第6話 ハンバーガー屋
〜祐希の身体に入った桜の場合〜
授業が終わり、部活がある人は部活をしにいくが私も祐希も幸い帰宅部なので部活の心配はしなくても良くてホッとする。
私は早く学校から出て家に帰りたかった。
だが隼人から今日の帰りハンバーガー食べに行こうと誘われてしまった。
隼人も帰宅部なのでたまにこうやってハンバーガー食べに行ったり、カラオケに行ったりしているのを見たことがある。
正直断りたかったが、隼人と二人で食べにいけるなんてと思うと断る理由がなかった。
むしろ、感謝をしたくなるくらい嬉しかった。
だが優馬がいるのではないのかと思い、隼人に優馬は部活あるのかと聞いてみると、優馬はテニス部に所属しているみたいだった。
隼人の話を聞いてると優馬は部活があるのでなかなか三人で、放課後遊びに行ったりしていないようだった。
私はその話を聞いてそれって、今後隼人と二人で遊びに行けることが多かったり、祐希の身体だが中身は私なのでなんだがデートしているみたいと勝手に思い少し浮かれてしまった。
隼人と一緒にハンバーガー屋に向かう。
「なんか今日嬉しそうだな」
歩きながら隼人から言われたが、私にとっては当たり前の話だった。
自分が祐希の身体に入れ替わる前は、隼人と二人でどこかに遊びに行ったり、食べに行ったりしたことがなく必ず祐希も一緒だったので身体は違うが初めて隼人と二人でどこかに行けるだけで嬉しい。
だがそれを隼人に言えるわけもないので、ハンバーガーが食べたかったからと自分の気持ちを偽り笑顔で隼人に話した。
ハンバーガー屋に着きメニューを見た。
「俺はテリヤキバーガー食べるけど祐希は何食べる?」
よく食べているのか隼人はメニューを見ずにテリヤキバーガーを選択していた。
「お、俺もテリヤキバーガーでいい」
私も隼人と同じものが食べたかったのでテリヤキバーガーを選んだのだが、隼人から思いもよらない言葉が返ってきた。
「あれ?お前テリヤキバーガー嫌いって前に話してなかったけ?」
その言葉に私も驚いてしまいそうになったが、そこで驚いたら不自然になってしまうのでグッと堪え、あまり好きじゃないけど挑戦したい気分なんだと誤魔化した。
「あはは。挑戦ってなんだそれ」
隼人は笑っていて特に気にしている様子はなかったので私は安心した。
テリヤキバーガーと飲み物を買って空いている席に座った。
私は喉が渇いていたので最初に飲み物から飲み、次にテリヤキバーガーの袋を開けた。
私がテリヤキバーガーを口に含むと目の前に座っている隼人の視線を感じた。
「どうだ?食べれるか?」
隼人の言葉でそういえば祐希はテリヤキバーガーが嫌いだったと思い出した。
「他のハンバーガーの方が美味しいけど一応食べられるかな」
私はバレないようにと思いそう答えた。
隼人は少し笑いながらそうかと答えて自分のテリヤキバーガーを美味しそうに食べていた。
その光景を見て今の姿が祐希じゃなくて私だったらどれだけ幸せかとちょっと悲しくなった。
ハンバーガー屋から出て外も暗くなって来たので帰ることにした。
隼人の家は私の家の近くなので帰り道は同じである。
二人並んで家に帰ることも初めてだったのでこんなにドキドキするものなのかと初めて知った。
そんな事を知る由もない隼人は、帰り道ずっと学校での出来事だったり、最近はまっているゲームの話をしていて私はバレないように頷いて聞いていた。
そうこうして歩いているといつの間に私の家に着いていた。
「おっ着いたな!じゃあまた明日な!」
隼人からそう言われ私も返した。
「うん!また明日な!」
そう言うと隼人はおう!とだけいい歩き出した。
私は隼人の後ろ姿を見ながら、今日の出来事も隼人にとっては祐希との何気ない一日に過ぎないんだなと思い胸がギュッとなった。
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