06 さあ、冒険…だよね?

いつまで経ってもギルドから…え、もう外に? い・つ・の・間・に・!

2021/11/03 インベントリをアイテムボックスに統一

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- アン、ようやく外の世界に出る! -


「おぉ~、これがVR空間の世界かぁ~」


街道から外れると手入れが全くされてない見渡す限りの草原が見える。遠くには採取の依頼を受けた自分と同じような初心冒険者が数人と、狩りの依頼を受けたであろう冒険者が何かを追い回している。


「おぉ~やってるなぁ…って、わたしは何も依頼を受けないで出て来ちゃったんだよな。まぁいっか」


取り敢えず手頃な岩があったので座り込んで貰ったアイテム群を確認しようとアイテムボックスを開く。アイテムは取り敢えず並び替えしないでいるけど、数が増えてきたら見易いように並び替えしないといけないだろうな…。


「ん~? この1つに纏まってる袋アイテムって何が入ってるんだろ?」


幾つか中身が見えない袋アイテムが入っていた。特に説明を受けてないのだけど、同僚のお古が有るといっていたので、多分これのことだろうと当たりを付ける。


「ぽちっとな…おお、何か一杯入ってる。これは…女の子向けの特殊アイテム、かな? あれとかこれとか…ていうか、ゲームの中で使う機会ってあるのかな、これ…」


NPC、それも手に職を持つ程度の大人の女性が提供者だと思うんだけど、昔使ってたらしいAカップくらいの…その、ブラジャーとか下着類がぎっしり詰まってたかと思うと、まだ必要と思えない化粧類が入ってたりとか…。わたしの見た目年齢、ほぼそのままなんだけど。中身は大人って勘違いされてるんだろうか?…むぅ。


他には、序盤の冒険に使える装備品類とか、魔法使い向けの初心者装備とか、回復アイテム類(劣化品だから倉庫から出してきたんだろうな)、野営で使うであろう道具類などなど。考えられる限りのアイテムをこれでもか!…と詰め込まれていた。


「このゲーム、持ち運ぶアイテムの重量制限が有ったら…」


きっと、トレードで渡された時点で重力に負けて動けなくなってただろうな…どんだけ手厚いサポートなんだよ!!


大して動いても無いのに疲れ切ったわたしは、はぁと溜め息を吐きながら現在の村人装備(服と靴)からポチポチと冒険者装備へと着替えて…勿論、服を脱いで着替え…ではなく、アイテムボックス横にあるフィギュアに装備品を乗せて着替えてった。そうすれば、一瞬で切り替わるので肌を見せたりしないで済むしね。


「ん~、こんなもんかな? 取り敢えず」


E 初心冒険者セット(服・帽子・靴)

E 魔法使いの杖

E ナイフ+1(破壊不能属性)

E 魔法のポーチ(小容量拡張済)


初心者向けの冒険者装備セット…そのまんま。それ以外の何物でもないってくらい。表記は省略されてるけど。これはほぼ新品で暫くは問題なく使っていけると思う。尚、下着類はなし。元の村人向けの服も無かったので。改めて下着を付けるってのは、その、多分、子供には機会が無い…と思いたい。はい、次!


魔法使いの杖…流石に壊れかけの杖を使う勇気が無かったので(1回殴っただけで消失したら、次のを出す前にモンスターに倒されそうだし)、こちらも中古品ではあるけど安心して使えるのでこちらをチョイス。壊れかけシリーズは、後輩にも渡すのが怖いので、訓練とかで使い潰す予定。どーせ廃棄寸前っていってたし…。問題ないよね! はい、次!!


ナイフ+1(破壊不能属性)…誰だこれ入れたの!って思ったけど、壊れないのは助かる。使わなくなったらギリアムさん経由で返せばいいし。何にしろ壊れないならメンテ不要だろうし…ま、汚れるだろうから毎日拭いておけばいいよね? 次ぃ~!!


魔法のポーチ…これは誰が提供してくれたのか知らないけど凄いお宝ですよ! 何しろ、見た目より沢山アイテムが入るという優れ物ですし!…取り敢えず、ポーチを腰に付けてから初期装備の肩掛けバッグを入れときました。アイテムボックスがあるんだけど、メニュー経由で使用する分、使い勝手が若干悪いんだよね…ポーチは腰に付けていて手を突っ込めばすぐ中身を取り出せる(リストが出て選択すると手にそれが握られるって塩梅)ので重宝しそうなんだよね!


