即売会デビュー!す
第八話
なんでこんなことになったのか解らない。
でも、今思うのは世の中の人たちはよっぽど暇なんだってことだ。
「めちゃくちゃりつぶやきされているぞ、返信もものすっごいきてる」
うーん、全部の返信は見れないなぁ。
そーっだ、フォローしているアカウント以外からの返信は通知オフっと。
直メッセもこれで、通知がオフになった!
こんな量のメッセージが来ても対処しきれないよ、返信と直メッセは基本無視でいーや、なんか変な内容のメッセージがほとんどだし、あとなんか外国語多いし。
「うーん、かえでにはアカウントは消さないって言っちゃったけど、垢消ししたくなってきた。めちゃくちゃナンパとか出会い厨のメッセージが来てる」
とりえあず無視して、同人CDのパッケージデザインの発注とかやらなきゃなぁ、っと。
「えーと、確かこのサイトでクリエイターにイラストの発注ができるんだよね」
サイトをざっとみて、気になったクリエイターさんが数人いたので、全員にイラストを発注。
出来上がりが一番いいイラストをCDのパッケージに採用しよう。
出来上がりには2週間はかかるって書いてあったから、その間はSNSをいじってようっと。
2か月後
「どうしてこうなった・・・」
発注したイラストが完成して送られてきて(料金は前払い制)、3点のかわいいイラストを見て「うぉおおおおお!!!」って盛り上がってしまった。
はじめは、一番良いイラストをパッケージデザインに使おうと思ってたけど、完成したイラストをみたらやっぱり3点とも使って、表ジャケット裏ジャケットCD本体の3つにイラストを印刷した。
CDも200枚程度刷って、これで同人CDを即売会で売りさばく準備ができたぞ!と思ったら問題が発生した、どこどこの即売会で販売しますってつぶやいたーでつぶやいたら、即売会運営本部から直メッセが来て、わたしのフォロワーさんがそのまま即売会の会場に押し寄せたら会場のキャパシティが限界を超えてイベントを運営するのに支障がきたすからつぶやきを取り消してくれとのこと。
しかたなくつぶやきは削除した。
たまたまつぶやいたのが深夜の3時半だったから、ほとんどのフォロワーさんに見られなかった。つぶやきを消すとき確認したけれど閲覧数が5ほどあった。
それを即売会運営本部に伝えると、「それくらいならもんだいない」とのことだった。
そういったことで、宣伝用につくったSNSアカウントではわたしがどのイベントでオタクデビューするかを宣伝できないという不本意な結果に終わった。
その裏さ晴らしを兼ねて、しばらく自撮り写メをつぶやきしたら、いいねとりつぶやきの数がトンデモナイ数になってしまった。
フォロワー数509万でりつぶやき数が1200万ってどういうことなんだよ!
おそろしくもあったが、あまりにもいいねやりつぶやきやフォロワーの数が増えるのが楽しくなって、ちょっとエッチな自撮り写メをつぶやいてしまった。
そうしたら、つぶやきから一分でかえでから連絡が来て削除させられた。
しかし、えっちな自撮り写メ(へそチラ)はしっかりとフォロワーさんに魚拓を取られていたので、後日ニュースサイトに転載されてしまった。
それに関しては、しっかりと抗議をして記事を撤回させた(ぷんぷんっ)。
それはさておき。
そんなこんなで、わたしのオタク(実践)デビューである、同人即売会の日がやってきた。
都内にある中規模なイベント会場で朝早くから積み込んだ『死んだお母さんがJK(巨乳)に転生して駄々甘やかしで歯磨きしてくれるCD』を段ボールからいくつか取り出し並べ、サンプル再生用のCDラジカセを設置してCDをセットする。
そして、即売会の礼儀作法だとネットで調べた両隣さんへのあいさつを済ませる。
「あ、あのっ。初めまして本日このスペースでやらせていただく如月さくらと申しますっ!よかったらこれうちが出す同人CDなのでもらってくださいっ」
