第7話・デギンとシャア

 前回までは半信半疑でしたが、どうやらシャアは完全にクロだったようです。なので今回はシャアをクロと想定して、一年戦争の最初から順に話を追ってみましょう。


 まずジオン・ズム・ダイクンですが、彼がシナリオの手先だったのか、それとも誰かにそそのかされていただけなのかは不明です。

 ただしデギン・ソド・ザビによる暗殺だけはありえません。

 なぜならデギンはダイクンの跡を継ぎたくなかったからです。

 大事な子供たちにシナリオの存在を教えなかったのが、その根拠です。彼は一年戦争を自らの手で完遂するつもりでした。

 その調整のため、黒い三連星を案内役にレビル将軍が招聘され、そこで手に入れたV作戦の情報を元に、連邦の新型モビルスーツを受領する事になりました。

 連邦軍とジオンのミリタリーバランスを整え、戦争を長期化・泥沼化させるためです。できればコロニーも2、3個くらい落としたい。

 デギンの密命を受けたシャアは、ドズルをうまく騙してサイド7に飛びました。

 でも部下はシナリオと無関係なので、まずはセオリー通りに偵察を……あっジーンが暴走した! 受け取る予定のモビルスーツをブッ壊し始めた! ああっアムロが余計な事を!

 最初から自分が行けばよかったと反省したシャアは、仕方なく新型モビルスーツを破壊してV作戦を遅延させる事にしました。元よりそーゆー任務だったのです。フルコンプリートはジーンのせいで失敗です。

 ですが、そこでセイラさんと遭遇してしまいました。これは厄介な事になったぞ!

 いざとなったらホワイトベースごと破壊する予定だったのに、中には愛する妹が乗っているのです。シャアはホワイトベースを前に、何もできませんでした。

 しかしシナリオは、正確には連邦とジオンの裏で暗躍する秘密結社的な何かは待ってくれません。シャアはルナツーで新型モビルスーツを受領する事になったのです。

 一方、ワッケインは新型モビルスーツを引き渡すために、何も知らないブライトたちを幽閉しました……ああっブライトさんまで余計な真似をやめろ出るなホワイトベース動かすんじゃねえ!

 ワッケインは泣く泣くマゼランをブッ壊す許可を与えました。


 こうなるとパオロ艦長も怪しいですが、大怪我で何もできなかったので割愛。リード中尉も同様。


 さて大気圏突入とかのドサクサを経て地球に降りたシャアですが、この時すでにデギンから密命を受けていました。いつ受けたのかはわかりません。

 その内容はガルマ・ザビの抹殺。

 ニューヤーク市長の娘とザビ家の末子が結婚したら、地球から人類を追い出す計画に遅延が生じてしまうからです。

 何が何でも結婚すると決意の固いガルマを、デギンは泣く泣く切り捨てる事にしました。シャアの正体は知っているでしょうし、シナリオの存在を教えて同志に引き込む方法も考えられましたが、ガルマはあまりにも真っすぐな坊やだったので……

「君の父上がいけないのだよ」


 こうしてシャアは左遷され、キシリア様の配下として昇進しました。ドズルに締め上げられてバレるのを恐れたデギンの采配でしょう。


 なんだかんだでジャブローに潜入したシャアは、そこで妹と再会します。そして「ああ、もう心配しなくていいんだ」と安心するシャア。

 最愛のアルテイシアはジャブローでゴップに保護され、ホワイトベースから引き離されると思い込んでしまったのです。

 しかしゴップはセイラさんの正体に気づかなかったか、あるいは軽視していました。他にもミライさんをホワイトベースから降ろそうと縁談を持ちかけたりしたものの、あっさり諦めています。これからホワイトベースは抹殺されるというのに薄情です。

 ゴップがシナリオと無関係な可能性は考えましたが、そんな人が連邦軍の提督、しかも最重要拠点であるジャブローの司令に就けるとは思えません。あれは絶対わざとです。


 さてアルテイシアはジャブローにいるはずだし、これでいつホワイトベースが撃沈されても心配ないな! 12機いたリックドムが全滅だと⁉ 大型艦がビーム避けてる連邦の操舵手は化物か!? つーかあいつら全員人間じゃねえ!


