「第1回匿名短編コンテスト 始まり編」参加作品
恨み晴らさで置くべきか
物言わぬ
「ねえ、お人形さん。早く
人形の私に名が無い様に、其の娘にも又、名は無かった。奥の子とか、あれとか、
「お人形さんは、桜の花を見た事は有る? きっと無いわよね。お母様もお
生きて居た頃の母親の話と、
「世の人は云うそうだわ、
年に一度、人々は
「一体、あれは何と
新入りに他の者が
「知らぬのか。此の奥に
「いずれ娘は女に成り
其れは幾度と無く繰り返されて来た営み。
しかし、此の時ばかりは様子が違って居た。
「年に一度、
すらりと刀を抜き放つ
誰にも
だが、洞穴を
「お願い、お父様を斬らないで。お父様は
「おのれ、
洞穴の前に転がったまま私は聴いた。
燃える洞穴から這う様に逃げ出す娘の背中に、続け
娘の苦悶の声が私の心をざわめかせた、次の瞬間には、私は己でも気付かぬ内にゆらりと立ち上がり、めきめきと音を立てて伸びる手足を振るって、武士共へと掴み掛かって居た。
しかし、今にも
「斬っては駄目」
今や息も絶え絶えの娘が、赤と白の血に染まった顔で、力無く私を見上げて居た。
「……
虫の息で彼女が語る言葉に、私が刀を取り落とした其の時、
其の中心に立つのは、燃える炎の赤を纏いし
「闇より生まれ
閃く刃に炎を宿し、
胴から離れて宙に舞った私の首は娘の
「ねえ、お人形さん。叶わない事だと判っては居るけれど……私、死ぬ前に一度、桜の花が見たかったわ。
娘の
元より物言わぬ人形の私は
娘の
「
「……私は」
己の喉から出る声に私は驚いた。物言わぬ人形であった筈の私が、
「私は、
「ふふ、面白い
代わりに残されたのは、心無き人間共への底知れぬ恨み。
今、此の時が、私の復讐の始まりだ。
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