テーマが決定す。
第四話
録音のための機材が届いて、余っていた部屋の一室を録音スタジオとして作り変えた。
バイノーラル録音用のダミーヘッドマイクはどうせならと思って、一番評判が良かった100万円以上するものを取り寄せた。また、普通のステレオマイクも併せて買ってある。
録音機材がそろったらさっそく同人CD製作開始だ!ということで、同人CD製作開始をしようと思ったら製作途中でいろいろ足りないものがあることに気付いた。
まず、録音機材があるだけではスタート地点に立ったにすぎず、同人CDを作るには企画立案から始めなければならないということだ。
それが解らず、何時間もただマイクの前で「ねっ、一緒に寝よ♥」とか「好きだよ、ちゅっ♥」みたいな音声を取ってしまった。確認の為に自分で録音した音声を聞いて、一貫したテーマのない意味のない音源を何時間も聞き続けるのが苦痛だと気付いてしまった。
足りないのは、CDのテーマ、テーマに沿ったシナリオ、魅力ある美少女キャラクター、くらいだろうか。
足りないものばかりが目についたが、良い点もあった。
不遜かもしれないが、わたしの声と演技力は、高校時代に演劇部で鍛えたのもあり、かなりの出来栄えだった。特に、なんというかわたしの声はこうして録音したものを聞いてみると、全くの女性の声にしか聞こえず、なんというかものすごく美少女声なのだ。TVアニメで活躍している女性声優さんともタメを張れるのではないのだろうか。
「よしっ!まずは、テーマを決めよう!」
…………。
うん。
ネタがない!
ここにきて、わたしが創作に関してド素人であることが露呈してしまった。そもそも、同人CDのテーマってどうやって決めるものなのだろうか。世の中にはあまたの創作物があるけれど、元々アニメやマンガを多少嗜む程度だったゆる~いオタクのわたしは、熱い創作意欲なんてものはないし迸るインスピレーションなんてものもない。
「くっ、ネタに詰まってしまった。こういう時はどうすればいいのか……」
ぐぅ。
とりあえず、お昼ご飯でも食べに行こう。
数時間後。
「あー、高級ハンバーガーってのも乙だなぁ。海老アボカドバーガーなんて初めて食べたよ」
ハンバーガーなんて普段食べなれている物でも、ちょっとした工夫で上品にも新鮮にもなるんだなぁ。
普段なれているものが、新鮮に……、か。
そ、そうだ。
同人CDのテーマは、彼女と初めての「歯磨き」にしよう!
「これで決まりだ!」
やってやるぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます