03 無理は禁物!

疲労が溜まってて非常に眠いんだけど、もう2日も間が空いてるし、取り敢えず順番考えないで「今書きたい」を優先させたらこれになりました(を

※当時のコメントですが実は多少改稿してからアップしてます。元々は小説家になろうで連載してたんですよね、このラノベ(らしき文章)

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- 魔法ってコツを掴めば簡単だね! -


魔法の訓練をこれ以上邪魔しちゃ悪いと思ってその場を後にして元の場所に戻ると、さっきのおっさんが所在なさげに立っていた…ってやばっ!


慌てて走って行くとおっさんは気にした風でもなく、そのゴツイ手に持った金属製のカードを手渡してくれる。丁度、交通系ICカードくらいの大きさだ。端っこに穴が開いており、首に掛けるチェーンとかを通すのに丁度いい感じだ。


「これが冒険者証…ギルドカードだ。無くすと再発行手数料が掛かるから無くすんじゃないぞ?」


と、首掛けのチェーンもくれた。「え?」と驚いておっさんを見上げると、


「サービスだ。それに付けて首から下げるといい」


と言ってドスドスとギルドの建物へと戻って行く。流石初心者サポートNPC。さり気なく気遣いが行き届いている。


「おっちゃん、ありがと~!」


手をぶんぶんと振って感謝を叫ぶと、おっさんは振り向きもせずに軽く手を上げて建物の中へと消える。


「…フルダイブしてたらこういうのって気恥しいけどPC画面を見ながらだとアレだねぇ…他人3人称視点だからそーゆーのが無いから自然とできる(笑)」


いや、ロールプレイ役割を演じるが嫌いではないんだけど…初ログインして間もないしで、そこまで入ってないし…。


「…さて、と。どうしよっかなぁ…」


開店のスタートダッシュ組とは数時間の出遅れもあるし(部屋の掃除したりキャラメイクにと時間掛け過ぎてるしねぇ…)別に攻略組と争うつもりもないし…どちらかと言えば他の人とは違うことをしてみたい!…なんてことを考えながら歩いてて、ふとあることに気付く。


「そ~言えばさっきのお弟子さんプレイヤーたちって今日ログインした割にはもう魔法の練習してたけど、ど~なってんのかな?」


頭上に?マークが乱舞するも、考えてもわからない。魔法使いになるには、「それなりの金額を収める」か「誰かの紹介状を所持してないとなれない」とは聞いていたが、ログインして数時間そこそこでそうなるとは考え難い。


※ASO第2陣のアン千夏ですが、実は彼らは第1陣のメンツで半年以上掛けて資金を貯めて…と言う事実に全く気付いてません


「ん~、まぁいっか。後でナビさんにでも聞いてみれば。それよりも…」


と呟きながら魔法訓練をしていた場所に戻るアン。既に残っている人はおらず閑散としていた。他の場所に視線を巡らしてみるが遠くで未だにランニングしてる人が数人居るだけだ。


「うわぁ~、まだ走ってるよあの人たち。て言うか、まさか訓練所の雰囲気を出す為だけの背景画像とかじゃないよねぇ…」


よくある対戦格闘ゲームの背景みたいなものだと思って貰えばわかり易いだろう。その場の雰囲気を盛り上げる為だけのものであり、触れることはできない。


「ま、いいか。えーっと…あったあった」


訓練用の杖を探しだし手に取る。どうやら魔法訓練の申請をしてないと触れることすらできないと言うことは無いようだ。訓練用の杖を幾つか取り出しては構えてみて身の丈に合う長さと重さの杖を選び出すアン。


「これがいいかな?…さてっと」


先ずは自身の身体の中になる魔力だかマナを感じ取ろうと杖を持ったまま集中を開始する。何も持たないよりは何か持ってる方が効率もいいだろうと思った訳だ。


「ん~~~…」


目蓋を閉じて集中するアン。中の人の目は実際に閉じてはなく、Aギアのバイザーの目の前が暗くなってるだけだ。尚、PC画面の表示も目を閉じた自キャラがうんうん唸ってるだけの微笑ましい?状況が映っているだけで、遠方にはむさ苦しいキャラが相変わらず走っている。


「おお、何かモヤが見えて来た。やっぱ杖持って集中した方が簡単だね!」


見習い魔法使いは無手で訓練する者も居るが、矢張り杖などの発動体を持って訓練した方が上達は早い。発動体には杖の他、短杖,指輪,ピアスなど多種多様だがこの訓練場には木製の杖しかない。


「えーっと、このモヤモヤを杖に向かって集中するんだっけ…」


まだ目を瞑ったまま、杖に視線をずらす。身体の腹辺り丹田に発生したモヤは杖を握った右腕にゆっくりと移動し、やがて杖に達する。


「後は魔法を発動か…まだ魔法とか知らないし、さっき見てた爆炎の魔法ファイヤーボールでいいかな?」


杖の先、丸い瘤ができていて殴ることにも使えそうな部分にモヤが集中して圧縮するように念じながら炎の塊が飛んで行って目標である的にぶつかり爆発するイメージを練る。


「よし、んじゃ目を開けてっと…」


バイザーの暗闇が解除されて訓練場の中央付近にある木の的を目視確認する。何故か十字のロックオンマーカーが現れて、的をロックオン。ピーっとロックできたよ!…と言うBEEP音が聞こえてくる。


