第25話

不慮の事故



起きた頃には放課後になっていて、誰もいない教室には微かに吹奏楽部の楽器の音と運動部の掛け声が聞こえて、いつもとは違う特別な教室になっていた。たまにはこうやって一人で教室にいるのも悪くないなと思い、暫くぼんやりと教室を見渡して家に帰った。


二時間目は四組と合同で体育だったので、七尾は体操着に着替えて体育館へと向かっていた。体育館に着くボールをバウンドさせている音が響き渡っていて、男子達が授業が始まるまでバスケをしていた。


私は、それを離れてみていたつもりだったが、男子の一人が手を滑らして、ボールが私の顔面へとむかってきたた、スローモーションに見えたが全く動けなくて、案の定、鼻に直撃した。


何てついていないんだ…


体育館にいる人たちが私に注目した。すごく恥ずかしい。


私は、ボールの衝撃で後ろに尻餅をした。鼻のあたりがジンジンと痛むので鼻を抑えると赤い液体が掌に付いた。急いで片手をズボンの中に入れてポケットティッシュを出そうとしたが、いくら触っても何もなかった。


今日は本当についてない…


体育の先生が心配そうに声をかけてきたが、私は顔を背けて大丈夫ですと返事をして洗面所の方へ向かった。

個室に入ってトイレットペーパーで鼻を抑えていると一人の女子生徒が私が入っている個室の前で声をかけてきた。


「大丈夫ですか?あ、大丈夫じゃないか…すみません」


私は、知らない人に保健室に連れていかれるのは嫌なので、鼻声で大丈夫ですと言ったが、頑なに保健室に連れて行こうとしてきた。


「頭に当たったわけなんですから、一人で保健室行っている間に倒れてしまうかもしれませんし、危ないので私が連れていきます。先生にも頼まれてますし。」


鼻血も少し収まってきて、個室から出たかったが、きっと彼女は私がここから出たら無理矢理でも保険室に連れて行こうとするだろうと思い、心の中で溜息をついた。


もう地味に汚いトイレにじっといるわけも行かないと思い渋々と個室のドアをあけた。


外にいた女子生徒は昨日、舞と言われていた人だった。私は鼻をトイレットペーパーで抑えながら驚いて目を白黒させた。


「じゃあ、保健室行きますよ。」


そう言って、舞さんは私を気遣いながらゆっくりと保健室へと連れていってくれた。


保健室には、白衣を着た女性がいた。


「あ、先生…七尾さんの鼻にバスケットボールが当たっちゃって…」

私がしゃべりだす前に舞さんは全部先生に伝えてくれた。


「あらら、痛そうね…ちょっと見てもいいかな?」

私の鼻を触って折れていないかなどを確かめた後に、氷水で冷やしてくれた。


「連れてきてくれてありがとうね」

保健室の先生がそういうと舞さんは軽く会釈して体育へと戻った。


私は頭にボールが当たったていうこともあって次の授業まで保健室で休むことになった。私は保健室のベットの上で舞さんと会ったら言いそびれたお礼を言わないと、などを思いながら、時間を潰していた。








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