第5話 誓約

 会議は、長時間に及んだ。


 決まった事は、次の通りだ。


 1つ

 戦闘を望まない者には、生活が安定するまで。

 ここで、生活をさせる。

 その際、強要する事を禁止する。



 1つ

 今日の寝泊まりは、召喚された部屋を使い。

 明日からは、男女別の6人部屋を用意する事。



 1つ

 全員を、指導する人間を面接する為。

 百人を用意し。

 明日面接を、執り行う。



 1つ

 他国に、事情を説明し。

 代表者3名に、この国へと来て貰う。



 1つ

 能力の違う者も、態度を変えず。

 下げずんだり、けなしたりする事を禁止する。



 1つ

 我々召喚者に、命令する事を禁止する。



 これらを、誓約書に記入して。

 これで終わりと、思いきや。


 ユウトが、何やら呟いている。


 「神の名の元に、誓約はなされた」


 そう聞こえた瞬間!


 記入した紙が、光を放つと。

 2枚に分かれて、1つをユウトが手にする。


 周りは、皆慌てだすが。


 アンバーさんは、やれやれと言った感じに見える。


 ソラーノは、悔しそうな顔して。


 バーリスは、嘘でしょ!

 みたいに、口が開いたままだ。



 そんな事は気にせず、ユウトは外に出るので。

 俺も付いて行くと。


 「勝手に、色々決めてしまいすみません」


 「え?いやいんだけど。俺が、呼ばれた意味も。俺が、いた意味もわからなかったんだけど」


 「申し訳ありません。正直、相手に舐めて貰うため。解除スキルの、ユウイチさんに来て貰いました。他の人達にも、説明済みですので。気になさらなくて、良いですよ」


 こいつは、俺を。

 いつでも、捨て駒にする。

 そう感じた。

 皆とは、全員なのか?

 一部なのか?

 気になるが、今はこいつに付いていくしか無い。



 「さっきのは、魔法なの?」


 「えぇ、一応。賢者のスキルの1つで、誓約と言うみたいです。一気に、頭の中に情報が来ればいいのですが。少しずつなので、どうしても作戦を変えながらになってしまいますが。今回は、かなり良い方向に進んだと確信しています」


 他の人達が、どう考えているかわからないが。

 こいつは、危険だと思う。


 出来るだけ早く。

 こいつや、この城から抜け出さないと。

 かなりやばい気がする。



 初日の夜、食事は硬めのパンと牛乳。

 それに、塩味のスープが出された。


 一部から、これだけか?

 と、クレームが来たが。

 人数が多く、今後の食事を考えて。

 高い物は、用意出来ないとバーリスが来て。

 説明された。


 随分と、暗い顔をしている所を見ると。

 ソラーノに、叱られたのだろう。


 今夜は、皆。

 我慢している。

 そんな時に、声がかけられる。


 「お前がヒラノってやつか?」


 どうにも、いけ好かない男がそう言いながら歩み寄る。


 「そうだが、何処からその情報を?」


 知っているのは、セイカとユウトの2人。

 もし、鑑定とかあれば別だが。


 「そんなのは、どうだっていいだろう。解除のスキルは使えるようになったのか?」


 どうも、俺の情報を周りに知らせたいらしく。

 声が大きい。


 「いや、まだ使い道がわからないが。明日のこの世界の、説明でわかる筈だ」


 「ほう。その理由は?」


 なんで、こいつは。

 上から目線なんだ!

 てか、誰だよ!


 「申し訳無いけど、君は誰?」


 「あ~!!!てめぇは!聞かれた事に、答えりゃいいんだよ!」


 「え?嫌だけど」


 「何だと!コイツ!」


 殴り掛かりそうな、偉そうなやつと。

 俺との間に、1人割って入る。


 「カズヤ君!ダメだよ」


 「セイカさんは、離れててくれる?大丈夫!すぐ終わるから」


 なる程、情報源は君かい?セイカさん?


 「でも、喧嘩は良くないですよ」


 「怪我したら、セイカさんの聖女の力で治せばいいのですよ」


 「やり方もわからないし」


 面倒くさい!

 俺は、飯の後。

 魔法や、剣術などの実験をしたいんだけど!

 早く終わってくれないかな?


 他人事ように、考えていると。


 兵達が、近付いてくる。

 どうやら、騒ぎ過ぎたようだ。



 「ご歓談中失礼致します。ここに、解除スキルの方がいると。伺いました。少し、ご同行願えますでしょうか?」


 お!

 どうやら、助け舟が!

 ユウトかな?


 「はい自分です!」


 「待てよ!話は終わってねぇぞ!逃げるのか?」


 「お話の途中ですが、兵士さん達を待たせる訳には行きませんので。お名前を、教えて下さいますか?後で探しますので」


 「いい心がけだ!俺は、勇者カズヤだ!良く覚えておけ!」


 「勇者様でしたか、いずれお話いたしましょう。では」


 と、兵達に付いて行くと。


 召喚された部屋から離れ、1つの扉の前に。


 「サミ・リキャンティ様。お連れしました」


 兵士が、ノックして。

 そう言うので、相手が誰かわかった。


 「どうぞ」


 兵士は、扉を開けると中に入るよう促す。


 俺が、中に入ると。

 扉は、閉められた。


 そこには、目の前に立つ。

 サミ・リキャンティと。

 ベットに、横たわる女性。

 多分、マミア・リキャンティ。


 サミが、ロリ美少女なら。

 マミアは、美女かな?

 女神と言っても、いいかも知れない。


 俺が、マミアに釘付けになっていると。

 足を、無言で踏まれた!


 「いって!」


 「何を、見ているのですか!」


 「いや、その、悪魔の病にかかっていると、聞きましたが。美しい女性が、寝ているだけに見えたので」


 「いいですか!今から見せるけれど、絶対に忘れなさい!」


 そう言われ、頷くと。


 サミは、マミアの胸元を開く。


 生唾を、飲み込み。

 じっと、見つめていると。


 現れたのは、胸元に。

 真っ黒な丸い何かが、あった。


 胸に、寄生している?


 心臓と一緒に、ドクンドクンと。

 動いているようにも見える。


 「これが、悪魔の病ですか?」


 「悪魔の病とは、通称で。本当は、呪いです」


 「呪いですか?呪術師とかいるのですか?」


 「呪術師?わかりませんが。今の所、解明されていませんが。何かを、犠牲にして呪いかけると。昔から、言われています。それが、人の命とも言われています」


 なる程、これを解除出来るかが。

 俺の、今後の人生を左右しそうだ。


 「まず、聞きたいのは。通常解除スキルは、どのようにして使用しますか?」


 「私は、取得していませんが。通常、魔法陣を魔法紙に魔力を使い書き込み。使用するようです。使用する時も、解除スキル保持者がいないと。使えないようです」


 「では、その魔法陣の書き方や。その魔法紙なる物は、ありますか?」


 「いいえ。用意していません。私も、自由に移動できるわけでは無いので。前に、解除スキル保持者を呼んだ時。そのようにしていましたが、解除されなかったので」



 な〜んも、わからん。

 魔法陣も、魔法の紙?も、魔力も。

 これ!どうすればいいの?


 「解除できますか?」


 「え〜と、私の考えを試してみてもいいですか?」


 「そう言って、姉様の体を触りたいだけじゃないでしょうね!」


 メッチャ怖い!


 「エッチな気持ちで、触る真似をしないと誓います!」


 かなり厳しい目つきで睨まれたが、他に手が無いのか。

 俺を、姉の前に。



 さて、どうしたものか?

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