第6話 解除スキル

 ユウイチが、いなくなった召喚の間では。


 ユウトは、今回の誓約に付いて。

 説明している。

 皆が、一度の説明で。

 納得する、訳ではないので。

 何度も、同じ話をさせられていた。


 セイカは、聖女ばかりが集まる場所で。

 女子会のように、聖女になれた事を喜んだり。

 今後どうなるか?

 今まで、どうしていたのか?

 そんな話で、盛り上がっていた。


 勇者の5名は、バラバラに。

 俺ツエーを、夢見て。

 妄想を、膨らませていた。

 1人はすでに、食事を運んできた侍女と仲良くお喋り中!


 なんだかんだ言って、元世界に未練がある人間は少なく。


 この世界に、ある意味期待していた。

 この国相手に、色々要求して。

 自由気ままに、生活出来ると思っている者もいる。


 魔法を使える者が、時たま試しに魔法を使ったりしている。

 漫画のような、この世界が。

 楽しみに思っているが。

 これは、ゲームでは無く。

 現実なのだ!

 そう理解しているのは、1割いるかどうか。



 ユウイチは、触らずに解除する方法を考えていた。

 ただ、今の情報が少ない状況では。

 治すのは難しい事は、わかっていた。


 「サミ様。私は、この世界の事を何も知りません。魔法の事。スキルの事。それらを、学び練習しないと治せないと考えますが。レベルが付いていない。この、解除スキルなら。解除出来ると、思います」


 「すぐには無理だけど、時間が立てば治せる?そういう事?」


 「必ずとは、お約束出来ませんが。全身全霊をかけて、マミア様を治すと誓います」


 「それで、私に何を求めるの?」


 「求めると言いますか、今後我々はどうなるのか等の、情報が欲しく思います」


 「そうですか。良いでしょう。2週間の期間を設け。治せる、もしくは治せる可能性がある。そう判断出来無ければ、2週間で切り捨てます。そのつもりでいてください」


 「わかりました」


 その後、皆の所に戻ると。

 ユウトが、明日の面談に付き合って欲しいと頼まれる。


 情報が欲しいので、喜んで引き受けた。



 翌日


 朝食も、パン、牛乳、塩スープだった。

 見た目、20歳位に見える集団だが。

 中身は、皆30歳以上。


 わがままを言って、暴れる者は少ない。

 いる事は、いるんだけど。


 「おい!ユウト!俺は勇者だぞ!この食事を、なんとかしろ!」


 昨日俺に絡んだ、カズヤが騒ぐ。

 俺は、近付かないように食事を済ませ。

 近くの兵士に話しかけたりして、情報収集に取り組む。


 暫くして、ユウトと俺は呼ばれた。

 今回は、聖女からセイカさん。

 勇者から、カズヤ。

 聖騎士から、トオル。


 この5人で、面接する事になった。


 面接をする部屋は、学校の教室?そんな感じの部屋で。


 机と椅子が、多数にあった。


 「希望通り、100名用意しました。1人ずつ面接されますか?」


 幾分、体調が良くなったのだろう。

 バーリスが、進行役をしてくれる。

 ソラーノは、いないが。

 会議の時にいた人が、何人かいる。

 その中には、S級冒険者アンバーもいた。


 「では、一人目。ガマル」


 「私の名は、ガマル。召喚者様に、お会い出来光栄です」


 俺は、皆が質問するなか。

 コイツは駄目だと、思っていた。

 媚びへつらう感じのガマル。

 だが、目は。

 俺達を、見下してるように見える。


 何人か、面接している内に。

 これは、だめなんじゃね?

 マトモな人は、一人もいないと感じていたが。

 4人は違うようで、何やら紙に。

 マル、ニジュウマル等付けている。


 一応、用意されていた紙があるが。

 俺は、一人もマルを付けていない。

 逆に、バツが数人いる。


 五十人を、過ぎた時。

 一人の女性が、目の前に立つ。


 「私は、ヤンバー。そこにいるアンバーの姉。B級冒険者だ」


 見た目、ゴッツイ。

 戦士かな?

 剣は無いけど、頑丈そうな鎧を着ている。


 ガチャガチャ音をさせて、重たそうだけど。


 「すみません、この世界の事を聞かれて。お答えできますか?例えば、この国や他国の歴史についてとか?」


 ここで、初めて俺は。

 発言した。


 カズヤは、嫌そうな顔をしたが。

 遮る気は、ないらしい。


 「愚問だな、サンライ家長女として教育を受けている。教育者として、申し分無いだろう」


 俺は、態度がでかいが。

 花丸をつけた。


 が、カズヤが。


 「!態度でかくないか?こっちは、勇者がいるんだぞ!敬語を使い敬えよ!土下座しろ!」


 この世界に、土下座なんてあるのか?

 やはり、カズヤと関わるのはまずい。

 いずれ排除されるんじゃないか?

 そう、俺は思った。


 「アンバー、コイツは何を言っているんだ!本当に、歴史上の人物。勇者なのか?」


 「一応召喚された者。そして、そこにいるカズヤ殿は勇者で間違いない」


 「こんなんで、大丈夫なのか?」


 「おい!俺を無視するな!」


 「黙れ!」


 そうヤンバーに言われて、カズヤは椅子から転げ落ちる。

 ビビリ、後ろに体重が移動して。

 そのせいで、椅子から落ちたようだ。


 「ヤンバーさん、すみません。私は、貴方に教えをこいたいのですがよろしいでしょうか?」


 何やら、アンバーとヤンバーの間で。

 教育しても無駄、そういう結論になりそうだったので。

 個人的にでも、教えて貰いたい。

 そういう思いで、お願いしてみた。


 「ふむ。アンバー、コヤツはどうだ?」


 「解除のスキルしか無い、無能です。止めておいた方が」


 まずいな、これだと。

 誰からも、教えて貰え無いかも知れない。

 俺のスキルが、知れ渡れば。

 無能と、レッテルを貼られ。

 捨てられる未来が、見えるようだ。


 「寛大なお気持ちで、どうかお願い致します」


 俺は、椅子から立ち上がり。

 土下座した。

 土下座を、理解しているようだし。

 俺の本気度が、これで伝わると良いのだけれど。


 「お前が、土下座してどうするんだよ!俺達は、魔王を倒す選ばれし者なんだぞ!お前は、クズスキルかもしれないが。簡単に、土下座なんかするな!」


 「ユウイチさん。立って下さい。そこまでしなくても、先生になる人はいっぱい。いらっしゃいますし。大丈夫ですよ」


 あぁ、セイカさんも。

 俺の中で、株が下降しまくる。

 マル印が、多かったもんね。

 騙されないと良いけど。


 「ハハハ、良いではないか!この世界の、師匠を見つけたのであろう。私も、師匠を得たいが。聖騎士としては、ヤンバー殿では、私と合わなそうだ。アンバー殿!私は、貴方に教えて貰いたい」


 聖騎士のトオルが、アンバーさんの方を向き頼むと。


 「ソナタは、ユウイチ殿のように土下座しないのか?」


 「お望みとあらば、土下座しますが?」


 「良いでしょう。トオル殿は、私が教育者になりましょう」


 これには、バーリスが驚くが。

 割って入る真似はしない。


 「アンバーが、そう言うなら。ユウイチとやらは、俺が教育者になってやろう」


 よし!

 グッジョブトオル!


 こうして、俺に教育者が出来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る