ちなみに魔法のポーチに肩掛けバックとその他諸々を全部に入れても余裕あるけど、肩掛けバックに消耗品(ポーション類)だけ幾つか突っ込んで入れておきました(他に、肩から掛けてると動きも制限されるんですよ…左右に動くと、ぶんぶん揺れて…わかると思うけど)。その他の貰い物はアイテムボックス行きです。


後、初心冒険者の服…のベルトにポーション(小さめの試験管みたいな細いガラス?器具入り)を挿しておけるフォルダーが幾つかあったので、提供された回復ポーションを挿して見たりなど、細かい装備品の調整をしていたら…。


「ねぇ、君も始めたばかりかい?」


っていきなり声を掛けられて、


「ひぇっ!?」


と、変な声が出た!…いや、そうなんだけど、何か凄い濃密な経験をしてきたような気がするけど、実はまだ数時間…2~3時間くらい?…しかログインしてないんだよね。体感時間はもう半日以上って気がするんだけど…。


「あ、ごめんごめん。驚かしちゃったね! えぇと、話し掛けても大丈夫かな?」


顔を恐る恐る上げると、戦士風の軽装甲の男の子が話し掛けて来ていた。その隣には、ぷんぷんしながら「ほら、いきなり話し掛けたら驚くでしょ!」と注意している女の子が。こちらは斥候というか盗賊って感じの服装だ。その2人以外には居ないようで、ぱっと見た感じ、2人は悪い感じでもなさそうだ。人を騙したりとかそういう方向でって意味だけど。うん、すれてる自覚はあるよ。昔のネトゲとかで色々とね…。


「…え…と、やっぱ取り込み中だったかな?」


あ、考えことしてたら勘違いされかけてるし…あせあせ。


「あ、いえ、今、装備のことを考えてたので…もう、終わりましたから! 大丈夫です!!」


ひょいっと立ち上がって、大丈夫アピールをすると、男の子は引き気味に、


「そ、そう?…良かった。えっと、俺はザックっていって剣士をしてるんだ。こっちは…」


「ミーシャよ。盗賊っていうか斥候というか…まだちゃんと決めてないんだけど、宜しくね!」


ザックもミーシャもまだ今日始めたばかり…まぁ今日が第2陣の発売日なんだから当然なんだけど、βテスターではないらしい…多分?


ざっと観察した感じ、2人とも大体同じ背丈でこちらより1周り上って感じ。アンは背丈は最低身長で140cmを僅かに下回ってるくらい?(ちゃんと計ってないからわかんないけど)2人は見た目が170cm前後くらいなので背が高い中学生か一般的な高校生くらいかな?…まぁ、中身はおっさんやおばさんって可能性もあるんだけど(ちなみに性別だけはリアルと同じで変更不可となっている。いたずら防止とか色々あると思うけどね)まぁ、リアルを聞くのはマナー違反だから訊かないでおこうか…


「そ、そう…。えっと、わたしはアンっていうの。一応、魔法使いの素養が有るって聞いたので、魔法使いを目指してます。宜しく…ね?」


お金もロクにないのに師事できる魔術師の師匠も居ないのに魔法使いだなんて…バカにされるかなぁと思ったんだけど、


「おお! 魔法使いかぁ、恰好いいね! もう魔法とかバカスカ撃てるのかい?」


「馬鹿ねぇ。いきなりは無理でしょ?…このゲーム、序盤から魔法は無理だって説明書に書いてあったし。才能が有ってもまずはレベル上げないとMP足りないんじゃないっけ?」


おお、何か褒められた?…それと、ミーシャさんは勉強家だなぁ…なんて見ていたら、


「なら、一緒に狩りでもしないか? パーティ組んで俺がバンバン敵を倒せばレベルも上がってMPが増えるんだろう?」


「うんうん。あたしがどんどん獣とかを探してきてあげるよ。ザックがどんどん倒していけばあたしもレベリングができるしね! どう? 良かったらパーティ組まない?」


と、こちらにとって都合のいい条件を出された上にパーティを組もうって誘われた。


(え、何これ。騙し…とかじゃないよね?)


何となく怯えて僅かに後退する。彼らの瞳にはそんな陰は見えないんだけど、どうも過去の因縁というか、騙された経験が一歩を踏み出せないでいる。元々ソロで遊ぶつもりもあったので、彼らのように何の裏も無く誘われるという経験も無かったので、わたしは…


「ちょっとぉ!…ザック。あんたがいきなり声を掛けて脅かしちゃったからこの子、怯えてるじゃない…。ほら、大丈夫だから。お姉さんが守ってあげるから…このデリカシーゼロの兄ちゃんからね!」


と、ミーシャさんが自分でも気付かずに震えてる身体をそっと抱き締めて、ザックさんをきつい目で見上げていた。


「えぇ~っ!? 俺だけが悪者扱いかよ、酷ぇなぁ。「あそこで1人で座ってる子、誘いましょうよ!」って焚きつけたの、自分の癖に…」


「ちょっ! 今ここでバラすことないでしょ!! ひっどいわねぇ~…」


などと、何か擦り付け合っている。そのようがおかしくて、何となく「この人たちと一緒に行っても騙されることなんてないんじゃないか?」って思えるようになって…思わず笑っていた。涙もちょっと零れちゃったけど。苦笑いな顔をしてると思うけど…


「あはは…あの、その、ごめんなさい。大丈夫です。ちょっと人見知りみたいな所が有って…その」


過去にあったネトゲでの話しをこの人たちに話しても無意味だし、煩わしいと思い、自分を人見知りと誤魔化すことにした。実際、その気はあるみたいだし、全くの嘘でもないだろうし。


「もし、それでも良ければ…ご迷惑かも知れませんが、パーティの件、宜しくお願いします」


と、ぺこりと頭を下げてお願いする。実際、モンスターの探索と釣り、壁兼火力の存在するパーティは、序盤全く火力で貢献できないわたしにとっては魅力過ぎる条件だ。今は殆ど貢献できないけど、魔法を操ることができれば、どんな形でも絶対に貢献できるだろう。


「お、おう。こちらこそ、宜しく」


「うん、宜しくね、アンちゃん!」


早速、ASO初のフレンド登録をして、同時にパーティに追加登録して貰いました!


「えへへ…」


…という訳で、圏外に出たらいきなりパーティとフレンドが2人、同時にできちゃいました!


嬉しくてフレンドの閲覧できるデータを見たらこんな感じでした。



名前:ザック

性別:男

職業:冒険者(ランクF)

傾向:剣士(盾剣士)

備考:パーティリーダー(ミーシャ、アン)



名前:ミーシャ

性別:女

職業:冒険者(ランクF)

傾向:盗賊(斥候)

備考:パーティメンバー(L:ザック、アン)



ちなみに、自分のはこんな感じ。勿論、自分のだからフル表示となるんだけど、そういえば初めて見たっけ…って、え?



名前:アン

性別:女

職業:冒険者(ランクF)

傾向:魔法使い(杖魔法)〈魔王〉

備考:パーティメンバー(L:ザック、ミーシャ)

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E 初心冒険者セット(服・帽子・靴)

E 魔法使いの杖

E ナイフ+1(破壊不能属性)

E 魔法のポーチ(小容量拡張済)

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スキル:魔力知覚※、魔力操作※、魔力増幅※、魔力制御※、独自魔法生成※

※…魔王固有スキル

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魔法:火炎魔法ファイヤーボール


ま、魔王?…って、えぇーっ!? 何それ!! わたし、倒される側なのっ!?


余りのショックに、突然アンがまた気絶しました。中の人ですか?…余りのショックに、暫く固まってことの成り行きを見守ってただけですよ。悪いか!!(悪いですね、すいません…orz)


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MPを超え魔法を発動した原因露見。但し、中の人にのみw


・初心冒険者の服 DEF:2、額当 DEF:1、靴 DEF:1

・魔法使いの杖 ATK:2-5 MATK:6 INT+1

・ナイフ+1 ATK:2-4 (破壊不能属性は通常は無し)

・魔法のポーチ(小容量拡張:ポーチ大では手提げ袋並に拡張)

※傾向欄に〈〉で囲われた文字は職業ではなくギフトと呼ばれる特殊傾向となる。特殊傾向は複数のスキルを内包しており、発現すると尤も向いている職業に就くこととなる(アンの場合は魔法最大強化傾向の〈魔王〉なので、村人から魔法使い(杖魔法)に強制転職となっている)

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