エピローグ
エピローグ
「よろこんで!」
「えぇ、っと。と、いうことはわたしと結婚してくれるんだよね、まひるちゃん?」
「だから、そう言っているでしょ、さくらちゃん」
でも、とまひるちゃん言う。
「私達、出会って日も浅いし、お互いのこともよく知らない。私なんて、さくらちゃんがどんなお仕事に就いているかもしらないし。最低、1年間は同棲期間を設けたほうがいいと思うの」
うん、うん、とわたし。
「じゃあ、わたしの家に来なよ!部屋もいくつか余っているし!」
そう言って、ホテルをチェックアウトした後にわたしの家までまひるちゃんを案内した。
「うわー、ひろいわね―。ここに一人で住んでいるの?どう考えても単身者向けの間取りじゃないのに……」
「うん、最近引っ越してきたんだ。それまでは、ずっと実家ぐらしだったよ」
掃除の行き届いた家の隅々を見て回るまひるちゃん。
最新家電に、落ち着いた色彩の家具を手で触って確かめていく。
「うん。ここなら、私が住んでもよさそうね」
「よかったよ。将来、奥さんと一緒に住むことも考えた上でひろい間取りで買ったかいがあったよ」
「それにしても、……。こんなにいい家にすんでるさくらちゃんは、一体なんの仕事をしているのかしら?」
「あ、あー。実は、今はもう仕事はしてないんだ」
「へっ、仕事はしていないって、なにか事情でもあるの?」
「いや、事情っていうか。お金はたくさんあるから、もう仕事はしなくてもいいかなー、なんて……」
ばんっ。
「さくらちゃん。これでも、複数の会社を経営している立場から言わせてもらいますけどね、お金はたくさんあるからもう働かなくてもいいなんて、それこそ世界一の大富豪にでもならない限り言ってはだめよ!労働してこそ、人生は、オタ活は輝くのよ!」
「あ、それならわたしは言ってもいいことになるね」
ちょいちょい。
「こっち、来て。見せて上げるよ、わたしの仕事場」
とてとて。
「な、なに。自分が世界一の大富豪とでも言うわけ……」
ばん!
「うん。見て。これが今現在のわたしの保有資産の総額だよ」
カチカチ、ターン!
「え、えっと。ぜろがいちにさん……、さ、320兆5794億3890万円っ!」
「ふふっ」
「さ、さくら……ちゃん」
「なにを隠そう、毎年、経済雑誌を賑わせている世界一の大富豪の謎の日本人とは、わたしのことだぁー!」
き、きまったー!
「ん、……。どうしたの、まひるちゃん」
何やら身体をブルブルと震わせているまひるちゃん。顔色もどこか芳しくない。
「も、もしかして、だ、大日本グループの株も……」
「ん、そーいや。持ってるね。大株主だよ」
ふらり。
急に力なく倒れそうになってまひるちゃんの身体を慌てて支える。
「さ、さくらちゃん……」
「どうしたの!?だ、大丈夫?」
「結婚してください」
「…………」
「っっけっこんしてくださぁーーいい!」
「同棲するんじゃなかったの?」
「わたしとこづくりしてくださぁーーーい!!!」
がばっ。
「んんっ、ちょ、なに、ま……!」
はらり。
3年後。
「ふ、まさかあのさくらがデキ婚するとはおもわなかったな」
かえでが、我が愛娘のしぐれちゃんをあやしながら言う。
「うふふ。そーお?さくらのことだから、すぐに素敵なお嫁さんを連れてくるとおもったわよ?」
かーさんが、我が愛娘のひまりちゃんをとジグソーパズルをしながら言う。
「かえで、兄はちぐさちゃんにおっぱいをあげるのにいそがしいんだ。もう少しあやしててくれ」
「私は、夫であるさくらちゃんが、私が出産したと同時に母乳が出るようになったことのほうがおかしいと思います」
「「「「あはははは」」」」」
ばんっ。
「ほんとにおかしいよっ。なんでまひるちゃんじゃなくてわたしがおっぱいあげてるのさ!」
「いーじゃないの。母乳を交代であげれるからまひるさんも楽できるじゃない」
と、かーさん。
「さくら、味も栄養価も問題なかったんだろ。だったらいいじゃないか」
と、かえで。
「あ、はいかえでさん。味はばっちり確認済みです!」
と、まひるちゃん。
まひるちゃんとデキ婚して、南フランスで結婚式をあげて、3人の娘が生まれて。
もっぱら、私は専業主婦にみたいな感じで家事育児をしながら。合間を縫ってはオタ活で同人CDを作ったり、コスプレしたり、同人誌をつくたり、同人ゲームを作ったりしている。
ずっと険悪だった妹との中も改善して、家族円満、家庭円満、幸せのスプラッシュ・マウンテンだよ。
本当は、私がなんでニートになったとか、長女のひまりちゃんができた時のドタバタとか、まひるちゃんの両親に挨拶しに言った時のドタバタとか。
色々語りたいことはあるんだけれど。
これにて、わたし、如月さくらが結婚するまでのお話はおしまいだよ!
おしまい。
おっさん男の娘(ニート)が結婚するまでの話 村雨吾妻 @azuma_mura
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