 ちなみにホワイトベースのクルーがそこまで鍛えられたのは、半分くらいシャアのせいです。


 一方、サイド6からの情報でアルテイシアの存在を知ったデギンは、フラナガン機関を使ってシャアをテキサスコロニーへ派遣。そこでホワイトベースの抹殺に動いていたワッケインをマゼランごと抹殺し、囮としてアムロと戦っていたマ・クベの救出に向かわせます失敗しました。

 マ・クベはシャアを同志と知っていたものの、その正体までは知らされていなかったのが原因です。アムロの恐ろしさも、いまいち理解していませんでしたそりゃタヒぬよね。


 その後、もはや消去できないと判断されたホワイトベースのクルーたちには、口止め料として金塊が送られました。用意したのは、おそらくデギンです。

 こうしてホワイトベースの面々は抹殺対象から外され、これで手打ちとなりました。

 セイラさんはシナリオの存在を知っていたようで、ウソだらけの手紙を利用して、ブライトさんには兄は鬼子だとか適当なカバー・ストーリーを教えつつ、クルーたちに口止め料が公平に分配されるよう手配しています。

 真相は誰かが戦後にしかるべき人物にだけ接触して教える予定で、ブライトさんは戦後に知らされエゥーゴに組み込まれました。ハヤトもそうでしょう。カイはジャーナリスト兼スパイとして、いつでも逃げられるようにシナリオと距離を保ちつつ協力していたと思われます。


 さて、こうなってしまっては一年戦争のシナリオはもうメチャクチャ。全部アムロたちのせいです。連邦とジオンは戦争の継続を諦めて後片付けを始めました。ソロモン戦でドズルをうしなったデギンは、残されたギレンとキシリアを守るためにレビルと連絡をつけ、終戦協定の準備をウギャー!


 何も知らないギレンが余計な事をやらかしてくれたのです。


 マ・クベの壺でシナリオの存在を知ったキシリア様はシャアを懐柔、シャアも正体を明かして結託する事になりました。メチャクチャになってしまった戦争を終結させるために。

 しかしその時、キシリア様とシャアは気づいていなかったのです。

 ギレンがシナリオとは無縁だったという異常事態を……。

 デギンが暗殺された時点でキシリア様は事情を察し、戦争を終わらせる気のない邪魔者として、ギレンの頭に風穴を開けました。

 シャアはシナリオに宇宙世紀最大の危険人物と見なされたアムロの抹殺あるいは懐柔のために飛び回り、ついでにアルテイシアも探します。

 なぜアムロだけが抹殺対象なのかって? もう全部気づいてるんですよあの天パは! 何しでかすか予想もつかないんだよあの天パは!

 そしてニュータイプとして覚醒したシャアがサイコミュ搭載機に乗れば、セイラさんの居場所だってわかるのですギャー何してくれんだアムロやめろ撃たないで穴あけんじゃねえもう首だけじゃん脱出ウギャー‼

 ジオングを失ってからアムロと会話の機会を得てアルテイシアまで見つけられたのは、もはや皮肉としか言いようがありません。


 最愛の妹に拒絶されつつもアムロと心を通わせ、同志にこそできなかったもののシナリオの存在をバラされるのだけは阻止したシャアですが、まだ仕事が残っていました。

 脱出を図るキシリア様の抹殺です。

 そもそも戦争の終息が目的だったのに、さっさと降伏すればいいのにザンジバルを出すのは、宇宙世紀の暗部を世界中に公開する覚悟を決めたからです。これだけは絶対に阻止しなければなりません。

 家族を全員喪い、実の兄に至っては自ら殺ったんじゃシナリオを恨むのも仕方ないねーとか思いつつ、バズーカをドーンと一発サラリと脱出。任務完了!


 ちなみにアムロはシナリオへの協力を拒否し、幽閉されました。

 でも結局なんだかんだでシャアに誘われエゥーゴに協力してしまい、その後も火消し役として戦う破目になるのです。

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