第23話

操り人間



十思たちが夏休みを終えて、二学期を迎え始めてた頃、宇土と七尾は交際し始めて四ヶ月が経とうとしていた、ある日の日曜日のこと


「ねぇ、携帯ばっかりいじってないで私のこと見てよ。私、ちゃんと正真のために色々尽くしてるのに何で正真はいつも行為が終わったら、そうやってすぐにスマホばっかり見るの?正真がゴムしたくないって言ったから最近はピル飲んだり、気持ちよくなってもらいたいからHなビデオ見たりして勉強だってしてるんだよ。それなのにちっとも私の子とみてくれないじゃん……もう私には正真しかいないのに」

四ヶ月間の間で宇土は七尾を完全に洗脳して支配していた。元から美貌だったこともあって中学時代は同性から疎まれ、異性からはいやらしい視線で見られていて、精神的に不安定だったこともあって簡単に洗脳することができた。


俺は、隣で泣いている七尾が鬱陶しくて、服を来て家から出た、もちろん七尾からは呼び止められたが、無視をした。


家から出て近くのコンビニに寄って、煙草を買った。コンビニから出ると俺は、ライターで煙草に火を付け、家に向かって歩き出した。

最近は吸わっていないと無性にイラつく、俺がこうなってしまったのは、加藤せいだった。加藤が一ヶ月前にサツに捕まって俺の計画が狂い始めてた。本来なら今頃、休学期間が終わって復讐計画が進められて、舞とかいう女を無茶苦茶にさせられたのによ、あいつが捕まったことで親父からまだ、学校にいくなと言われた。

マスコミに俺と加藤が仲良かったことを知られたくないんだろうよ。今の親父はいじめ撲滅政策を成功させて、次の総理大臣候補となってるから余計に変な噂をたてらたら、たまったもんじゃないだろうしな


もし今、問題を起こした親父のことだから俺をこの世から消すかもしれない、だからむやみに動けない。自分の地位と金のためなら家族も捨てるやつだからな、だから母さんは居なくなった。


ニコチンが身体の中に染み渡る。脳から快感物質が出て、先までのイラつきが収まっていく。


ちょうど吸い終わる頃に家に着いた。自分の部屋に戻るとまだ、ベットの上で七尾は裸で泣いていた。少し気持ちが落ち着いたせいか、罪悪感を感じて後ろからそっと七尾のことを抱きしめた。


「悪かったな…」


七尾は涙を手で拭いて、嬉しそうに笑う、俺は、そんな七尾を見てなんて単純でバカなやつなんだろうかと、見下していた。軽蔑の顔が表情に出ていないかと不安に思い、焦ってぎこちない笑みを浮かべて、七尾の肩に顔をのせた。


「なぁ、奏音…お願いがあるんだけど聞いてくれるか?」


七尾は照れたように、頷く


「奏音の学校に、昔俺に振られた腹いせに虐めてきた女がいるんだ、でも、俺は、その彼女のことは全然憎んでないし、むしろ可哀想だと思ってるんだよ、だって、その子ね、昔から性格が悪いって有名でいじめられていたんだよ……だから、そんな可哀想な女の子と仲良くなって欲しいんだ。名前は佐々木舞って言ったかな?陰気過ぎて覚えてないけど、確か、クラスは俺と同じ四組のはず」


「あと、その子には決して俺の名前は出さないでくれよ、まだ、俺のことが好きだったら、奏音と付き合ってることが分かったら何するかわからないし、悲しんじゃうと思うから」


「正真はほんとに優しんだね、そんな酷い子に同情してあげるなんて…でも、私、正真のために精一杯頑張るね!」


七尾は早速、昼休みになると舞という女の子を探しに四組を見に行ったが、どんな感じの子なのかを聞くのを忘れていたから誰が佐々木舞なのかは検討もつかなかった。


「あの、誰か探してますか?」

クラスの女子生徒が話しかけてきた、どうしようかと焦っていたが、名案が浮かんだ。


「佐々木舞さんって方いますか?体育の先生が呼んできてほしいと言ってたので…」


そういうとその女子生徒は佐々木舞らしき人を呼んできてくれた。


ショートヘアでモデルのようにスタイルがよく元気はつらつとした人がこちらに向かってきたので、七尾は驚いてしまった。正真が言っていたことから想像するとメガネをかけて前髪は顔の大半を隠しているような子かと思っていたからである。


「舞、なんか体育の先生が呼んでたらしいよ、速く行った方がいいんじゃない?」


「え?うそ!」

舞と言われた女子生徒は焦ったように職員室に向かっていた。


それから、自分の教室へと戻った。

本当に、あの子が正真に告白したの?私よりもかわいいじゃん、何で正真は振ったんだろう?そんなに性格が悪いのかな?でも、そんな風には見えなかったな。


七尾は自分が想像していたよりも美人で人当たりが良さそうな子が来て驚きを隠せないでいた。


そして謎が次から次へとあふれ出してくる。

正真はどうして振ったのか、本当に性格が悪いのか、正真との関係性は、どうして正真は陰気過ぎて覚えてないといったのだろうか?……そんな不安に似た疑問がいくつも頭の中でグルグルと回っていた、


七尾はそんな気持ちを払拭したくて、正真にLightsで聞いてみたが、既読スルーされた。


もうこうなったら、仲良くなって確かめるしかないと思った。もちろん正真の名前は出さないで聞いてみるつもり。




















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