第5話 思いやられる
〜桜の身体に入った祐希の場合〜
ついに俺は4組の前まで着いてしまった。
4組のドアの前に立ち「大丈夫」と思いながらドアを開けた。
「おっ!桜おはよー」
ドアを開けると、ドアの近くに座っていた俺が2年の時に同じクラスだった涼介が挨拶をしてきた。
俺は思わずいつものように挨拶してしまうところだったが、慣れないスカートを履いているおかげで俺を出さずに済んだ。
「おっ、おはよう」
初っ端から危なかったと思い「フゥー」と息を吐いた。
桜から昨日教えてもらった席に向かう。
席に着いて、今日の授業の教科書やノートを机の下に入れていると誰かが近づいてきたのが分かった。
「桜ちゃんおはよう」
そこ声に俺はもしかして桜が言っていた、桜の友達のあかりちゃんじゃないかと思い挨拶を返した。
「おはよう」
挨拶を返すとあかりちゃんから急に違う意味でドキッとする事を言われた。
「桜ちゃん今日どうしたの?桜ちゃんの歩き方いつもと違って足開いてたから、少し男っぽくてびっくりしちゃったよ」
その言葉に、そういえば歩き方なんて全然意識していなかったと思いやばいと焦り冷や汗をかいてしまった。
「あ、あはは〜そうだった?気をつけないとね〜」
何か言わないといけないと焦ったが俺は上手い言葉が見つからず不自然になってしまった。
だがあかりちゃんの優しさなのか分からないが、それ以上聞いてこなかったので安心した。
「そういえば風邪治った?大丈夫?もし良かったら昨日の授業のノート写す?」
俺はその言葉になんて優しいんだろうと思い厚意に甘えることにした。
「ありがとうあかりちゃん」
お礼を言い終えた後、俺はあかりちゃんと言ってしまったが間違っていたらやばいと思い、相手の顔色を伺ったが間違っていなかったらしく笑顔でノートを貸してくれた。
「はいはーい授業始めるよー!」
ノートを貸してくれたタイミングで授業が始まる時間になったらしく先生が教室に入ってきた。
あかりちゃんは自分の席に戻り、俺はホッとしてまた息を吐いた。
たった数分の出来事なのに、緊張したり焦ったりこんなに冷や汗をかくものなのかと思い知らされた。
この間までなんてまさか自分達の身にこんな事が起こるなんて想像もしていなかった。
結構前に読んだ漫画で、入れ替わりものの話を読んだ事を思い出し「いいな〜、入れ替わったら絶対楽しいじゃん!俺も入れ替わりて〜」なんて軽い気持ちで考えたことがあり、今自分の置かれている状況を思うとなんて愚かなことを考えたのかと恥ずかしくなるくらいだ。
まだ入れ替わってから2日しか経っていないが、早く元に戻りたかった。
自分じゃない姿、慣れない制服、違う教室、偽らないといけない事全てが辛かった。
いつもは桜の事なんて考えたりなんてしないのだが、今日は桜も大変だろうなと桜のことも考えてしまう。
これから俺達は大丈夫なのだろうかと先が思いやられる…。
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