07 無理は…禁物だよ?
アンってよく気絶するキャラだな…そんな設定してないのに(成り行きとはいえ…(苦笑))
※ゲームシステムの仕様上、魔法使いキャラはその危険性があるというだけですが、フルダイブするゲームでそれは不味いよなぁとも思いますw(そればっかじゃプレイに影響が出るんで後でお助けアイテムを投入した訳ですがww)
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- 再びギルド医務室にお世話になります -
「…はっ!?」
尚、アンではなく千夏の声である。
「…アンちゃんはどうなったっ!?」
自分の
PC画面・バイザー共に暗い。画面中央に表示してあるメッセージを読むと「ログアウトしました」とある。
「は?…ログアウト?…そんな操作してない筈だけど…」
ログ窓をスクロールすると、パーティを組んだザックとミーシャの
自分が気絶したことによる「大丈夫か!?」という声掛けを最後に途切れていた。その直後、システムメッセージで「脳波に異常が発生したので云々」とあって強制ログアウトとなっていた。
「…そりゃフルダイブしてればわかるけど、わたしはマニュアルモードでログインしてたんだぞ…どうなってんだ??」
とりあえず、時計を見るとまだ5分と経ってない。急いでログインすれば2人はまだ居る筈だ。そう思ってログインを試みるが…。
「あれ、リログってどうやるんだっけ…」
取り敢えずゲームパッドのキャンセルボタンや決定ボタンを押していると画面が明るくなり、ASOタイトル画面を経由してログイン画面に戻る。
「おし、ログインをば…」
ログインを選択して再びASOの世界へ!…僅かなLOAD時間の後に再び薄暗い画面へと舞い戻る。
「あ、あれ?…どっかで見たこれは…って、また医務室ぅ~!?」
と、
- 困惑するザックとミーシャ -
「えっ!?」
「ちょっ、お、おい!大丈夫かっ!?」
新しくフレンド兼パーティメンバーになったアンちゃんがパーティに加入した途端、いきなり足元から崩れ落ちて倒れてしまった。ちなみに
「あいた!」
勘のいいミーシャが頭を小突いてきやがった…。ま、それはさておき、何で急に倒れたんだろう…ミーシャが抱き起して頬を軽く叩いて声掛けをしているが…。ひょっとして、ASYURAとの適応ギリギリでゲーム始めたのかな?…ギリギリだと、いきなりリンクが切れたりする不具合があるって聞いた覚えがあるけど。
「ダメ! 全然起きる気配が無いわ!」
「しゃーない。ギルドに医務室だっけ?…があるって聞いたから連れて行こう。ここに放置するよりゃマシだr…痛ぇっ! 何しやがる!」
「あんたが余計なこといおうとするからよ!…ん~、手を貸して。あたしじゃちょっと無理!」
傾向が盗賊系だと小柄な子供でも運ぶのはきついからな…特に序盤のキャラじゃ筋力が足りないだろうしな。俺は溜息を吐くと「任せておけ」といいながらアンちゃんを背中におんぶした。流石にお姫様抱っこは冷やかされそうで恥ずかし…いや、単純に筋力値が足りなくてできないってのもあるが。
「大丈夫? 余分な装備とかドロップ品とか持ったげようか?」
「ん? あぁ、大丈夫だ。つか、ドロップ品は関係無いんだって。純粋に筋力値が関わってるからな」
そうじゃなければ、ほぼ無制限なアイテムボックスや大容量のバッグ系アイテムを持っているキャラは、拾い集めたアイテム群の重量によってその内に動けなくなってしまう。流石に直接装備している武器防具は体重にカウントされるが小柄な彼女を背負うくらいなら何ら問題はなかった。
こうして、原因不明の気絶をしたアンを背負って、2人はギルドへ戻ることとなった。
- ギルド 医務室 -
こんこん。
「すいませ~ん、急患で~す」
何ていえばわかんないけど、取り敢えずそういってから医務室へ入る。両腕が空いてないので、ミーシャにノックとドアの開閉を頼んだけどな。
「入りなさい」
わお、相変わらずダイアナ先生はおっかねぇ…。冷たい声と美貌が人気らしいが、俺には学校の先生を思い出すので余りいい印象がない。…やっぱしょっちゅう仮病で保健室に寝に行ってるせいかね…苦手に思うのは。
「あら? またこの子…。今度は何をしでかしたのかしら? 取り敢えずベッドへ運んで頂戴」
「あ、はい」
ザックは最寄りのベッドにアンを下ろし、ミーシャが毛布を掛ける。
(また?)
