第7話 ドキドキ
〜桜の身体に入った祐希の場合〜
やっと初日の授業が終わったが、4組は頭がいい人が多いからか授業の進むペースが早く俺には全くついていけなかった。
2組だった時は分からない事があると誰かしら、「分からない」と言って丁寧に教えてもらっていたから授業の進むペースも遅かった。
でもそれが俺には有難かったし楽しかった、だが4組の授業はみんな頭がいいので無言だし分からないなんて言う人もいなかったからつまらなかった。
だから同じ時間でも4組の授業の方が長く感じた。
やっと授業が終わり、いつものように隼人とハンバーガーでもと思ったが思ってすぐに俺は桜だったと気づき方を落とした。
「桜ちゃん今日一緒に帰ろう!今日部活ないから最近近くにできたクレープ屋さんに行ってみない?前に行きたいって話してたしさっ!」
あかりちゃんが私の席まで来てクレープ屋に誘ってくれた。
俺は帰宅部だしそのまま家に帰ってもすることもなかったので一緒に行くことにした。
帰りの支度をして昇降口で靴を脱いでいる時、隼人と俺の声が聞こえた。
桜も上手くやってるかなと一瞬心配したが、さっきの声の様子からみて今のところは問題なくやっていそうだなと思い少し安心した。
俺は今まで誰とも付き合ったことがなかったので、女子と一緒に歩いているんだと考えると心臓が早くなったのが分かった。
そして俺にとってあかりちゃんは初対面だし、初めて女子と隣を歩いてるし俺にとってはドキドキしないわけが無い。
「そうだ!どんなクレープあるんだろうね!何食べようかな〜やっぱり王道のチョコバナナかな?それともアイスが乗ってるクレープかな?迷うな〜」
あかりちゃんが楽しそうにそう話していたので俺も話にまざってみた。
「王道もいいけどせっかくきたし初めてだからさ、なんか食べたことがないようなクレープもいいな」
俺がそう話すとあかりちゃんは目を大きく開けて「そうだ」と言わんばかりの表情をしていた。
そんな話をしながら歩いていると目的のクレープ屋さんに着いた。
二人でメニューを見てみると沢山種類があってこれは迷ってしまうなと思っていると、あかりちゃんも俺と同じことを思っていたらしく耳元で「これめちゃくちゃ迷う」と言ってきたので「私も」と俺もいいお互い結構迷っていた。
「お客様お決まりでしょうか」
店員の人から声をかけられて気がつくと結構悩んでいたらしく、後ろに人が並んでいた。
俺は二択で迷っていたが、結局スタンダードなチョコバナナを選んだ。
あかりちゃんはというと最後まで悩んで、クレープの中にチーズケーキが入っているクレープを選んでいた。
俺の方が早く作り終わったので、店員の人から先に渡されたのであかりちゃんが「先に食べていていいよ」と言ってくれたがあかりちゃんの分のクレープが出来上がるまで待っていた。
お互いのクレープが出来たので近くの椅子に座って食べることにした。
なかなか男友達とクレープを食べに行く機会がないので、久々のクレープだったが食べてみると凄く美味しくて感動さえ覚えた。
俺が感動している隣であかりちゃんも俺と同様に感動しながら食べていた。
「うわぁぁぁ美味しい!」
あかりちゃんの本当に美味しいんだろうなと思わせる声が聞こえて俺も更に美味しく感じた。
お互い美味しくて黙々食べているとあかりちゃんから思いもよらない言葉が聞こえた。
「ねぇねぇ桜ちゃんのクレープ一口食べてみたいな!私のクレープも良かったら食べて食べて!」
そうあかりちゃんから言われ急に胸がドキドキと鳴った。
ダメなわけないが恋愛不慣れな俺の身が持つかと思ったが、今の姿は桜なので断るわけにもいかず食べさせることにした。
あかりちゃんが俺のクレープを食べる為に段々近づいてきて、俺はその光景を恥ずかしくて全部見ることが出来ず目を逸らしたが、鼓動だけが早くそれを隠すのに必死だった。
あかりちゃんから私のも食べていいよと言われたが、姿は桜だが中身は俺なのでさっきの出来事で身が持たず申し訳ないが断った。
お互いクレープを食べ終えてそろそろ帰ることにした。
聞くとあかりちゃんの家は俺の家の逆方向だったみたいで、普通なら送っていかなければいけないのだが今は桜の姿なのでここで別れることにした。
「今日は念願のクレープ桜ちゃんと食べに行けて嬉しかったな!また食べに行こうね」
その言葉に俺も続いた。
「うん美味しかったね!また食べに行こう!暗くなってきたから気をつけて帰ってね」
あかりちゃんはとても嬉しそうな表情をしていて桜ちゃんもねといい歩き出した。
俺は少し見届けてから帰ることにした。
歩きながら今日の事を思い出して、どうしてこんなにドキドキしてるんだと思いまさかと思ったが、そんな事ないと首を振り考えるのをやめた。
家の中に入ると桜はもう帰っていた。
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