「そんで、試しにその男と付き合ったんやけど」

「何や自分、もう別れたんか？」

「え？　なんで」

「今『付き合った』って過去形で言うたやん」

「やけん今付き合っとるんやって。まあすぐ別れるけど」

「『付き合う』は瞬間動詞やのうて継続動詞やから、交際開始の意味で『付き合った』って言うのは違（ちゃ）うやろ」

「ほな何て言うん」

「『付き合い始めた』やろ。『付き合った』って言うたら終わった話みたいやん。元交際相手やん」

「いや、犯人ちゃうわ。そのナントカ動詞って何なん」

「歩くとか走るとか、ある程度の長さ続くのが継続動詞や。『走った』言うたらもう走り終わって休んどるやろ」

「座ってポカリ飲んどるやつやん」

「その『座る』が瞬間動詞や。座るとか死ぬとか」

「例に差ありすぎやろ」

「『座った』言うたら今も座っとるやん。死んだ人は今も死んどるし」

「ほな、もうイスから立ってたらどう言うん」

「『座っていた』や。瞬間動詞はタ→テイル→テイタの順やねん。タとテイルの順が継続動詞と逆やろ」

「知らんけど。一瞬だけ付き合って別れたら瞬間動詞でええやん」

「そういう話と違（ちゃ）うねんけど。ほな、次は俺と付き合ってや」

「え？」

「継続動詞で」

「……言うの遅いわ」

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