「こちらこそどうぞよろしくお願いしますね。サークル猫まんまの夜月って言います。これ、うちの販売物です。よかったらどうぞ」
右隣のわたしよりちょっと背が高いくらいの超美人なお姉さん(多分わたしより年下)が、笑顔で対応してくれた。
(は、ははっ。なんだか優しそうな人でよかった。対応も丁寧だし。お隣さんとして当たりかも)
スペースの両隣が女性ということもあり、ひと安心だな。
もしこれが両隣が男性だったら、ちょっとめんどくさかったと思うからよかったよ。
左隣の女性にも挨拶した。
「如月さくらと申します。これうちからだす同人CDです。よかったらどうぞ」
「は、はぁひぃ!ろ、六本木マユと申します。こ、これわたしの書いた同人誌ですぅ、よろ、よろしくおねがいしますぅ!(泣き)」
左隣の女性は、何やらものすごく緊張されてるようで、わたしの胸と顔を交互に見ながら「ど、どぅしよぉ、さくらちゃんが目の前にいるよぉ。生きてるよぉ。生さくらちゃんだよぉ」などとうわごとのようにつぶやいている。
「あのー、どこかでお会いしたことありましたか?」
「え、うぇ!あ、い、イや初対面ですぅ!」
どういうことだろう、と訝しんでると。
「ああ、もしかして如月さんのファンの方なんじゃないでしょうか、六本木さん」
「え、」
「はぁぁあい!そ、そうです。マユはさくらちゃんのファン、いえ、大ファンなんですぅ!」
いきなり横から夜月さんが割り込んできた。
「や、だってぇ。如月さん、今ネットでものすごく話題になってるじゃないですか。私や六本木さんみたいにコスROMをつくってる人間からしたら、神様みたいなものですよ。なにせ、TVでも特集されて都市伝説にもなった、あの伝説の美少女が十数年を経てよみがえったんですよ。しかも、当時と変わらない、いえ、当時よりも格段に美少女度をアップさせて」
「え、わたしってそんなに有名なんですか?(汗)」
「「有名なんてもんじゃないですよ(ぉ)」」
「うえぇぇ!」
ピーンポーンパーンポーン。
「それでは、これより第64回オリティアを開始します」
そんなやりとりがあれど、イベントはつつがなく始まった。
「ありがとうございましたー」
これで200枚完売っと。
イベント開始から3時間。
残り時間をたっぷり残しての、販売物の完売。SNSで販促をしなかったにも関わらず、イベント開始直後から多くの人が詰めかけてくれ、サンプルを聞いてから即買いする人、サンプルを聞かずに「応援します」と何枚も買っていく人、などなど多くの人が買ってくれた。
「おめでとうございますー、如月さんの即売会デビューが無事に終わってよかったです」
「お、おめでとぅございます!同人CDもすごくよかったですけど、コスROM出すときは一声かけてくれれば絶対にお手伝いしますぅ!」
「夜月さん、六本木さん。ありがとうございます。初めてで勝手の分からなかった私にやさしくして下さって。感謝のしようもないです」
じーん。
なんだか、うるって来てしまった。
初めての同人即売会、右も左もわからないまま来てしまったけれど、こんな親切で優しい人たちに出会えて、自室に引きこもってPCと相場だけを相手にしてきた出会いのない十数年が報われた気がした。
「ふふぅ、如月さん。こちらこそですよ♡」
「さくらちゃん、私こそさくらちゃんに出会えたことが何よりのよろこびですぅ」
「あははっ」
と、三人でいい感じの空気を醸していたのだが。
突然、カメラを手にした集団が、大きな音を立てて押し寄せてきた。
「すみません!わたくし、大日TVの大前田と申しますが、如月さくらさんでお間違いないでしょうか!?」
「えっ、な、なんなんですかあなた達!?」
「大日TVの大前田と申します。申し訳ありませんが、つぶやいたーの直メッセにもお返事を頂けなかったようなので、如月さんが出展するイベントに直接お伺いをすれば、お話をお伺いできると思いきてしまいました」
何をそんな自分勝手な!
