5
昨日の出来事は夢だ。
夢であってくれ。
目覚めると──見た事もないくらい、美しい朝焼けの空。
清浄すぎる空気。
真っ白な部屋は見慣れぬ白い石作り。
出入り口にさげられた薄布が、わずかな風に揺れている。
天井が半分ない部屋には、レテューだけ。
シーツも掛け布団も真っ白で、触り心地が恐ろしいほどなめらかだ。
窓の外には緑があり、生えている木々さえ美しい。
夢ではなかったようだ。
「………」
仕方なく起き出すと、自分の服に着替えた。
精霊のメイドさんが迎えに来て、ついて行くとリューキの部屋へ。
朝食が用意されており、よく眠れたらしいリューキがすっきりした顔で笑った。
「おはよう」
「……おはよう」
朝食は二人分。メイドさんも下がってしまい、二人だけで食べる。
「もう帰るよな? 翼馬に乗ってって」
「ああ……長居出来なくて、悪いな」
ゆっくりと、建物から出て外縁に辿り着く。
「レテュー、毎日仕事あるし。仕方ない。今度は街に泊まりにいく」
「ああ……またな」
昨日と同じ青い騎士が、変身してくれた。
「元気で!」
リューキに見送られ──朝の天空を翔ける。
幻のような空の宮殿が、背後に遠ざかっていく。
ふと。
「……毎日?」
何故、毎日あると知っているのかと首をかしげた。
翼馬がばさりと、翼をはためかせた。
─────終わり。
灰狼のある一日 銀紫蝶 @ginsicyou
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