「おお! 訓練場だとこんな初心者アシスト機能があるのかな? こりゃ狙うの楽だけど…まぁ、実際の狩りじゃこんなに落ち着いて狙い付けられないから、慣れるまで頑張ってね?ってことかな」


取り敢えずロックオンしたならと「いっけ~!」と叫びながらファイヤーボール発射を念じる。自キャラは杖を正面に構え、瘤の部分からぼわっと炎が溢れて来た瞬間に炎の塊がずばっ!と吐き出される。


「おおぉっ! 出た!!」


反動で杖を真上に掲げ、身体が後ろへと倒れかけるが何とか元の体勢へと戻す。全然鍛えていないレベル1のキャラでは、初級魔法の呪文・・・・・・・を放つには、まだ鍛え足りないようだ。


どごぉぉん!


見事に的にぶつかったファイヤーボールは目標を粉砕して砕き、そして焼滅することに成功する。と同時にMPがすっからかんになったアンは立ち眩みを起こし、その場にしゃがみ込んでしまう。


「あ、あれ? 目の前が真っ暗。画面も真っ暗だ。あれ? おーい、どしたー? アンちゃん!?」


中の人である安藤 千夏あんどう ちなつは、バイザーもPC画面も真っ暗になったことに慌ててコントロールパッドやキーボードを弄るも、何も反応が無くなったゲーム画面に困惑するのであった。



- 無理は禁物! -


「お、画面が元に戻ってる!」


にっちもさっちも行かなくなった上、ログアウトすらできなくなったことに困惑した千夏は、「しょうがない。出す物出して落ち着こう」と、緊張感から来る生理現象に勝てずに離席をして、たった今戻って来た所だ。フルダイブしてない利点の1つと言えよう。


「…はぁ、びっくりした。要するに扱いきれない魔法でMPを過剰に消費してキャラが失神したってことね、多分」


画面を見るとどこかの部屋…多分冒険者ギルド内の医務室みたいな場所だろう。ベッドに寝かされた自キャラがおり、他に幾つか空いているベッドが並んでいる。簡易ステータスを見るとMPがほぼ枯渇していてじわじわと回復していることが見て取れる。


意識を集中してバイザー側の表示を出そうとしても、自キャラが寝ている為にまだ真っ暗。身体を動かそうと意識しても手の先や頭が少し動くだけで動き出せる状況じゃないのがわかる。


「無意識状態…つまりは寝てるってだけ、かな?」


恐らく、自キャラが寝てる状況にあるが寝ていても周囲の状況を感じることができるから画面が映っていると。


「道理で画面が薄暗いと思った。でも、便利だなこれ。慣れれば寝ていても敵襲があっても飛び起きれるかも知れないし」


圏内で夜襲も何もないもんだとは思うが、マニュアルモードの利点の1つに気付いて喜ぶ千夏。もっとも、睡眠下にあるキャラが少しの刺激で飛び起きれるようになるまで、どの程度関連スキルを鍛えれば可能なのか不明なのだが。


その内に、医務室?の外から声が聞こえてくる。


「何かあったのかな?」


と千夏は緊張するが、自キャラであるアンは絶賛昏睡中だ。


「ん~、自分の意思でキャラが動かせないってモヤモヤするなぁ…無理させなきゃ良かった」


そう思うが後の祭り。進むがままに任せていくしかなかった。



- 医務室 最近のNPCって凄い! -


「だから、俺は自分の仕事は全うした。それ以降は関係ないだろが?」


「いーえ!ちゃんとギルドの外まで案内するまでが仕事の筈です。…何で訓練場に放置するのかしら…」


どうやら、片方はNPCのおっさんのようだ。がなり声には聞き覚えがある。もう片方は…女性の声だとしかわからない。2人は言い争いをしながらこの部屋に近づいているみたいだ。


「う~ん…危険なことにはならないっぽいけど、何となく嫌な予感がする」


叱られるとか説教とかのフラグがぴこんと立ってる気がする千夏としては、ゲームの中まで説教はやだなぁとモチベが下がって行く。


「ログアウトできないなら電源切っちゃおうかなぁ…はぁ、ウツだ」


フルダイブしていれば本人の意識もほぼ落ちていてそんなことは考える暇も無く進行しているシーンなのだが、マニュアルモードである千夏は本人の意識もしっかりしていて、説教を喰らうとわかっていればゲームから逃げ出したくなるのも無理はないだろう。