「おい、如月さくらだ。すごくかわいいな」「ああ、ものすごい美人だ。こんなの芸能界でも見たことないぞ」「おっぱい大っきいわね、くっ」
アナウンサーらしき人以外もがやがやと騒ぎ立てているために、余計頭が混乱してしまう。
「こらー、あなた達。誰の許可を取って撮影しているの!?責任者は誰!?」
とうとうオリティア運営本部まで出張ってきて、騒ぎが大きくなってきた。
「如月さん!これはどいうことなの!?マスコミの方たちが来ているのはあなたがよんだからなの!?」
「そ、そんなことないです。わたしはなにもしてないです!この人たちがかってに押しかけてきたんです!」
「なにを、このイベントで出展するとつぶやきをしたのは、如月さくらさんではありませんか。大日TVはマスメディアとしての役割を果たしているだけです!」
「役割ってなんですか、意味わかんないですよ!」
「そ、それは・・・。し、視聴者が求めているんですよ!」
「如月さん!貴方、自身の売り込みのためにマスコミ方を巻き込んだんじゃないですか!?」
「そんなことしてないです!」
三者三様。
わたし、如月さくら。大日本TV。オリティア運営がそうやって何十分も言い争っていると、周りのも人だからが出来て大ごとになっていった。
「はい!」
パァン!
突如、誰かが大音量で手のひらを鳴らした。
「いいですか。オリティア運営の坂本さん。これは大日本TVさんのアポなしの非常識な迷惑行動が悪いのであって、如月さくらさんは悪くありません」
「次に、大日本TVさん。あなたたちの行いは非常に迷惑なものです。即刻おかえりください。警察呼びますよ」
「最後に、如月さくらさん。あなたも自身の影響力の大きさには今後は気を付けてください。あなたのような超絶世の超絶美少女は、いろいろと普通の女性とは違うものなのですから」
パァン!
「以上。かいさーん!」
ワァー!
夜月さんの一声に、私たちを取り巻いていた群衆は歓声を上げ、大日本TVのクルーの人たちは、すごすごと撤収してきて、オリティアの運営の坂本さん(?)は渋々と「申し訳ありません。如月さん。私の不徳の致すところです」と謝ってきた。
その後、会場は落ち着きを取り戻し、銘銘に通常営業に戻っていった。
そして、イベントは終了時刻を迎えて解散となった。
「あの、夜月さん本当にありがとうございました。なんて言ったらいいのか……、夜月さんが居なかったらわたし今日のイベントを気持ちよく終われてなかったと思います」
「あら、いいんですよ。だって、身内の不始末をつけただけなんですから」
「そーですよ、さくらちゃん!よるちゃんは、オリティアのスポンサーで大日本グループの総裁の孫娘なんですよ!」
「えぇ!」
「はい、私実はすごいんです。会社だっていくつか経営しているんですよー」
「お、お若いのにすごいんですね……(←自分が世界一の大富豪なのを忘れている)」
「んふふー♪」
あ、なんかかわいい。
「でもぅ。さくらちゃんとまたいつ会えるかわからないのが、すごくかなしぃですぅ」
「何言ってるんですが、六本木さん。如月さんは、芸能人じゃないんですから連絡先を交換してもらえばよいんですよ」
「えぇ!そ、そんにゃ、おしょれおおい……(チラっ」
六本木さん、あざと可愛いなぁ。
「もちろん、いいですよ。わたしなんかでよければ///」
(やった、女の子の連絡先、初ゲットだ!)
「じゃあ、私がさきー♪」
「あ、ずるいですよ、ヨルちゃん!」
そうして、夜月まひるさんと六本木真由美さんの二人と連絡先を交換して、帰途に就いた。
そして、夜。
ピコん。
「ん、夜月さんからだ」
『如月さんってー、』
なになに?
夜月まひるから写真が送信されました
わたしのSNSのアカウントのスクリーンショットが張り付けてあった。
『如月さくら@彼女ほしい』
――――――。
『もしかして、女の子が好きだったりします?』
『わたし男ですよ』
『くぁwせdrfrftgtgyg!』
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