第2話 ②

2016年4月17日


ジリリリリとけたたましい目覚ましの音が響いている


「朝よ!起きなさいトウヤ!」


と階段の下からうるさい母さんの声が聞こえてくる。この声と目覚ましのコンボを聞くのも2週間ぶりだ。なぜなら昨日までは学生のオアシス春休み。登校時間など気にせずに寝ていられるのは昨日で最後ということだ。まだまだ布団が恋しいが起きて朝の準備をしなければまた母さんから怒られる。


パパッと服を着て顔を洗いリビングに行くと


「ほら!遅刻するよ!」


と小さめのおにぎりを出してきた。朝ならまぁこれで十分だ。


もそもそとそれを食べているとつけっぱのテレビから流れてくるあるニュースが目に止まった。


「体が木になる!?植物病!原因は未だ不明!」


仰々しいテロップと共に手や足が太い幹や枝になっている画像が映し出される。けっこうグロテスクだ。


植物病、近年首都圏のみで流行っている体の一部が植物になってしまう原因不明の難病だ。だからこんな田舎は関係ないはずだが、なぜローカルニュースで…?


「あぁ、これね。ここらで1件出たんだってさ、こわいねぇ」


と台所からでてきた母が言った。


ふうん、と興味なさげに返事したがらも何故だかそのニュースから目を離せなかった。


「ニュース見てる場合じゃないでしょ!早く行きなさい!」


と急かす母の声にしぶしぶテレビを消して玄関の戸を開けた。


ギリギリ校門をくぐるとガヤガヤと掲示板が賑わっている。何なのかはわかっている、新学年のクラス表だ。俺の学校も例に漏れず学年が変わるたびクラスも変わるので新年度は毎年こうなるのだ。

俺もクラス表を見ようと近づいていくと見慣れた後ろ姿を見つけ、「よぉ、みっちゃん」と声をかけた。


ぬっとこちらに向いた、大柄な男の顔がパッと輝く。


「おお、トウヤ!ほら見てみ!俺らまたクラス同じだぜ!」


と背中をバシバシと叩かれる。結構痛いがあまり気にすることでもない。


みっちゃん、もとい水谷 ダイチは俺の1番の友達だ。小中高と同じ学校で小さい頃から一緒に育ってきた。性格も明るくて誰からも好かれるという絵に書いたような良い奴だ。ちなみにこの通りの熊のような体なので1度けんかには勝てたことはない。


みっちゃんとまた一緒のクラスに慣れたことを喜びながら他のクラスメイトはどんなもんかなと目を走らせていると見覚えのない名前を見つけた。


「野村、、、ユグ、、、?」


「お、気づいたかトウヤ」


と何も知らない俺を小馬鹿にするようなにやにや顔でみっちゃんが肩に手を置いてきた。


「転校生だよ、、、しかも女子のな、、、」

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