142 外界西街(アウターウエスト・シティ)外伝 ~ホラーハウス その6~

ザックがNPC少女からクリティカル攻撃を喰らい…昏倒して役立たずにクラスチェンジし、女性たち3人で続行することに。ザックの処遇は3人で相談した結果…小型の荷車(車輪が4つ付いていて、繋がれた引っ張り棒で引いて移動するタイプ)に載せて移動することに…見たまんま、お荷物扱いですw

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- 裏庭の先へ… -


廊下に当たる部分はバラ園の入り口から続く回廊のようだった。


左右にあるバラの生垣から何か出るかも?…と警戒して歩いていたが、特に何も出なかった(実は男性が行動可能な状態で歩いていると蔓が伸びて来て、男女構わず巻き付いて吸血(=HP減少)攻撃を喰らう罠があったのだがザックが気絶状態で動けないので無反応だったのだ…)


「バラ園?」とリン。


「まぁこの回廊の先だからねぇ…」とミーシャ。何をいわんやという感じではあるが…


「凄ぉ~い!」とアン。


目前には様々なバラが咲き誇り…夜の筈なのにバラ園は明るく、普通に暗視能力も無いミーシャやアンにも見えているのだ。


(…2人にも見えてるということは…ボスゾーンかな?)


流石にボスとの戦闘があるエリアで真っ暗では余りにもプレイヤーに不利だ…という訳で敢えて夜だろうが昼だろうがボスが可視状態の光源を用意してあると思われる。無論、見上げても太陽などは出てないのだが…


「…え」


不意に陰るバラ園。見上げていたリンだけが気付いたのだが…


「散開!」


「「は、はい!」」


召喚していたトリさんはいつの間にか送還されていた。恐らくは召喚状態で先制攻撃を防ぐ為の措置なのだろう。アンはトリさんを強制送還されてから然程時間が経過していない。成獣の不死鳥フェニックスはランクB相当でクールタイムは6時間45分…仮にバラの回廊に入った瞬間に強制送還されたとしても、まだ10分と経過していない。レベルが上がればレベル相応にクールタイムは短縮するのだが…どう足掻いても今すぐに召喚は不可能だ。一般のプレイヤーならば…


「キュートロス」


〈きゅっ!〉


元オルトロスの異形化個体…見た目キュートなキュートロスが召喚される。空気を読んだキュートロスが仲間を引き連れて現れた!


「じゃあ…あれ、焼いちゃって貰える?」


〈〈〈きゅーっ!!〉〉〉


双頭のキュートロスズが散開し…その口からバラを焼き尽くすファイヤーブレスを吐く!


ごおおおおおおおっっ!!!×10


「うわ熱っ!」


結界バリア!」


気絶しているザックを含む空間を結界で包む…これで熱は遮断されるが動くことも叶わなくなった。


「あ…リンちゃんは?」


「あそこ…」


リンは結界内には存在せず…外で縦横無尽に跳び交っていた。戦闘の相手は巨大なバラの巨人。足元は地面のバラ園に接続されており、幾ら斬っても減少したHPゲージはすぐさま回復してしまう。キュートロスたちのブレスでも僅かに減ってはいるが持続性HP回復の前では…まさに焼け石に水だった。


『リンちゃん、戻って来て』


『…了解』


一瞬結界を解除し、リンを結界内に回収するアン。


「どうするの?」


「姉ちゃんも協力して…炎属性の範囲攻撃で」


「…あぁ、あれね。わかった」


「「最大火力で!」」


流石に火遁では結界内からは放てない。リンはその場に座り込んで様子を見ることにした。


(やっぱアレがいいよね…じゃあ、集中集中…)


ぽわ…


結界の上に青白い炎が現れる。


ぱぱぱぱぱ………


結界が重ね合わされる…その数、+10で11層の結界が張られ…


ぐわ…ぐわ…ぐわぁっ…


青白い炎球が少しづつ膨れ上がり…直径10m程の獄炎球が完成する。


「準備おっけー…あ、もういっちょ、十重結界テンレイヤー・バリア!」


更に重ね合わされる結界…都合21重の結界が4人を護ってくれる。


「キュートロスたち、もういいよ!」


〈〈〈きゅー!〉〉〉


バババ…と送還されるキュートロスたち。そして…


「姉ちゃん!」


「わかったわ!…我が敵を燃やし尽くせ…魂込めたこの一撃を見よ!…敵を焼き焦がす炎の玉ファイヤーボール!!」


賢者(厨)の炎属性範囲魔法がいきなりバラの魔王を中心に炸裂する!


ぼわあっ!!!


〈ぎょええええっっ!?〉


賢者(厨)の爆炎魔法はちょっとやそっとでは消えることはない…まるでナパーム弾の如く、しつこく燃え続けている!


獄炎球魔法プロミネンス・ボール!!」


コマンドワードを唱え…21重結界の上に発生していた青白い炎の弾は…山なりの軌道を描き…バラの魔王の頭上から襲い掛かる!


ぼぽ…


〈ギョエエエエエエエエエエッッッ!!!………〉


1万度以上の超高温の炎の魔球が直撃し…王を冠する植物系魔王の弱点を的確に突いた炎熱攻撃は…遂に植物の体を崩し…崩壊へと導いた。



〈サタン・ローズを撃破しました!〉


〈気絶しているパーティメンバには1レベル分の経験値が付与されます〉


〈※但し、気絶しているのでレベルアップは目覚めてからになります〉


〈それ以外のパーティメンバは1レベルアップと10万GOLDが報酬として与えられます〉


〈他、ランダムにドロップ品が与えられます。確認はクエスト終了後に確認して下さい〉


〈本イベントクエストはまだまだ続きます。引き続きお楽しみ下さい…〉



アンはイベントクエストと表示されたので鑑定してみた。そこにはこう書かれていた…



【イベントクエストの鑑定結果】

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◎名称:「ウエストシティの孤児」

◎内容:ウエストシティの洋館に隠れ住んでいる孤児の少女を救い出し、人並みの生活に戻してあげよう(方法は問わない)

◎備考:基本、男性は近寄らせない方がいい。数々のトラップがアナタたちを困難に導くだろう

    だが、トゥルーエンドを迎えたいならば、優しい男性の存在は不可欠だ…

    彼女のことを考えるならば男性は居ない方がいいが…

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「えっと…」とアン。


「何か面倒そう…」とリン。


「中ボス?…斃したし、もう終わりにしない?」とミーシャ。


何か疲れたというのが正直な所なのだろう…孤児少女の運命はどうなってしまうのだろうかっ!?


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NPCだしクエストが中途半端に終わっても、特に何もありゃしませんw(好感度にも影響ないし、完全な隠れクエストだし独立しているので!)

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