保健室と医務室と少々違うが、常連らしい所に妙なシンパシーを感じるザック。
(またって…この子、しょっちゅう医務室にお世話になってるのかな?)
ザックみたいになったら困るなぁと、ちらっとアンを見やるミーシャ。どうやら、2人はリアルでは学校が同じようだ。クラスメイトかどうかは不明だが、可能性は高いだろう。
ザックはミーシャと顔を合わせるがとんと見当が付かず、
「またかどうかはわかりません。えっと…」
「初めてパーティを組んだ直後くらいにいきなり気絶しまして、そのまま放置する訳にもいかないので連れて来たんです…」
ザック、ミーシャの順に簡単に状況を説明する。
「ん~…それ以外には? 何か気付いたことはない?」
ん~、と唸ってみるが思い当たることはなく、ザックとミーシャは互いに視線を合わせるも、左右に首を振って「わからない」「だよね」と、無言で意志疎通をするだけだった。
アンがその様子を見ていれば、「なぁに? 目と目で会話しちゃって!熱いよ、くぬくぬ、ひゅ~ひゅ~!!」とか煽っていたかも知れない。
「…ちょっとわかりません。この場合、どうしたらいいと思いますか?」
考え込んでいたザックが、恐る恐る、手を挙げて質問をする。
「この場合とは?」
机に向かっていたダイアナが、椅子を回転させ、改めてザックたちに向き合い座り直す。尚、一般的な保健室によくある小さめの背もたれが有る、肘掛けの無いタイプの回転椅子だ。ギルド内の備品に関しては、時代考証や技術的なんちゃら等は考慮されてないらしい。
「俺たちは仲間に誘ってパーティに入れた途端に倒られて困ってるんですよ…その、リアルだったらその子の親に連絡して引き取って貰ったりとかやりようはあるんだけど…」
「この場合、ゲーム中に気絶してるってことは親に連絡が取りようがないですし…だからといって無視する訳にもいかないかなって…」
ザックたちは、本来ならGMに報告してそのまま放置し、引続きゲームを楽しんで来ることもできた。何よりさっき知り合ったばかりの、ほぼ赤の他人だ。無理にギルドまで連れて来る必要は無かったのだ。だが、それでも、2人はプレイする時間を惜しむこと無く、倒れたアンを医務室まで連れて来た。
「なるほど…あなたたちは優しいのね」
目を細めてダイアナはまぶしそうに2人を見詰める。
「…は?」
「…え?」
2人は不意に放たれたダイアナの言葉を理解できずに言葉を詰まらせる。ダイアナは改めて説明するつもりは無く、次の言葉へと繋いでしまうが、2人がその話しを聞けばこう答えただろう。
「何いってるんだよ? 人が倒れたんだ、助けるのは当たり前だろう?」
と。
「…いえ、何でもないわ。患者はこちらで何とかしておきます。あなたたちは引き続き遊んで来ても構わないわ」
ダイアナは、さも当然のようにアンはこちらで看ておくからと冒険かクエストの続きをして来いというが、
「え、いや、そーもいかないでしょ…。もしかすると俺たちが原因なのかも知れないし」
「そうそう」
と、倒れたアンを気遣ってベッドをちらちらと見ている。ダイアナは優しい目で2人を見詰めると、
「…わかったわ、可能な限り看ててあげて。勿論、夜遅くならない程度に、ね?」
と、さり気なく現実のしがらみを覚えておけということも忘れない。
プレイヤーには独り暮らしでもない限りは長時間ログインするにも制約があるのだ。食事やお風呂、学校に通っていれば宿題などもあるだろうし、翌日には学校や会社に行かなければならない。
「「…はい!」」
2人は元気に返事をすると、ベッドの横に設えられている椅子に座り、看病を始めた。看病といっても、寝顔を見ることしかできないのだが…。
だがしかし、両プレイヤーがログアウトするまでに彼女…アンが目覚めることは無かった。
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中の人の意思を無視して気絶する自キャラ。これって一体…通常のフルダイブではそんなことは発生しません
運営A「事案発生!?」
運営B「またかっ!」
運営C「帰れない日々が始まる…」
運営D「…」
運営B「D!死んだ振りすんな!」
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