


 「ありがとうございました」


 そう言って、2人は出て行く。

 俺は、無視ですか?


 「で、ユウイチさん。ホントに手を出してないのですか?」


 「出しませんよ!完全に信用出来ると判断出来ませんし!そこは信用して下さい!」


 「わかりました。トオルさんとユウイチさんは、個別指導と聞いています。お互い情報交換をする為、毎朝この部屋で話す形でいいですか?夜は、忙しいようですし」


 わかりましたと、言いながら。

 俺の事、信じてないな。

 良いけど。


 「了解です。自分も、ユウトさん達みなさんが。どんな指導を受けるのか気になりますし。では、また明日」


 そう言って、自分の部屋に戻ると。


 いきなり、ヤンバーに叩かれた。


 「何するんですか?」


 「俺は師匠だぞ!許可なくいなくなるな!」


 え?

 これからは、許可なく移動も出来ないの?


 

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