第7話

家族の温もり




東宿公園は、府内でも1番大きく、中には、甲子園が行われる東宿球場やスポーツセンターがあるので、あらゆるスポーツができることで、有名な公園である。


十思は公園に着くと思った。東宿公園のどこにいればいいのかを聞くのを忘れていた。そして周りを不安そうにキョロキョロとしていると、大きな建物の前に立っている女性らしき人影がこちらに手を振っている。


舞だった。


舞の隣には、大柄で鉄パイプで攻撃されてもビックともしないであろう、頑丈な身体付きをしている男性が立っていた。


十思は二人の人影に向かって歩いた。


「君が佐藤君だね!舞から話は聞いてるよ!」


「はい!佐藤十思って十思って言います!よろしくお願いします!」


「よろしくね!」

「僕は佐々木貴史ささきたかしと言います」

「一応柔道では、黒帯を持っているから、虐めっ子を返り討ちにできるぐらいには強くしてあげられると思うよ!」

貴史は豪快に笑った。


「お願いします!」


「そうだな、最初は体力作りから始めよう!」

「舞も一緒に着いてこい!」

「え~!」

そういうと貴史は小走りしながらランニングコースに向かった。


ランニングコースは東宿公園の内周に沿って作られていた。周りには、木々が生えている。左側は木々の隙間からエンジン音を立てながら大通りを走っている車が何台もあった。右側には、公園内の施設や花畑などが見える。


自分たちの他にも大勢の人がランニングを楽しんでいた。


それから日が真上をちょっと過ぎるぐらいまで走り続けた。


「そろそろお昼にしよう!」


「やった~!私もう、限界…」

舞は息遣いを荒くさせていた。


十思はその場で倒れ込んでいた。


❁.

ランニングコースから広場に移動すると、三人は舞が作ってきたおにぎりを頬張った。


十思は目から涙が溢れた。


「急にどうしたの?」


「俺、こんなに美味しいおにぎり初めて食べた…」

「今まで、床に落ちた米しか食べさせてくれなかったから…」


貴史は十思を見て微笑んだ。

「これからは毎日美味しいもの食わしてやるよ!うちの母さんが作るメシは世界一上手いんだぞ!」

「平日も学校が終わったらうちに来なさい。」


舞は何度も頷いた。


「うん!それがいいよ!」


十思は胸が熱くなって、喋ったら全てが溢れそうになったが、噛み締めるようにお礼を言った。


「…ありがとう…ございます。」


そんな十思を見て、舞と貴史は目頭を熱くした。


貴史は立ち上がって十思に手をさし伸ばした。

「続きやるぞ!」


貴史の手をとりながら十思は元気よく返事をした。


その後は、スポーツセンターの中にある、ジムで器具を使ったトレーニングを行った。トレーニングが一通り終わり、スポーツセンターを出ると、空は一面赤く染まっていた。


三人は公園を出てすぐ近くにあるファミレス、ハッピーステーキに入った。


店内に入ると肉の香ばしい匂いが鼻腔をくすぶった。


十思はファミレスには、人生で初めて入ったので、ソワソワしていたが、店員に案内されて席に着くと三人は疲れきっていたので、身体が席と一体化するように座った。


貴史はメニューを開いた。

「よし!二人ともたらふく食え!」


十思は見たことも無い肉の塊にがむしゃらに食べていた。


そうして三人はお腹が一杯になると公園に停めていた。貴史の車で家まで送って貰った。


十思の家に着くと貴史は後ろを向いた。

「佐藤君、明日も同じようにトレーニングするから、ゆっくり休みなよ!」


「それじゃあな!バイバイ!」

「バイバイ、じゅっくん!」


十思は笑顔で返事をした。






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