「ん~、でも折角楽しみで買ったんだし…説教を喰らうのは嫌だけど我慢するかなぁ…」


と、なるべくなら意識を取り戻して逃げ出そうと考えながらその時が来るのを待つのだった。



「…あら、まだ目覚めてないようね」


最初に入って来たのは如何にも女医!みたいな恰好をした女性だった。どうやら、ギルドの医務室付きのお医者さんらしい。


「…ふむ。じゃ、俺は仕事に戻…うごっ!」


Uターンして逃げ出そうとするおっさんを女医さんが襟首を掴んで阻止する。あ、ちょびっとだけHP減ってる。痛そう、と言うか苦しそう…。


「て、てめぇ、何しやがる!」


おっさんが口から赤い唾を吐きながら怒ってる。舌でも噛んだのかな? 痛そう…。


そうこうしてる内にアンが目を覚ましたらしく、画面が明るくなってきた。「う、うん…」とか可愛く呻き、目蓋をゴシゴシと片腕で擦り、ゆっくりと上半身だけ起き上がる。何この可愛い動作!…て言うか、わたしはこんな起き方しないから、プリセットした寝起きのアクションなんだろうな…とか画面を凝視しながらゴクリと…はっ! 何で唾を飲み込むのわたし!! これじゃ変態みたいじゃない!!!


…と言う葛藤を他所に、画面の中で事態は進行してました。はっ!?…と我に戻ったわたしは、一応設けられてるログ窓をスクロールしてアンが聞いてる内容を確認すると…。



ギリアム「おう、嬢ちゃん起きたようだな!(痛てて…)」

ダイアナ「目が覚めたようね? 失礼…ふむ、脈に問題無し、と」


(このギリアムってのがおっさんの名前で、ダイアナってのが女医さんの名前か。聞いてないのに個人名表示してるけどいいのかなぁ?…まぁNPCだから問題ないのかも?)


(カッコ内のは心の声か小さい声なのかな?…台詞にも出て来るって親切なのか余計なのか…。でも、アンの耳が良くて聞こえたってだけなのかも?)


ギリアム「そのなんだ、すまないな。嬢ちゃんが倒れたのは俺がきちっとギルドの外まで案内しなかったせいみたいでな…」

ダイアナ「(…もうちょっと言い方があるでしょうに)。えっと…アンさん、でいいのかしら? 貴女が倒れたのは覚えているかしら?」


そこまでオートパイロットで2人のNPCを見てるだけのアン。一応頷いてはいるが、中の人の自分がAギアを被っていないので一切声を…と言うか台詞を発していない…と言うことに気付くわたし。


「…やばい! これ被ってないと唯のお人形さんだよ!」


…と、慌ててAギアを被り最低限のシンクロチェックが成される。AギアにシンクロしてPCのスピーカーではなく、Aギアのスピーカーを通して渋くてごつい声と少々神経質な大人の女性の声が聞こえてくる。


「…なぁ、嬢ちゃんの反応が有るようで無い気がするんだが、大丈夫か?」


「そうね…一応意識が覚醒してこちらを見て反応は有るようだけど…ひょっとしたら、不味いかも…」


と聞こえ、事態は少々やばい方向へと傾いていることに気付く。て言うか、このゲームのNPCってここまで人間と同じ考え方や状況判断するの?…と意識が逸れつつも、わたしはガバチョ!とベッドの上に立ち上がり、


「だ、大丈夫です! この通り、ぴんぴんしてま…あううぅぅ…」


と、まだMPが回復しきってない所に急に立ち上がったせいで立ち眩みを起こす。勿論、中の人は元気一杯なのだが状態ステータス貧血状態を素直に尊重したシステムのせいだ。アンはそのまま崩れ落ちてぴよぴよ状態になる。勿論混乱ではなく、貧血による意識低下の方だ。


「むぅ、今日はここでゆっくり休んだ方がいいな。何、まだ冒険者になりたてのひよこに使用料を取る程ギルドもがめつくないさ。安心しろ」


「…そうね。後で簡単な食事を持って来てあげるから、しっかり食べてなさい。食べ終わったらちゃんと休むのよ。いい?」


と、可哀想な子を見る目つきで言われました。とほほ…orz


再びベッドに沈むアン。ダイアナさんは毛布を丁寧に掛け直してくれ、目を閉じて寝てしまったアンを優しい表情で見詰めてから静かに医務室を後にした。ギリアムさん?…とっくに居なくなってたよ!


「…で、わたしはこの後どうしたらいいんでしょう? フルダイブしてた場合、どんなことができるんでしょうかね…」


強制的に寝たらそのままログアウトできるのかなぁ?…とか考えていると、ナビさんが現れた。いきなり、唐突に、事前予告なしに。


〈やぁ、お困りかい? アンさん!〉


と、能天気そうな声と共に…。いや、助かりますけど。


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読者と作者だけが知っている、お助け運営さん!(ストーカーじゃないよ?)


・訓練用の杖 DUR:20 C-- ATK:0-1 MATK:0

※DUR…耐久値、C--…レアリティランク、ATK…物理攻撃値 MATK…魔法攻撃値

※訓練用なのでどのパラメータも最低値となっています

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