転生し俳句世界に秋過ぎぬ

トラックに潰され哀れ俺は死に


気付いたら光の中に立っていた


どこだここ?俺は確かに死んだはず


紅葉賀もみじがや瞳に血潮勇者立つ」


突然に女の声だあんた誰!?


「秋雨や散りし命を天嘆く」


金髪に青い目をした女神様?


おいあんた俺は一体どうなって


……何か変、思ったように言葉が出


「五七五で喋る定めにりちかぜ


五七五!?何この世界マジこわい


碇星いかりぼし若人よ聞け天の声」


だから何!?俺に何しろっていうの


「秋の野を踏んで荒らせし魔王軍」


「兵散りて刈田かりたに積もる折れたほこ


「民草はみずむ世をば懐かしみ」


幾歳いくとせを過ぎて枯野かれのの色も絶え」


露時雨つゆしぐれついの望みの召喚術」


とき来たり救えや男子おのこ国の危機」


はぁ、つまり、魔王が国に攻めてきて


そのせいで皆が苦しめられてると。


要するによくあるラノベ的なやつ?


この俺が勇者になって旅をして


元凶の魔王を倒せということか?


「聖剣とチート魔法よ初嵐はつあらし


おぉ凄いこの剣俺にくれるのか


お決まりのチート魔法も使えるの?


よし行くぞ試しに開けステータス!


……ねえ何も起きませんけど女神様?


「秋ぶや魔力はときの巡りなり」


おとみず込めよ巡りを言霊ことだまに」


えっつまり?季語も入れなきゃいけないの?


ただでさえ字数縛りがキツイのに?


国民くにたみはかりがね寒き地の果てで」


鰯雲いわしぐも見上げ勇者の救い待つ」


「立てなんじまとえ稲妻振るえ剣」


待宵まつよいの民の涙をぬぐうため」


わかったよ行きゃいいんでしょウルサイな


秋ですよ旅に出るんだ俺勇者


秋旱あきひでり女神と二人行く道は


落葉らくようの虚しく積もる荒れた道


焼け落ちた村の跡地に秋の風


秋ですねチートがあるとかそう言えば


秋めいて試してみるかステータス


りゅうふちに潜むファイヤーレベル100】

【広域に野分のわけストームレベル100】

秋時雨あきしぐれ100倍伸びる経験値】

天高てんたかし転移魔法は無制限】


なるほどね?確かにチートだ秋だなあ


秋の雲さっそく転移魔王城


結界のそぞろに寒し城の外


秋風や魔物の群れが襲い来る


鯖雲さばぐもにチート勇者の初陣だ


受けてみろ!野分のわけストームレベル100!


台風たいふうの如く吹き飛ぶ魔物ども


秋時雨あきしぐれたちまち伸びる経験値


おぉ凄い楽勝じゃんか秋深し


冬隣ふゆどなり遊び心は城下まで」


何だって?こいし顔の女神様


結界に踏み入りひやりと肌寒し


鳥威とりおどし魔物の軍勢わらわらと


こっちにはチートがあるんだ秋の声


りゅうふちに潜むファイヤーレベル100!


……おかしいな魔法が出ないぞ秋湿あきじめ


十六夜いざよいや魔王の力恐るべし」


えっマジでチート無理なの魔王城?


あっやべっ季語が抜けてた秋の宿


しょうがない剣で戦う秋の暮


秋のやエクスカリバー乱れ斬り!


不知火しらぬいや倒れる魔物唸る剣


さすが俺死屍累々の菊枕きくまくら


しかし秋行けど行けども敵の群れ


五七五がそろそろ辛くなってきた


まして季語毎回入れるとか無理ゲー


確かホラ、自由律ってのあったじゃん?


分け入っても分け入っても魔王城


敵を斬っても一人


ぐっ何故だ!急に剣技が通じない


うぐあぁっ!俺の背中が地を削る


まさかこれ季語を言わなきゃ効果なし?


「季語なくば斬れぬ刃の秋扇あきおうぎ


ほんとマジめんどくせーなこの世界


とりあえず秋って入れときゃいいんだろ


秋ですよ勇者が通る退け魔物


大軍勢秋元康もびっくりだ


秋レスの如き強さの剣唸る


敵をぐ勇姿に女神の秋れ顔


四天王容易く破り流れ星


渡り鳥最上階まであと僅か


魔王待つ屋上に出て秋の虹


秋空にエクスカリバーひらめかせ


散れ魔王!聖剣魔導紅葉斬り!!


秋風に溶けし悪鬼の断末魔


戦いを終えて見上げる秋の月


「人の子よ別れの宿命さだめ神無月」


女神笑む揺らぐ視界に龍田姫たつたひめ


「行く秋や平和の褒美に黄泉よみがえり」


星月夜ほしづきよ未来に繋げその命」


転生は釣瓶つるべ落としの夢のごと


秋過ぎて残る百句の旅の跡

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